93歳のおばあちゃんは、コロナにかかった後から、めっきり認知症がすすんで退院できなくなってしまった。
一時は食べ物を飲み込むこともできなくなり、点滴でなんとか過ごしていたが、言葉もでなくなり、寝てばかりの時間が過ぎていった。
それでも、嚥下リハビリの効果が出始め、ミキサーですりつぶした食事をスプーンで食べることができるようになると、少しずつ、元気が出てくるようで、うつろな瞳にも活気のある光が戻ってきたようにみえた。
朝、「おはよう」と声をかけると、
「、、、おはよう、、、」
微かな声ではあったが、返事が返ってくる。
「おはよう、調子はどう?」
「おはよう、、、だいじょうぶ、、、」
そんな返事が返ってくるだけで、ずいぶん、元気になったものだとスタッフと喜んでいた。
そんな、ある日。
いつものように、「おはよう」と声をかけると、
「おはよう」の返事と一緒に、
「先生に会うと、楽しい気持ちになる」
とわずかな笑顔を添えた返事が返ってきた。
きついこともたくさんある仕事だが、
こんな気持ちになるから、医者はやめられない。
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