梅毒

喧嘩

梅毒は、感染者の皮膚粘膜からの浸出液から、接触者の粘膜や皮膚の小さな傷から侵入して感染します。おもに性的接触により感染し、感染しても免疫は成立しないので、再感染する可能性があります。2011年以降、患者報告数が急増し、過去最高の水準で推移しています。

年齢では、男性は20‐50代、女性は20代に多く、性風俗産業の利用者・従事者が4割を占めています。治療をしないまま放置すると、数年から数十年をかけて、心臓や血管、脳などの臓器に障害をおこし、死亡する危険もある病気です。

妊娠中の梅毒感染はとくに危険で、母親だけでなく胎児にも感染し、生まれてくる児の神経や骨などに異常を起こすことがあります。

感染症法では5類感染症で、活動性梅毒(要治療の梅毒)と診断した場合は、7日以内に都道府県知事に報告する義務があります。

病原体

  • らせん状のスピロヘータの一種である、梅毒トレポネーマ
  • 梅毒トレポネーマは、粘膜や皮膚の小さな傷から侵入し、血液やリンパを通じて全身の臓器に感染を起こします
  • 潜伏期は3-6週間程度

感染経路

  1. 性交によるヒト−ヒト感染:患者の性パートナーの10−60%が感染すると推定
  2. 経胎盤の母子感染:死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります(先天梅毒)
  3. 麻薬などの注射共用

梅毒の病期の進行と特徴

第1期 感染約3週間後に、痛みのない硬い潰瘍を形成する。無治療でも数週間で消失する。
第2期 第1期の症状がいったん消失した後、4-10週間して、皮疹(手掌、足底、口腔、陰部に多い)、全身のリンパ節腫脹、脱毛などが現れる。第1期と同様に、無治療でも数週間から数ヶ月で症状は消失する。
潜伏梅毒 第1期と第2期の間、第2期の症状消失後の状態
第3期 心臓、神経、眼、聴覚がおかされる。無治療の第2期患者の10-40%が発症。数年以上を経て発症する。
先天梅毒 梅毒に感染している母体から胎児に感染する(生後数か月以内に水疱、発疹などの皮膚症状、全身リンパ節腫脹、肝脾腫、骨軟骨炎、鼻閉などを呈する。生後2年以降に角膜炎、難聴、歯の異常(Hutchinson3徴候)などを呈する。
  • 感染性が強いのは、第1-2期(感染後1年以内)

診断

  1. 病原体を直接顕微鏡で観察する方法があるが、検出は困難であることが多い。
  2. 採血検査で、抗体の上昇を検査する。
    • 梅毒以外でも陽性になる偽陽性がしばしば認められる。

治療

  • ペニシリン剤の長期投与(4週間程度)
  • 早期の薬物投与で完治が可能です

予防のための基本的な知識

  1. 不特定多数の相手との性交渉は感染リスクを高める
  2. 口腔や肛門を介した性交渉でも感染する
  3. 再感染は何度でも起きうる(一度かかったら、もうかからないはウソ)
  4. 梅毒による粘膜病変があると、HIVなど他の性感染症の感染リスクも高まる
  5. 未治療の相手とは性交渉をもたない
  6. 性行為時は最初からコンドームを装着する

<参考>
日本性感染症学会「性感染症 診断・治療ガイドライン2020」診断と治療社
国立感染症研究所「梅毒とは」
厚生労働省「梅毒に関するQ&A」
厚生労働省「梅毒」

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