Ask Me 3 と Teach-back で患者さんにわかりやすく説明する

患者さんにわかりやすく説明するのは難しいと、つくづく感じます。

そもそも、患者さんがこちらの説明をどれくらい理解しているかを見極めるのが難しいからです。患者さん側も、「わからないところが、わからない」「何を聞いていいのかが、わからない」ということがあります。

YouTubeの「医知場ちゃんねる」動画で解説

Ask Me 3

まず、患者さん側がわからないことを気軽に質問できる環境をつくることが大事です。患者さんが何を質問すればいいかをわかりやすくするために、3つの質問をしてもらい、それに医師が答える手法を「Ask Me 3(アスク・ミー・3)といいます。

  • 患者さんから、次の3つの質問をお受けします。
  1. 私の一番の問題はなんですか? 
  2. 私は何をする必要がありますか?
  3. それをすることが私にとってなぜ重要なのですか? 

この3つのことを、患者さんが理解できていれば、患者さんにとって何をすることが重要で、そのためにどうすればいいかという指導を行うことができます。この質問に、患者さんが自分で答えることができるようになると、かなり、自分の病気を理解していることになります。また、患者さんから質問してもらうことで、「医師に質問してもいい」という雰囲気を作ることができます。

Teach-back

患者さんへ説明した後、「わかりましたか?」と尋ねると、ほとんどの方は「わかりました」と答えます。ただし、これは本当に理解しているわけではなく、理解していないことを医師に言えないからでもあります。わからないというと医師の機嫌を損ねるのではないかと、質問を控えることもあるでしょう。そこで使いたい手法が「ティーチバック(Teach-back)」です。ティーチバックは「教え返す」という意味で、医師が説明した内容を、患者さんが自分の言葉で主治医に説明し返す方法です。

単にオウム返しにするのではなく、あくまで「自分の言葉」で説明します。うまくできないときは、医師が別の言い方で説明を繰り返し、さらに患者さんが説明し返すことを「腑に落ちる」まで繰り返します。こうすることで、自分の病気に対する理解が深まってゆくのです。

ChatGPTにTeach-backを質問、こんな会話例を教えてくれました

  • 例①

医師: こんにちは、お元気ですか? 前回の診察からどのような症状の変化がありましたか?
患者: こんにちは、ちょっと疲れやすくなった気がします。
医師: それは分かりました。前回の診察でお伝えした薬の使用方法について覚えていますか?
患者: はい、朝と夕食後に1錠ずつ、飲むことだったと思います。
医師: 正解です。それでは、次回の予約は来週の水曜日になります。それまでに症状が悪化したり、新しい変化があれば、すぐに連絡してくださいね。
患者: わかりました、ありがとうございます。

  • 例②

医師:よろしくお願いします。今日は新しい薬の使用方法について説明させていただきます。薬の名前は「ヘルシンク」といいます。
患者:わかりました、ありがとうございます。
医師:ヘルシンクは、毎日、朝食後に1錠服用してください。薬は胃の負担を軽減するために食後に服用することが重要です。
患者:了解しました、毎日、朝食後に1錠服用しますね。
医師:正しいです。薬を飲む際には、水またはぬるま湯で服用してください。水分と一緒に摂ることで、薬が体内で効果的に広がりやすくなります。
患者:分かりました、水またはぬるま湯と一緒に服用します。
医師:その通りです。薬の飲む時間を同じ時間にすることで、薬の効果を十分に発揮させることができます。

患者さんが健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して、活用する能力を「ヘルスリテラシー」といいます。リテラシーとは、読み書きする能力ということですから、「ヘルスリテラシー」は、自分の体や病気のことを理解する基本的な能力ともいえます。

学歴や社会的な地位が高い方が、「ヘルスリテラシー」が高いとは限りません。むしろ、自分の思い込みで行動してしまい、失敗することもあります。

ヘルスリテラシーの高い患者さんを育てることは、患者さんの健康を維持し、病気の治療を続ける上で大事なアプローチなのですが、3分診療の日本の診察室では「言うは易く行うは難し」です。医師と患者さんのコミュニケーションを深め、患者さんに主体的に自分の病気の理解にかかわってもらうために、まずは、「Ask Me 3」、「Teach-back」の手法をとりいれてみたいと思っています。

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