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立元 貴

内科医・医学博士

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親父の誤嚥

2018-03-06更新
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親父が高熱をだして、入院することになった。

以前から、パーキンソン病を患っている親父は、最近、衰えが目立つようになった。

もともと小柄だが、体重が減って、ひとまわりもふたまわりも小さくなった気がする。

この頃は大好きな金儲けの話もしなくなり、口数も少なくなって、ベッドで寝ている時間が長くなっている。

 

パーキンソン病は、神経の伝達が悪くなり、関節や筋肉が動かしにくくなっていく病気だ。

進行すると、食物を飲み込むことが難しくなり、誤嚥による肺炎を起こしやすくなる。

 

健康な人にとっては、食物を飲み込むというあたりまえの動作も、

実は、無意識のうちに神経や筋肉が複雑に機能することで成り立っている。

口からは、食べ物が食道へ、空気が肺へと流れていくのだが、

物を飲み込むときは肺への道がふさがれて、食べ物が間違って肺に入らないようになっている。

 

脳梗塞や認知症、パーキンソン病などの神経の病気で、脳の機能が低下すると、

口から肺へ食物が流れ込んでいくようになり、しかも、むせこむ反射も低下するので、

食物が絶えず、肺の中へ流れ込んでいくようになる。

食物にかぎらず、唾液も自然に肺に入り込む。

口の中は雑菌がたくさんいるので、細菌の塊を飲み込むことになり、

あっという間に重症の肺炎を起こすのが、誤嚥性肺炎の特徴だ。

 

親父は、幸い、ひどい肺炎にはならずにすんだが、

入院するとふだんの生活環境から離れるので、みるみる病人らしくなり衰弱がすすんだ。

早めに退院できたおかげで、今は、大好きな刺し身(柔らかいサーモンでかんべんしてもらっているが)

を食べられるまでに回復している。

 

医者が患者家族の立場になると、ふだん、自分が医者として振る舞う冷静な判断ができなくなる。

たとえ医者であっても、家族として最終的な判断をすることはつらく、心のなかに重りを抱える。

その重さをことさら感じるのも、この仕事を選んだからだろうか。


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