病院で見える8050問題

80歳代の高齢になった親が、50歳代のひきこもりの子供を抱えて生活苦にあえぐ。いわゆる「8050問題」が、深刻な社会問題になっている。高齢な親は病気を抱え、通院したり、入院したりを繰り返すことも多い。

私がよく経験するのは、すでにご主人を亡くした80代後半の母親が、50代後半の息子と暮らしているケースだ。80-50というより、90-60くらいのことが多く、親子ともに高齢化が進んでいる印象だ。

内閣府の調査では、40歳以上のひきこもりの7割以上が男、とのことだから、確かにそういう図式になる。

診察室に母親に付き添ってやってくる息子は貧相で、働いている様子もない。それでも親孝行の息子だと感心していた時期もあったが、それほど親身に介護している風でもない。親の様子を聞いても、よく知らない。一緒に住んではいるが、顔を合わせているわけではなさそうだ。

息子の年齢では働く場所もなかろうし、働く気力も感じない。むろん、母親の収入は年金だから、息子は年金を当てにして暮らしている。

老衰ともいえる誤嚥性肺炎や心不全の末期で、もはや治療の余地のない患者さんを、「どうにか命だけはもたせてくれ」と、息子から頼み込まれることがある。それがもし年金のためだとしたら、悲しい。

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