肺炎を治療しない選択

高齢者の肺炎と、若い方の肺炎は違う病気であることを、医知場でも何度か紹介してきました。

高齢者の肺炎は、脳の機能、とくに物を飲み込む機能が衰えて、肺に誤嚥して起きる「誤嚥性肺炎」が多く、

それは単なる肺炎ではなく、老化や衰弱を反映しているからです。

こうした高齢者の肺炎は、何度も繰り返し、抗生剤の効かない耐性菌をつくり、やがて亡くなってしまいます。

かつては、老衰といわれていた状態です。

このような肺炎は、いくら強力な抗生剤(正確には抗菌薬)を使っても治りません。

抗菌薬にも限界があるからです。

 

病気の治療は、専門家が標準的な治療を解説した「ガイドライン」に従って行っています。

ガイドラインはあくまでも標準的な治療を示したものですから、すべての答えが書かれているわけではなく、

患者さんの病状に応じて治療を工夫しています。

 

今年(2017年)の4月に日本呼吸器学会から、肺炎の治療に関するガイドラインが発表されました
(成人肺炎診療ガイドライン2017)。

このガイドラインでは、高齢者の誤嚥性肺炎に関して、「治療をしない選択」もあることが提示されています。

成人肺炎診療ガイドライン2017(日本呼吸器学会)から、その部分を抜粋し、一部を少しわかりやすく書き直してみました。

 

「誤嚥性肺炎は、日常生活の活動性や全身機能の低下、とくに脳血管障害を有する場合に認められやすい嚥下機能障害を背景に起きる肺炎で、高齢者の食事摂取に関連して発症する。

がんなどの疾患末期や老衰の末期などのいわゆる終末期における肺炎の治療は、必ずしも患者のQOLを改善するとは限らない。

そのため、治療法の選択にあたっては、苦しみをとる緩和療法に加えて、肺炎の治療をどのように行うかの判断が求められる。

 

細菌性肺炎は、一般に、抗菌薬によって治療可能な良性疾患である。

しかし、がんなどの疾患末期状態や老衰の過程のある人に起こった肺炎は、死亡の契機となったり、病状が改善したとしても病前の状態に復帰できず、むしろ耐え難い苦痛や不快感が持続する、あるいは繰り返す可能性がある。

そこで、終末期の患者の肺炎の診療に際しては、まず、個人の意志の尊重を最優先とする。

 

人工呼吸器による管理や広域抗菌薬を用いた強力な肺炎の治療ではなく、緩和医療を優先して行う選択肢もあることを提示し、本人の意志を確認する。

また、本人の意思確認ができない場合は、本人の意志をよく知る家族が本人に代わって判断することを尊重する。

ただし、診療プロセスは、多職種によって構成された医療チームとして決定する。」

 

以上が該当部分の内容です。

 

高齢者の肺炎は老衰の結果として起きるものであり、それは避けることができない「人間としての最期の姿である」という認識を持たなくてはいけないというメッセージがこのガイドラインには込められていると、私は解釈しています。

成人肺炎診療ガイドライン2017(日本呼吸器学会)

 

 

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