麻しんは、感染力が極めて強いウイルス感染症ですが、ワクチンで予防可能です。ワクチンが効果を発揮するには、2回の予防接種が必要です。
2006年度から1歳児と小学校入学前1年間の幼児の2回接種制度が始まり、麻しんの予防が徹底されていますが、それ以前は、麻しんのワクチン接種は1回のみでした。1回の麻しんワクチン接種では、数%程度の人には十分な免疫がつかないことが知られています。そのような人は、麻しんの感染を予防するために、ワクチンの追加接種がすすめられています。
【ポイント】
- 2回のワクチン接種をした人、すでに麻しんにかかった人は、受ける必要はない。
- 妊娠している人は受けられない。
- 麻しんに対する免疫がない人が妊娠している場合は、人混みなどを避け、家族が予防接種を受けることで、妊婦への感染を予防する必要がある。
- 麻しんに対する免疫がない可能性がある人が、麻しんの流行地へ旅行する場合や、医療関係者等で感染リスクが高い人は、ワクチン接種が推奨される。
【MRワクチンを受けるときの注意点】
- 接種不適当者*に該当しないことを確認する。
- 麻疹含有ワクチンの接種歴は記録で確認する(記憶はあてにならない。接種の記録がなければ、受けていないと考える)。
- 妊娠出産年齢の女性は、接種前に妊娠していないことを確認し、ワクチン接種後約2カ月間は妊娠しないように注意する。
- 1歳以上で2回の麻疹含有ワクチンの接種記録がある者、検査診断された麻疹の罹患歴がある者、既に発症予防に十分な麻疹抗体価を保有していることが明らかな者は受ける必要はない。
- 初回接種の場合は、接種後5~14日を中心として、約20%に発熱、約10%に発疹が見られることがあることに注意する。2回目接種の場合は、これらの症状出現頻度は低い。
- 接種不適当者に該当する場合は、麻疹抗体価を確認し、免疫状態を把握しておく。その結果、麻疹抗体価が陰性あるいは低い抗体価であった場合は、人が多く集まるところや麻疹流行国に行くのを避け、家族や周りの者が必要回数である2回の予防接種を受けて、麻疹に対する免疫を獲得しておく。
【MRワクチンの接種不適当者*】
- 明らかな発熱を呈している者
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
- 本剤の成分によってアナフィラキシー#を呈したことがあることが明らかな者
- 明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者
- 妊娠していることが明らかな者
- 上記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
#アナフィラキシー:重症のアレルギー反応のことで、全身の発疹、かゆみまたは紅潮、口唇の腫れや浮腫、呼吸困難、喘鳴、血圧低下、意識障害、腹痛、嘔吐などを認める。
【可能な限り早めのMRワクチン接種が推奨される者】
- 1か月以内に海外旅行・国内旅行を予定している者(可能な限り2週間以上前に接種を済ませる。旅行直前に接種する場合は、接種後5~14日の体調変化に注意が必要)
- 医療関係者(救急隊員、事務職員等を含む)
- 保育関係者
- 教育関係者
- 不特定多数の人と接触する職業に従事する人
- 近隣で麻疹患者の発生が認められる、生後6-11か月児(緊急避難的な場合に限る)
- 0歳児の家族
- 麻疹抗体価陰性あるいは低抗体価の妊婦の家族
- 麻疹抗体価陰性あるいは低抗体価の麻疹含有ワクチン接種不適当者の家族
- 2歳以上第2期定期接種対象期間に至る前の幼児で、麻疹含有ワクチン未接種あるいは接種歴不明者
- 小、中、高、大学、専門学校生等で、麻疹含有ワクチン未接種あるいは1回接種あるいは接種歴不明者
- 【注意点】
- 麻疹患者と接触あるいは空間を共有した感受性者#(生後6か月以上に限る)に対する緊急接種は、定期、定期外に関わらず、速やかに検討する。
- 生後6-11か月で接種しても、第1期、第2期の定期接種は忘れずに接種する。(0歳での接種は接種回数としてはカウントしない。)
- MRワクチンは、通常、1歳以上で2回接種する(接種記録は大切に保管する)。
- 1歳以上第2期定期接種対象期間に至る前の幼児で、麻疹含有ワクチン1回接種者については、麻疹患者との接触の程度、状況に応じて、緊急避難的な場合に限って検討する。
- #感受性者:麻疹に対する免疫が不十分な者(麻疹未罹患あるいは罹患歴不明で、かつ、ワクチン未接種あるいは1回接種あるいは接種歴不明の者、あるいは、麻疹に対する抗体価が陰性あるいは低抗体価の者)
<参考>
国立感染症研究所 感染症疫学センター「麻しん風しん混合(MR)ワクチン接種の考え方」(2018年4月17日)
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