院内感染とは、病院などの医療機関内で、新たに細菌やウイルスなどの病原体に感染することをいいます。
- 医療機関内で患者がもともとの病気とは別の感染症にかかる場合以外に
- 医療機関内で医療従事者が感染した場合も院内感染と考えます
- 病院感染、医療関連感染ともいわれます
「院内感染」に対して、病院外の社会生活の中で感染がおきることを「市中感染」とよびます。
- 院内感染は、
- 患者さんから患者さんへ直接感染が広がるだけでなく、
- 医療従事者を媒介して感染したり、医療機器やベッド、トイレなどに付着した病原体が感染を引き起こすことがあります
入院中の患者さんは、病気で免疫力が低下していたり、高齢者など感染症にかかりやすい方が大半で、感染力の弱い病原体でも容易に感染を起こし、集団発生(アウトブレイク)をおこすことがあります。
治療のために必要な処置も、感染症の原因になります
- 血管にカテーテルという細いチューブを留置して、栄養剤や薬などの点滴を行うと、細菌が直接、血液の中で増殖し、重症の感染症を起こすことがあります
- 尿をだすための尿道カテーテルも感染源になります
- 人工呼吸器も肺に酸素を送る管が感染源となります
感染経路によって予防法はかわります
細菌やウイルスは種類によって遠くまで届くものと届かないものがあります。これは、細菌やウイルスがつくる粒子の大きさに違いがあるからです。
粒子の小さいものは、空気中を長い間ふわふわと浮かんでいるので、空気の流れによって遠くまで運ばれ、感染をおこします。これを空気感染といい、結核菌、麻しんウイルス(はしか)、水痘ウイルス(みずぼうそう)などが原因になります。感染者のすぐ近くにいなくても、同じ部屋にいるだけで感染することもあります。
大きな粒子をつくるものは、咳やくしゃみの時にせいぜい1mほどしか飛びません。これは飛沫(ひまつ)感染といい、インフルエンザウイルスやムンプスウイルス(おたふくかぜ)、風しんウイルス、レジオネラ菌などが原因になります。飛沫感染は、マスクをして咳やくしゃみの飛沫を防ぐことが、感染予防でもっとも重要です。
残りの感染症はたいてい指や食品、器具に付着した菌やウイルスがうつっていく接触感染です。胃腸炎の原因になるノロウイルス、大腸菌、院内感染の原因になるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や緑膿菌などが、接触感染でうつります。接触感染を防ぐには、手洗いがもっとも有効です。
そのほかにも、手袋やガウン、ゴーグル、フェイスシールドなどの個人防護具(PPE)を使用して、医療従事者自身を感染から守り、他の患者さんへ感染を広げないような対策がとられます。
感染症は、原因になる細菌やウイルスによって感染のしかたが異なり、それに応じた予防法が必要になります。
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