人から人へうつっていく感染症の原因は細菌やウイルスですが、細菌やウイルスは種類によって遠くまで届くものと届かないものがあります。これは、細菌やウイルスがつくる粒子の大きさに違いがあるからです。
飛沫感染
- 大きな粒子をつくるものは、咳やくしゃみ、会話の時にせいぜい1mほどしか飛びません。これは飛沫(ひまつ)感染といい、インフルエンザウイルスやムンプスウイルス(おたふくかぜ)、風しんウイルス、レジオネラ菌などが原因になります。
- 飛沫感染は、マスクをして咳やくしゃみの飛沫を防ぐことが、感染予防でもっとも重要です。
空気感染
- 粒子の小さいものは、空気中を長い間ふわふわと浮かんでいるので、空気の流れによって遠くまで運ばれ、感染をおこします。これを空気感染といい、結核菌、麻しんウイルス(はしか)、水痘ウイルス(みずぼうそう)などが原因になります。感染者のすぐ近くにいなくても、同じ部屋にいるだけで感染することもあります。
- 結核菌は、30分から170分間ほど、空気中を浮遊するといわれます。面会時に患者さんが咳をしていなくても、その数分前に咳をしていたら、空気中に結核菌が漂っている可能性があります。
- 空気感染は、一般のマスクをするだけでは感染を防ぐことが難しい危険な感染です。
接触感染
- 残りの感染症はたいてい指や食品、器具に付着した菌やウイルスがうつっていく接触感染です。胃腸炎の原因になるノロウイルス、大腸菌、院内感染の原因になるMRSAや緑膿菌などが、接触感染でうつります。
- 接触感染を防ぐには、手洗いがもっとも有効です。
標準予防策
標準予防策は、医療機関ですべての患者さんの感染対策のために行われる基本的な予防策のことです。「すべての患者さんの血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜などは、感染する危険性があるものとして取り扱わなければならない」という考え方を基本としています。感染の危険性があるものを取り扱うためには、適切な個人防護具 (PPE) を使うことが必要です。
- 個人防護具
- 口、鼻の粘膜が汚染されそうなときは、マスク
- 血液などの体液に触るときは、手袋
- 処置の前後には、手洗い、手指消毒
- 衣服が汚れそうなときは、エプロン
- 飛沫が眼に入りそうなときは、アイシールド
- 眼、口の粘膜が汚染されそうなときは、フェイスシールド
- 標準予防策の目的は
- 医療従事者自身の感染を防ぐため
- 患者さんを交差感染(人から人への感染)から守るため
- 感染症が明らかに診断されているかどうかに関わらず、すべての患者のケアに適用されます。
感染症が明らかになったときは、標準予防策に加えて、感染経路別予防策を行います。これは、感染性の強い病原体に感染している患者さんに対して、その感染経路を遮断するために行われます。接触感染、飛沫感染、空気感染など、感染経路を意識した予防策を行います。
感染症は、原因になる細菌やウイルスによって感染のしかたが異なり、それに応じた予防対策が必要になります。
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