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立元 貴

内科医・医学博士

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糖尿病 ー 診断から治療まで

2016-06-16更新
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糖尿病は国民病です

日本の糖尿病患者数は約950万人、糖尿病予備軍は1100万人といわれています。

(2012年. 国民健康・栄養調査、厚生労働省)

食の欧米化により肥満が増加していること、また、患者の高齢化も問題となっています。

糖尿病の診断

糖尿病とは?

血液の糖(血糖)が高くなる病気です。

血糖がある程度以上高くなると、尿に糖があふれてきます。(一般的に血糖値が160-180mg/dl以上になると、尿糖が陽性となります。)

糖尿病では、血糖を下げるインスリンというホルモンの作用が十分でないために、血糖値が高いままになっています。

※膵臓は食物を消化する酵素と、インスリンをはじめとするいくつかのホルモンをつくっています。

糖尿病の症状

多くの場合は無症状で始まります。

糖尿病がひどくなると、のどがかわき(口渇)、尿が多くなり(多尿)、水を多く飲み(多飲)、体重減少などの症状が出てきます。

自覚症状がないからといって安心はできません。

糖尿病の診断

糖尿病の診断は血糖値によって行います。

1. 早朝空腹時の血糖値が126mg/dl以上
2. 負荷試験(75gOGTT)の2時間値が200mg/dl以上
3. 食事と関係なく採血した血糖値(随時血糖値)が200mg/dl以上
4. HbA1c (NGSP値) が6.5%以上
1-4のいずれかにあてはまれば、糖尿病です。

正常な方は、
早朝空腹時の血糖値が110mg/dl未満 または、
負荷試験(75gOGTT)の2時間値が140mg/dl未満

正常と糖尿病の境界にある方は、境界型糖尿病といわれる「糖尿病の予備軍」です。

(注)
HbA1cの数値は、2014年4月1日より、従来の数値(JDS値)から国際標準値(NGSP値)に正式に変更されました。今後、医療機関や健診などの検査結果は、NGSP値のみに統一されます。

NGSP値は、従来値より、およそ 0.4 高くなります。従来値に、0.4を加えたものが、新しい数値と覚えておきましょう。

 

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境界型糖尿病は、放置してはいけません

理由1:

本物の糖尿病になりやすい。

境界型糖尿病を放置すると、1年間で10%前後が糖尿病へ移行します。

理由2:

心筋梗塞や脳卒中を起こしやすい。

心筋梗塞や脳卒中での死亡は、糖尿病の患者が正常の3倍、境界型でも正常の2倍多い。

境界型でも動脈硬化は進行しています。

食生活の改善と運動によって、境界型から糖尿病への移行を予防することができます。

糖尿病の種類

日本の糖尿病患者の90-95%が2型糖尿病です。

2型糖尿病の方は、家族に糖尿病をもつ人が多く、遺伝的な素因が関係しています。

さらに、肥満や過食、運動不足、ストレスなどが加わって多くは中年以降に発症します。

いわゆる大人の糖尿病です。

1型糖尿病は、インスリンをつくる膵臓のβ細胞が急激に破壊されておこる病気です。

ウイルスや免疫の異常が原因と考えられます。

このタイプの糖尿病は全体の5%以下ですが、若い人に発症することが多く、インスリン注射が必要になります。

タイプ 1型糖尿病 2型糖尿病
頻度 稀(<5%) 多い
遺伝 弱い 強い
発症因子 ウイルス・免疫 肥満・過食・ストレスなど
発症年齢 子供に多い(<15才) 大人に多い(>40才)
発病 急激 緩徐

合併症

なぜ治療しなければならないのか

糖尿病を十分に治療しないで放置すると、余病(合併症)を起こします。

進行をくい止めるためには、早期から血糖値をよくコントロールしておくことが必要です。

合併症はある程度をこえて進行すると、なかなか治りません。

糖尿病の代表的な合併症は、目、腎臓、神経、動脈硬化です。

毎年、1万人以上が糖尿病のために人工透析となり、3000人以上が糖尿病のために失明しています。

目の病気

1.糖尿病網膜症:

網膜を栄養する血管がつまり、眼底出血から網膜剥離を起こして失明にいたることがある。

日本における失明原因の第1位は糖尿病網膜症によるものです。

2.白内障:

水晶体がにごり、目がかすんで見えにくくなります。

 

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腎臓の病気=糖尿病腎症

まず、尿にタンパクがでるようになり、血圧が上がり、むくみ(浮腫)が起こるようになります。

さらに腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物を尿にして出すことができなくなり、腎不全になります。

こうなると機械の力で血液をきれいにする、人工透析が必要になります。 さらに詳しく>>

神経の病気=糖尿病神経障害

細い神経(末梢神経)が障害され、とくに足のしびれ感、ジンジン感、痛み、感覚が鈍くなるなどの症状が現れます。

また内臓の神経(自律神経)の障害により、便秘、下痢、立ちくらみ、勃起障害が起こりことがあります。

さらに詳しく>>

動脈硬化

動脈硬化とは、血管の壁が硬くなり、血管がつまりやすくなる状態です。

血管がつまると、その血管が栄養している臓器がダメージを受けます。

1.脳卒中→脳の動脈がつまる。

2.心筋梗塞→心臓の筋肉を栄養している血管(冠動脈)がつまる。

3.足の壊疽→足の血管がつまり、壊死をおこす

動脈硬化の危険因子

1.糖尿病

2.高血圧

3.肥満

4.高脂血症(脂質異常症)

5.喫煙

6.運動不足

 

糖尿病の検査

1.尿糖検査

食前の尿糖=検査する30分から1時間前に膀胱の中の尿を全部出し、新たに膀胱にたまった尿を検査します。

結果は検査の前1時間の血糖の状態を反映します。

血糖値が160-180mg/dl以上になると、尿糖が陽性になります。

2.血糖検査

グリコヘモグロビン(HbA1c:ヘモグロビン・エイ・ワン・シー)

ヘモグロビンは血液の赤い色素で、体のすみずみに酸素を運びます。

血糖が高いと、糖がヘモグロビンに結合して離れなくなります。

HbA1cは採血の前4週間の平均的な血糖値を反映しています。

合併症の発生や進行を予防するために、HbA1cをできるだけ正常値に近づけることが重要です。

血糖コントロールの目標は、HbA1c 7.0未満 です。

空腹時血糖値 130mg/dl未満、食後2時間血糖値 180mg/dl未満が目安になります。

そのほかにも、

・血圧: 130/80mmHg未満

・LDL-コレステロール: 120mg/dl未満

・HDL-コレステロール: 40mg/dl以上

・中性脂肪: 150mg/dl未満

などが、コントロールの目標値です。

 

糖尿病の治療

食事療法

1.1日に食べる量(摂取エネルギー量)を制限し、標準体重を維持しましょう。

・標準体重=身長(m)×身長(m)×22

・摂取エネルギー量=標準体重×30

たとえば、身長160cmの場合、標準体重=1.6×1.6×22→56kg

摂取エネルギー量=56×30→約1600kCal

2.バランスよく食べましょう。

糖質 50-60%、タンパク質 15-20%、脂質 25-30%

食物繊維は十分に。食塩は1日10g以下。果物は1日2単位まで。

3.時間をかけてゆっくり食べましょう(ひとくち20回以上)。

外食に注意しましょう。

 

肥満の害

・インスリンが効きにくい(インスリン抵抗性)。

・肥満の分だけ余分な荷物を背負っている。

アルコールの害

・アルコールは高カロリー食品です。(1g=7kcal)

・飲酒による食事の乱れ、酒のつまみは高カロリーです。

・肝臓、すい臓に直接ダメージを与えます。

 

運動療法

1.運動療法の効果

・血糖値を低下させる。

・インスリン感受性を改善する。

・脂質代謝を改善する。

・肥満を改善する。

・骨量の減少を防止する。

・心肺機能を改善する。

・ストレス解消効果

2.運動療法ができない場合

・糖尿病のコントロールが非常に悪い時

・糖尿病の合併症が高度の場合、または急速に進行中の時

・コントロールされていない高血圧

・心電図異常(狭心症、心筋梗塞)

・足の血管などに動脈硬化が強い

・発熱、感染症

3.運動療法の実際

「いつでも、どこでも、誰でも」できる運動、歩くことが基本です。

「1日15-30分の歩行、1日2回」を目安にしましょう。

万歩計を利用して、1日1万歩を目標にしましょう。ただし、運動は食後1時間してから。

4.運動交換表

1単位は80kcalに相当します。1日2単位の運動をしましょう。

運動の強さ 1単位あたりの運動時間 運動の種類
非常に軽い 30分 散歩、家事、買物
軽い 20分 歩行、ラジオ体操、自転車、ゴルフ
中等度 10分 ジョギング、テニス、バレーボール、登山
重い 5分 水泳、なわとび、バスケットボール

5.安全な運動のために

・疲労が残らない運動。

・運動強度を急増させない。

・炎天下や長時間の運動の場合には水分補給をする。

・寒冷時には保温に気をつける。

・体調の悪いときには休む。

・底が厚く足に合った靴、厚手の靴下をはきましょう。

薬物療法

1.経口血糖降下剤とは?

経口血糖降下剤(のみぐすり)は、インスリンの放出を促進し、インスリンを効きやすくします。

のみぐすりはインスリンそのものではありませんから、その効果には限界があります。

食事療法、運動療法では十分に血糖が下がらず、すい臓にまだインスリンの生産能力が残っている人に使います

肝臓や腎臓が悪い人には使えないことがあります。

2.経口血糖降下剤の種類

ピグアナイド薬 肝臓での糖新生の抑制
チアゾリジン薬 筋肉・肝臓でのインスリン感受性の改善
DPP-4阻害薬 インスリン分泌の促進とグルカゴン分泌の抑制
スルホニル尿素薬 インスリン分泌の促進
速効型インスリン分泌促進薬 インスリン分泌促進・食後高血糖の改善
α-グルコシダーゼ阻害薬 食後高血糖の改善
SGLT2阻害薬 尿中ブドウ糖排泄促進

 

年齢や肥満の程度、慢性合併症の程度、肝・腎機能などを評価して、上のいずれか、または併用して投与します。

3.インスリン療法

A. インスリン療法の必要な人

・緊急時→昏睡、感染症、手術

・インスリン依存性糖尿病→全例

・インスリン非依存性糖尿病→食事療法+薬でコントロール不良な例

・妊娠中→胎児と母体の安全のために厳格な血糖コントロールが必要です。

B. インスリンの種類

インスリンは、効くまでの時間や効果の持続時間によって、超速効型、速効型、中間型、混合型、持続型に分けられます。

血糖に日内変動に応じて、インスリンの種類や投与方法を選びます。

調節したい時間帯の血糖値にもっとも影響のあるインスリンを責任インスリンといい、血糖値に応じて責任インスリンの量を調節します。

 薬物療法と低血糖

1.低血糖とは?

・血糖値≦50~70mg/dl

・薬の効きすぎによる脳の栄養不足状態

・低血糖の害=網膜症の進行、後遺症

低血糖の症状=個人差が大きい

異常な空腹感、だるさ、手指のふるえ、動悸、頭が重い感じ、冷や汗、生あくび、考えがまとまらない、けいれん、昏睡など

低血糖になりやすいとき

・食事の時間が遅れたり、食事の量が少ないとき

・激しい運動、労働をおこなったとき

・インスリンの量が多すぎたとき

・飲酒後や肝臓がわるいとき

低血糖時の対応

ブドウ糖10gまたはブドウ糖を含む清涼飲料水(150-200ml)を摂取する。

15分後、症状が改善しない場合は再度ブドウ糖を摂取する。

高齢者の糖尿病

高齢者は、低血糖を起こしやすく、いったん低血糖を起こすと重症化しやすいという問題を抱えています。

糖尿病に治療に際しては、血糖値をむやみに下げすぎないことが大事です。

とくに、認知症や身体機能が落ちている方は、訴えもなく、低血糖に気づきにくいものです。

また、低血糖は認知症そのものを進行させるリスクもあります。

 

まとめ

糖尿病を正しくコントロールするために、以下の項目をすべて満たすことが重要です。

・糖尿病の症状がない。

・ひどい低血糖がない。

・標準体重を維持している。

・HbA1c(エーワンC)が7%未満。

・合併症がない。合併症がすすんでいない。

・目に異常がない。

・尿にタンパクがでていない。

・手足のしびれがない。

・コレステロール、中性脂肪が正常。

・血圧が正常。

・心電図に異常がない。

・胸部X線に異常がない。

参考文献

糖尿病治療ガイド2016-2017. 日本糖尿病学会 文光堂, 2016


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