脂肪肝は、肝臓に脂肪が沈着して肝機能障害をきたす病気です。以前はアルコールの多飲による脂肪肝が多かったのですが、アルコールの摂取がなくても脂肪肝がおきることがわかってきました。この病気を、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonaccoholic fatty liver disease)といいます。
健診を受ける方の約30%に脂肪肝があり、年々頻度は増加しています。また、脂肪肝には、多くの疾患が合併することが知られています。
脂肪肝の合併疾患
- 心血管疾患
- 胃食道逆流症・大腸腺腫
- 慢性腎不全
- 肝外悪性腫瘍
- 肝硬変・肝癌
- 不眠・うつ病
- 骨粗しょう症
- 糖尿病
- 睡眠時無呼吸症候群
一般に、脂肪肝は体重を減らし、飲酒を制限することで回復する良性の病気です。しかし、脂肪肝の一部には、肝硬変に進行し、肝細胞癌を合併することもある悪性のものがあります。これを、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non Alcoholic Steato-Hepatitis)といいます。
脂肪肝は、ウイルス性肝炎、アルコール摂取についで肝硬変の原因となる病気です。肝硬変の15%は脂肪肝が原因です。とくにNASHによる肝硬変からは、年に2-3%の頻度で肝癌が発生するという報告があります。
脂肪肝の原因
- アルコール多飲
- 肥満
- 糖尿病
- 脂質異常症
- メタボリックシンドローム
- 薬剤(ステロイドホルモン、女性ホルモン、アスピリン、Ca拮抗薬など)
脂肪肝の診断
- ほとんど無症状
- 肝腫大
- 肝機能値の異常(AST、ALTの高値)
- 腹部エコー、CT、MRI
- 肝生検による組織検査が必要になることがあります。
脂肪肝の治療
食事療法
- 標準体重1kgあたり[標準体重=身長(m)×身長(m)×22]
- 総カロリー:25-35kcal
- たんぱく質:1-1.5g
- 脂質は総カロリーの20-25%
- アルコールは原則禁止
運動療法
- 30-60分、週3-4回の有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水中歩行など)
- 無理のない方法で継続して行うように
薬物療法
糖尿病、脂質異常症、高血圧などの合併症の治療薬のなかには、脂肪肝に対して有効性が示唆されているものがあり、合併症の治療と脂肪肝の治療を並行して行っています。
- 糖尿病治療薬:チアゾリジン薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、ビグアナイド薬(メトホルミン)
- 脂質異常症治療薬:スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤、エゼチミブ
- 降圧薬:アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、ACE阻害薬
- 抗酸化療法:ビタミンE、ペントキシフィリン、ベタイン、瀉血療法
- 肝臓用薬:ウルソデオキシコール酸、強力ネオミノファーゲンシー
外科療法
- 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術、腹腔鏡下胃バイパス術
- 肝移植
肥満と脂肪肝
日本の成人男性の約3割、女性の約2割が肥満です。年代別にみると、男性では40歳代が最も高く、次いで50歳代となっています。一方、女性は高年齢層で肥満者の割合が高くなり、60歳代で最も高くなっています。肥満者の30%以上、高度の肥満では80%以上が脂肪肝を合併しています。脂肪肝のある肥満の方は、ただの脂肪肝、とあなどることなく、減量にとりくみましょう。
脂肪肝の食事療法
脂肪肝の食事療法は、糖尿病の食事が参考になります。まず、あなたの標準体重(理想体重)の計算からはじめます。標準体重は身長から計算されます。
- 標準体重=身長(m)×身長(m)×22
- 身長160cmの場合、標準体重=1.6×1.6×22=56kg
1日の摂取カロリーは標準体重に30をかけます。標準体重56kgの場合は、30×56で約1600kCalになります。具体的なメニューの組み立て方は、糖尿病食事療法のための食品交換表(日本糖尿病学会)が大変参考になります。
- 肥満のある方は、とにかく減量が第一です。
- アルコールも脂肪肝の大きな原因ですから、肝機能値が正常化するまでは禁酒しましょう。
- 1日30分、1万歩を目標に歩きましょう。
こうした生活習慣の改善で肝機能値が改善しない場合は、おくすりが必要なこともありますから、主治医の先生と相談してください。
<参考> NASH・NAFLDの診療ガイド2021 日本肝臓学会編
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