慢性肝炎

慢性肝炎は、肝臓の炎症が長期間続いて肝臓の細胞が壊れる病気です。大部分が肝炎ウイルスの感染によるものです。75%はC型肝炎ウイルス、15%はB型肝炎ウイルスが原因です。

B型肝炎

B型肝炎ウイルス(HBV)による肝臓の炎症です。B型肝炎は血液を介して感染します。HBVの感染が長期間続いている人をHBVキャリアといい、ほとんどがHBVキャリアの母親から子供への母子感染によっておこります。

症状

B型肝炎ウイルス(HBV)に初めて感染すると、20-30%が急性肝炎になり、
全身倦怠感
食欲不振
悪心・嘔吐
黄疸
などの症状があらわれます。
残りの70-80%は、自覚症状がないまま治ってしまうことがあります。
HBVキャリアが肝炎をおこしたときも、急性肝炎と同じような症状がでることがあります。

検査

1.B型肝炎ウイルスマーカー

B型肝炎ウイルス(HBV)が感染すると、肝炎の経過に応じて血液中にHBVの抗原と抗体があらわれます。それぞれの抗原、抗体については、下の表のような意味があります。

HBs抗原 HBV感染状態
HBs抗体 過去のHBV感染(感染防御抗体)
HBc抗体 低抗体価 過去のHBV感染(多くの場合HBs抗体陽性)
高抗体価 HBV感染状態(ほとんどの場合、HBs抗原陽性)
IgM-HBc抗体 低抗体価 B型急性肝炎とその数か月後、B型慢性肝炎の急性増悪
高抗体価 B型急性肝炎
HBe抗原 血中HBV多い
HBe抗体 血中HBV少ない
HBV DNA 血中HBV量を示す
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HBVは、HBs抗原の殻にHBc抗原の芯が包まれた構造をしています。また、HBVが活発に増殖する時にHBe抗原が作られます。これらの抗原に免疫反応がおこり、抗体がつくられます。HBs抗原に対する抗体がHBs抗体、HBc抗原にHBc抗体、HBe抗原にHBe抗体がつくられます。抗体にはいくつかのタイプがあり、感染の急性期にはIgM型の抗体が、慢性期にはIgG型の抗体がつくられます。

2.肝機能検査

AST(GOT)、ALT(GPT)は肝細胞に含まれる酵素で、肝細胞が壊れると血液中にでてきます。ASTやALTの値が高い時は、肝臓が炎症をおこしています。

3.超音波検査(腹部エコー)
肝臓の中を観察して、炎症の程度を判断します。

4.肝生検
肝臓に長い針を刺して、肝臓の一部を採取します。肝炎の診断や進行の程度、治療の効果判定などに大切な検査です。

HBVキャリアの転帰

HBVが持続的に感染しているが肝機能が正常な場合を無症候性キャリアといいます。無症候性キャリアの約90%は、自然にHBe抗原が陰性化し、HBe抗体が陽性となり、肝炎をおこしにくい状態になります。これをセロコンバージョンといいます。残りの約10%は、慢性肝炎になります。慢性肝炎の20-30%は強い炎症が持続する結果、肝臓が硬く線維化をおこして肝硬変になります。

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HBVキャリアの日常生活における感染予防のポイント

  1. 血液や分泌物が付いた物は、むき出しにならないようにビニール袋にしっかりくるんで捨てるか、流水でよく洗い流す。
  2. 外傷、皮膚炎あるいは鼻血、月経血などはできるだけ自分で処置し、また、処置を受ける場合は、処置する人が血液や分泌物を付けないように注意する。
  3. かみそり、歯ブラシなどの日用品は専用にし、他人に貸さないように、また、借りないようにする。
  4. 乳幼児に、口移しで食べ物を与えないようにする。
  5. トイレを使用した後は流水で手洗いする。
  6. 献血はしない。

治療

年齢や肝生検による組織検査、HBV DNAの量によって治療方針が決定されます。

  1. インターフェロン
    筋肉または静脈内に注射する抗ウイルス薬です。HBe抗原陽性のB型肝炎では24-48週間の投与を行います。
  2. エンテカビル
    B型肝炎ウイルスの増殖を抑える飲み薬です。効果が強く、耐性ウイルスの出現が少ないので、第一選択となっています。
  3. ラミブジン
    B型肝炎ウイルスの増殖を抑える飲み薬です。耐性ウイルスの出現が問題になります。
  4. アデフォビル
    B型肝炎ウイルスの増殖を抑える飲み薬です。ラミブジンやエンテカビルに耐性があらわれたときに使われます。
  5. その他の治療薬
    強力ネオミノファーゲンC、ウルソデオキシコール酸、小柴胡湯:
    肝炎ウイルスに対する直接の効果はありませんが、肝炎を沈静化させる効果があります。

C型肝炎

C型肝炎ウイルスによる肝臓の炎症です。C型肝炎は血液を介して感染します。肝炎ウイルスによる慢性肝炎の約70%がC型肝炎です。

症状

自覚症状に乏しいのが特徴です。
健康診断や、他の病気で治療中に偶然に発見されることが圧倒的に多い病気です。

HCV感染者の転帰

C型肝炎の約70%が慢性肝炎になり、慢性肝炎の約30-40%が10-30年の経過で肝硬変に進行します。C型慢性肝炎はB型と異なり、炎症が強い状態を放置すると確実に肝硬変に進行していきます。肝硬変になると80%の患者で肝癌が発生すると考えられます。

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検査

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  1. HCV抗体
    HCV抗体が陽性とは、これまでにHCVの感染を受けたことを意味します。つまり、過去にHCVの感染があって治癒している場合と、現在も感染が持続している場合があります。
  2. HCV RNA
    HCV RNA検査は血液中のHCV遺伝子そのものを測定する検査です。HCV抗体が陽性のときはHCV RNA検査を行い、血液中にHCVが存在するかどうかを確認します。

治療

  1. インターフェロン
    C型肝炎ウイルスのウイルス量や遺伝子型によって治療効果に差がでます。PEG-インターフェロンは長時間作用するため、週1回投与が可能です。
  2. リバビリン
    抗ウイルス薬のリバビリンは単独では効果がありませんが、インターフェロンと併用すると有効です。
  3. その他の治療薬
    強力ネオミノファーゲンC、ウルソデオキシコール酸、小柴胡湯

肝細胞癌

肝細胞癌の90%はB型およびC型肝炎ウイルスによるものです。慢性肝炎、肝硬変は肝癌になる危険が高いため、定期的な検査が必要です。
肝細胞癌の早期発見のためには、超音波検査、CT検査、MRI検査、腫瘍マーカー(AFP, PIVKA-II)を組み合わせて検査する必要があります。

参考

慢性肝炎・肝硬変の診療ガイド 2013 日本肝臓学会編

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