認知症の診断ツール

 

認知症の初期の段階では、患者自身が生活上の困難や支障を自覚していないことが多いので、家族の気づきがとくに重要です。認知症の患者さんの初期段階のサインを見落とさないための観察リストが、OLDです。

MMSEや長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)は、認知症の診断のための簡単な検査ですが、認知症の初期には得点が低下しないことが多いので、この検査だけでは認知症の判断が難しいこともよく経験します。

CDRやFASTは、重症度を評価するのに有効です。CDRの0.5、FASTのstage3は初期認知症に相当します。

初期認知症(MCI)は、正常ではないが、認知症まではいっていない、境界の状態です。

認知症の早期発見( OLD )

【記憶、忘れっぽさ】

  1. いつも日にちを忘れている
  2. 少し前のことをしばしば忘れる
  3. 最近聞いた話を繰り返すことができない

【語彙、会話内容の繰り返し】

  1. 同じことを言うことがしばしばある
  2. いつも同じ話を繰り返す

【会話の組み立て能力、文脈理解】

  1. 特定の単語や言葉がでてこないことがしばしばある
  2. 話の脈絡をすぐに失う
  3. 質問を理解していないことが答えからわかる
  4. 会話を理解することがかなり困難

【見当識障害、作話、依存】

  1. 時間の観念がない
  2. 話のつじつまを合わせようとする
  3. 家族に依存する様子がある(本人に質問すると家族の方を向くなど)

結果: 12項目中、4項目以上が該当した場合、認知症の疑いあり

認知症の判定

MMSE(Mini-Mental State Examination)

設問 質問内容 回答 得点
1( 5 点) 今年は何年ですか 0 1
今の季節は何ですか 0 1
今日は何曜日ですか 曜日 0 1
今日は何月何日ですか 0 1
0 1
2( 5 点) この病院の名前は何ですか 病院 0 1
ここは何県ですか 0 1
ここは何市ですか 0 1
ここは何階ですか 0 1
ここは何地方ですか 地方 0 1
3( 3 点) 物品名 3 個(桜、猫、電車)
<1 秒間に 1 個ずつ言う。その後、被験者に繰り返させる。正当 1 個につき 1 点。 3 個すべて言うまで繰り返す( 6 回まで)>
0 1 2 3
4( 5 点) 100 から順に 7 を引く( 5 回まで) 0 1 2 3 4 5
5( 3 点) 設問 3 で提示した物品名を再度復唱させる 0 1 2 3
6( 2 点) (時計を見せながら)これは何ですか 0 1
(鉛筆を見せながら)これは何ですか 0 1
7( 1 点) 次の文章を繰り返す
「みんなで力を合わせて綱を引きます」
0 1
8( 3 点) ( 3 段階の命令)
「右手にこの紙を持ってください」 0 1
「それを半分に折りたたんでください」 0 1
「それを私に渡してください」 0 1
9( 1 点) (次の文章を読んで、その指示に従ってください)
「右手をあげなさい」 0 1
10( 1 点) (何か文章を書いてください) 0 1
11( 1 点) (次の図形を書いてください)
<下図:重なった2個の5角形>
0 1
得点合計

結果:
27-30点・・・正常値
22-26点・・・軽度認知障害の疑いがある
21点以下・・・認知症などの認知障害がある可能性が高い

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

お歳はいくつですか? 2年までの誤差は正解。 正解:1点。
今日は何年の何月、何日、何曜日ですか? 年、月、日、曜日、 正解でそれぞれ1点ずつ、4点満点。
私たちがいまいるところはどこですか? 自発的にわかれば2点。 5秒おいて家ですか?病院ですか?施設ですか?の中から正しい選択をすれば1点。
これからいう3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますからよく覚えておいてください。 1: a) 桜 , b) 猫 , c) 電車 または 2: a) 梅 , b) 犬 , c) 自動車 正解1個につき、1点。 3点満点。
100-7 は?それからまた 7 を引くと? 93 :1点。 86 :1点。 2点満点。 最初の答えが不正解のときは、打ち切る。
私がこれからいう数字を逆から言ってください。 6-8-2, 3-5-2-9 を逆に言ってもらう。 2-8-6 :1点。 9-2-5-3 :1点。 2点満点。 3桁に失敗したら、打ち切る。
先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください。 自発的に回答があれば、各2点。 ヒントを与えて正解であれば1点ずつ。ヒント: a) 植物 , b) 動物 , c) 乗り物
これから5つの品物を見せます。それを隠しますのでなにがあったか言ってください。 時計、鍵、タバコ、ペン、硬貨など相互に無関係なもの
知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください。 0-5=0 点; 6=1 点; 7=2 点; 8=3 点; 9=4 点; 10=5 点。 途中でつまり、 10 秒待ってもでない場合にはそこで打ち切る。

結果:
最高得点は30点。
20点以下は、痴呆(認知症)の可能性が高い。

重症度の分類

Clinical Dementia Rating (CDR)

区分 健康
( CDR 0 )
痴呆の疑い
( CDR 0.5 )
軽度痴呆
( CDR 1 )
中度痴呆
( CDR 2 )
重度痴呆
( CDR 3 )
記憶 記憶障害なし。ときに若干の物忘れ程度。 一貫した物忘れ。出来事を部分的に思い出す良性健忘。 中等度記憶障害。最近の出来事に対するもの。日常生活に支障。 重度記憶障害。高度に学習した記憶は保持。新しいものはすぐ忘れる。 重度記憶障害。断片的記憶の残存。
見当識 見当識障害なし 時間に対しての障害あり。検査は場所、人物の失見当なし。ときに地理的失見当あり。 常時、時間の失見当。ときに場所の失見当あり。 人物への見当識のみ。
判断力と問題解決 適切な判断力と問題解決 問題解決の障害が疑われる 複雑な問題解決に関する中等度の障害、社会的な判断力は保持 重度の問題解決能力および社会的判断力の障害 判断および問題解決不能。
社会適応 仕事、買い物、ボランティアや社会的グループで普通の自立した機能 左記の活動の軽度の障害もしくは疑い 左記の活動のいくつかに関わっていても自立した機能が果たせない 家庭外(一般生活)では独立した機能は果たせない
家庭状況と趣味・関心 家での生活・趣味や知的関
心が保持されている
同左、もしくは若干の障害 軽度の家庭生活および複雑な家事の障害、高度の趣味・関心の喪失 単純な家事のみ、限定された関心 家庭内不適応
介護状況 セルフケア完全 時々激励が必要 着衣、衛生管理など身の回りのことに介助が必要。 日常生活に十分な介護を要する。しばしば、失禁。

FAST ( Functional Assessment Staging )

FAST stage 臨床診断 FAST における特徴 臨床的特徴
1.認知機能の障害なし 正常 主観的および客観的機能低下はみとめられない 5-10 年前と比較して職業あるいは社会生活上、主観的および客観的にも変化は全く認められず支障を来すこともない
2.非常に軽度の認知機能の低下 年齢相応 ものの置き忘れを訴える。喚語困難* 名前やものの場所、約束を忘れたりすることがあるが年齢相応の変化であり、親しい友人や同僚にも通常は気がつかれない。複雑な仕事を遂行したり、込み入った社会生活に適応していく上で支障はない。多くの場合、正常な老化以外の状態は認められない。
3.軽度の認知機能低下 境界状態 熟練を要する仕事の場面では機能低下が同僚から指摘される。新しい場所に旅行することは困難 初めて、重要な約束を忘れてしまうことがある。初めての土地への旅行のような複雑な作業を遂行する場合には機能低下が明らかになる。買い物や家計の管理あるいはよく知っている場所への旅行など日常行っている作業をする上では支障はない。熟練を要する職業や社会的活動から退職してしまうこともあるが、その後の日常生活の中では障害は明らかとはならず、臨床的に軽微である。
4.中程度の認知機能低下 軽度のアルツハイマー型 夕食に客を招く段取りをつけたり、家計を管理したり、買い物をしたりする程度の仕事でも支障を来す。 買い物で必要なものを必要な量だけ買うことができない。誰かがついていないと買い物の勘定を正しく払うことができない。自分で洋服を選んで着たり、入浴したり、行き慣れている所へ行ったりすることには支障はないために日常生活では介助を要しないが、社会生活では支障を来すことがある。単身でアパート生活している老人の場合、家賃の額で大家とトラブルを起こすようなことがある。
5.やや高度の認知機能低下 中等度のアルツハイマー型 介助なしでは適切な洋服を選んで着ることができない、入浴させるときにもなんとかなだめすかして説得することが必要なこともある。 家庭での日常生活でも自立できない。買い物をひとりですることはできない。季節にあった洋服を選んだりすることができないために介助が必要となる。明らかに釣り合いがとれていない組合せで服を着たりし、適切に洋服を選べない。毎日の入浴を忘れることもある。なだめすかして入浴させなければならないにしても、自分で体をきちんと洗うことはできるし、お湯の調節もできる。自動車を適切かつ安全に運転できなくなり、不適切にスピードを上げたり下げたり、また信号を無視したりする。無事故だった人が初めて事故を起こすこともある。きちんと服が揃えてあれば適切に着ることはできる。大声をあげたりするような感情障害や多動、睡眠障害によって家庭で不適応を起こし医師による治療的かかわりがしばしば必要になる。
6.高度の認知機能低下 やや高度のアルツハイマー型 a. 不適切な着衣 寝巻の上に普段着を重ねて着てしまう。靴紐が結べなかったり、ボタンを掛けられなかったり、ネクタイをきちんと結べなかったり、左右間違えずに靴をはけなかったりする。着衣も介助が必要になる。
b. 入浴に介助を要する。介助を嫌がる。 お湯の温度や量を調節できなくなり、体もうまく洗えなくなる。浴槽に入ったり出たりすることもできにくくなり、風呂から出た後もきちんと体を拭くことができない。このような障害に先行して風呂に入りたがらない、嫌がるという行動がみられることもある。
c. トイレの水を流せなくなる 用を済ませた後水を流すのを忘れたり、きちんと拭くのを忘れる。あるいは済ませた後服をきちんと直せなかったりする
d. 尿失禁 時にcの段階と同時に起こるが、これらの段階の間には数ヶ月間の間隔があることが多い。この時期に起こる尿失禁は尿路感染やほかの生殖泌尿器系の障害がよく起こる。この時期の尿失禁は適切な排泄行動を行ううえでの認知機能の低下によって起こる。
e. 便失禁 この時期の障害は(c)や(d)の段階でみられることもあるが、通常は一時的にしろ別々にみられることが多い。焦燥や明らかな精神病様症状のために医療施設を受診することも多い。攻撃的行為や失禁のために施設入所が考慮されることが多い。
width=”70″>7.非常に高度の認知機能低下 高度のアルツハイマー型 a. 最大限 6 語に限定された言語機能の低下 語彙と言語能力の貧困化は Alzheimer 型認知症の特徴であるが、発語量の減少と話し言葉のとぎれがしばしば認められる。更に進行すると完全な文章を話す能力は次第に失われる。失禁がみられるようになると、話し言葉は幾つかの単語あるいは短い文節に限られ、語彙は 2 、 3 の単語のみに限られてしまう。
b. 理解し得る語彙はただ一つの単語となる 最後に残される単語には個人差があり、ある患者では ” はい ” という言葉が肯定と否定の両方の意志を示すときもあり、逆に ” いいえ ” という返事が両方の意味をもつこともある。病期が進行するに従ってこのようなただ 1 つの言葉も失われてしまう。一見、言葉が完全に失われてしまったと思われてから数ヵ月後に突然最後に残されていた単語を一時的に発語することがあるが、理解し得る話し言葉が失われた後は叫び声や意味不明のぶつぶつ言う声のみとなる。
c. 歩行能力の喪失 歩行障害が出現する。ゆっくりとした小刻みの歩行となり階段の上り下りに介助を要するようになる。歩行できなくなる時期は個人差はあるが、次第に歩行がゆっくりとなり、歩幅が小さくなっていく場合もあり、歩くときに前方あるいは後方や側方に傾いたりする。寝たきりとなって数ヵ月すると拘縮が出現する。
d. 着座能力の喪失 寝たきり状態であってもはじめのうち介助なしで椅子に座っていることは可能である。しかし、次第に介助なしで椅子に座っていることもできなくなる。この時期ではまだ笑ったり、噛んだり、握ることはできる。
e. 笑う能力の喪失 この時期では刺激に対して眼球をゆっくり動かすことは可能である。多くの患者では把握反射は嚥下運動とともに保たれる。
f. 昏迷および昏睡 Alzheimer 型認知症の末期ともいえるこの時期は本疾患に付随する代謝機能の低下と関連する。

*喚語困難:何か言おうとした時に、言うべき言葉が出てこない状態

認知症

2018.10.10

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です