妻の母親は、新幹線に乗ればすぐに会える距離に住んでいるのに、ずいぶん、ご無沙汰していました。この前、妻の帰省に便乗して、久しぶりに妻の実家に顔をだしました。
義母の認知症がすすんでいる話は聞いてはいたのですが、元気な頃の姿しか記憶にないので、半信半疑でした。
久しぶりに会った義母は、少し痩せており、いくぶん心細そうな表情をしていました。
ひとしきり雑談が終わると、義母が2階の寝室から、茶色のアルバムを大事そうに抱えて降りてきました。私と妻の結婚式のアルバムでした。
「なかなか、見ないでしょう。私は、いつも、寝る前に見てるのよ。」そこには、若くて、きれいな妻と、白髪のない若造の私が写っています。寝室のベッドの上で、娘の晴れ姿を何度も見返しているのでしょう。義母は、大事そうにアルバムを閉じると、小脇に抱えて2階に仕舞いにいきました。
しばらくすると、義母は、また、2階の寝室に上がっていきました。そして、茶色の私たちの結婚式のアルバムを、大事そうに見せてくれるのです。「なかなか、見ないでしょう。私は、いつも、寝る前に見てるのよ。」
結局は、同じアルバムを、三回、見せられたのですが、おかげで、きれいな妻の顔を何度も見ることができました。
ほんの数分前の記憶はなくしても、20年前の娘の結婚式の姿は、義母の思い出の記憶のなかで、美しく輝いているのです。
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