劇症型溶連菌感染症、人食いバクテリアの正体

メディアで「人食いバクテリア」と報道されている病気は、「劇症型溶連菌感染症」のことです。Streptococcal Toxic Shock Syndromeを略して、STSSとよばれます。

YouTubeの「医知場ちゃんねる」で解説しています

STSSは、溶連菌の感染によっておこるもので、1994年にイギリスの新聞が「人食いバクテリア」という記事を発表したため、今でもその名で報道されていますが、「人食いバクテリア」という細菌は存在しません。

STSSの主な病原菌は、A群溶血性レンサ球菌です。STSSでは毒素産生能が強いM1UK系統株が高頻度で検出されています。M1UK系統株は、他のM1型株と比べて発赤毒素の産生量が約9倍多く、伝播性も高いとされています。

A群溶血性レンサ球菌は、球状の細菌がつながっていることから、連鎖球菌の名前がついています。簡単に溶連菌という場合は、この菌を指しています。化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)とも呼ばれます。もともと、健康な人の咽頭(のど)や、消化管、皮膚にも生息している常在菌です。細胞表面のMタンパク質の構造により多くの型に分類され、型の違いによって、咽頭炎、糸球体腎炎、リウマチ熱などを起こすことが知られています。

発生状況(2024年7月9日更新)
2024年 第26週:2024/6/24-6/30
新規33名:累計1144名 (2024年)

  • 日本国内での劇症型溶血性レンサ球菌感染症の報告状況
2019 2020 2021 2022 2023 2024(~6/23)
報告数 894 718 622 708 941 1144

症状

  • 始まりは発熱、腕や足の痛みや腫れ、血圧低下、筋肉痛など
  • その後、急速に、軟部組織の壊死、呼吸状態の悪化、急性腎不全などの多臓器不全
  • 場合によっては、数時間で、非常に急速に全身状態が悪化します

感染経路

半数近くが傷口からの感染と考えられますが、感染経路が不明なケースも多くみられます。

予後

報告された患者の約30%が死亡しており、きわめて致死率の高い病気です。患者数は大幅に増加しており、とくに2024年はすでに過去最高であった2023年を超えています。

日本国内における劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)として届出された症例のうちA群溶血性レンサ球菌(GAS)による症例数の推移(診断日:2018年1月1日~2024年6月16日、 2024年6月19日時点)

治療

  • 抗菌薬治療(ペニシリン系が第一選択)
  • 局所の感染が進行する場合は、迅速な外科的処置が必要

感染対策

手指衛生や咳エチケット、傷口の清潔な処置といった、基本的な感染防止対策

初期症状として特徴的なものが、手足の激しい痛みです。発熱に、手足の激しい痛みを感じる場合は、速やかに医療機関を受診してください。

参考

くしゃみ

溶連菌(溶血性レンサ球菌)感染症

2019年11月14日

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