百年独居

90歳を越えた高齢者が、救急車で運び込まれてくる。

肺炎や認知症で動けなくなった患者さんが多い。

身元を確認すると、かなりの方が独居で過ごされているのに驚く。

 

平成28年版 厚生労働白書によれば、

65歳以上の4分の1超が単身世帯、夫婦だけの世帯が3割。

夫婦だけの世帯も、高齢になりどちらかが亡くなれば、独居ということになる。

 

経済的に施設に入れない方もいるし、

本人が施設への入居を頑として拒否する方もいる。

多くの場合、認知症を患っているので、いまさら同居といっても家族が対応できないことも多い。

 

元気で、子供に迷惑もかけず、一人で生きてきたのだけれど、

だんだんと年取り、認知症やら病気をかかえて身動きできなくなってしまった。

子供たちも相応の歳になり、自分のことで精一杯で、親の面倒をみる余裕がない。

そうした複雑な事情が、超高齢者の独居を生みだしている。

 

肺炎や脱水症で運び込まれてくる高齢者は、

よく今まで生きてこられたなと思うほど、病気がこじれているケースが多い。

 

入院前は歩いて自炊していたのだから、元のようにしてください。

自宅の前の数段の階段を登れるまでにしてください。

自分で食事が食べられるようにしてください。

ご家族からは、そう要望される。

しかし、いったん壊れた高齢者の体は、元通りになることは難しい。

ようやく内科の治療を終え、リハビリをして何とか動けるようになって自宅に戻しても、

早晩、救急車で戻ってくるのはわかっている。

 

90歳で独居ということは、死ぬまで独居ということだろう。

ならば、静かな看取りができるような独居にできないものか。

自宅に退院していく独居の高齢者を見送りながら、そう思う。

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