親父に経鼻胃管をいれた長男

経鼻経管

私の父は長い間、パーキンソン病を患っている。

パーキンソン病は、神経の潤滑油であるドパミンが切れていく病気で、筋肉が固く縮んで、しだいに手足が動かしにくくなっていく。認知症を合併することも多い。

薬の効いている「オン」の時間と、薬の効果が切れる「オフ」の時間が、1日に何度も繰り返すのも特徴で、オフのときは、まったく体が動かせなくなり、声をかけても返事がない。

病気が進むと、しだいに、オフの時間が長くなり、やがて寝たきりになる。手足だけでなく、飲み込んだり、排便したりする神経の機能も落ちていく。物を飲み込む嚥下の機能が落ちてくると、食事や唾液がうまく食道に飲み込めずに、肺に流れ込んで、誤嚥性肺炎を起こす。

飲み込む力も、むせて吐き出す力も失くしてしまった状態なので、もともと細菌がいっぱいの口から食物を誤嚥すれば、細菌の塊が直接、肺に流れ込み、急激に重症の肺炎を起こしてしまう。誤嚥を起こし始めると、病気としてはかなり進行した状態で、看取りの時期が近づいていることを意味している。

誤嚥するなら食事をさせなければいい、と思われるかもしれないが、胃ろうにしようが、点滴だけにしようが、唾液でも誤嚥してしまうので、食事を止めれば誤嚥しないというわけではない。

「胃ろう」は腹壁から胃にチューブを留置して栄養剤を流し込むのだが、胃がんなどで胃の切除をしている患者さんには、胃ろうを作れないことが多い。それ以外の方法で栄養補給をしようとすると、鼻からチューブを胃に入れて栄養剤を注入する「経鼻胃管」という方法、首に近くの太い静脈から点滴をするためにCVポートという差込口を作って高カロリーの点滴を行う方法がある。

胃ろうも経鼻胃管も点滴も、患者さんにとっては不快なものだから、自分で抜いてしまうことがある。これは患者さんにとって危険なことだから、手にミトンという手袋をつけたり、ベッドに固定したりして、行動を「抑制」することになる。結局、嫌がる患者さんを羽交い締めにしている状態なので、できれば、したくはない。

夜間に看護師さんがいる老人ホームは、まず、ない。採算が合わないからだろう。看護師さんがいないと、痰がつまっても吸引ができなかったり、状態が急変しても対応が難しかったりする。看取りまでするという施設もあるが、何かあっても諦めてください、ということだろうか。管理が難しければ、ここでは対応できないので、どこか病院に行ってください、と言われることもある。

さて、私の親父であるが、だんだんパーキンソン病がすすみ、ほとんど1日中、オフとなった。誤嚥性肺炎も2度起こし、嚥下もままならない。訪問診療の先生から点滴をしてもらったが、血管が細くて、それも続かず。胃ろうはしたくないし、そもそも、胃の手術をしているので、その選択肢もない。あとは、干からびるの待つばかりになってしまった。

歳も九十近くで寿命とも思うが、なんとも忍びなく、勤務している病院に入院させてもらった。他に手段もないので、親父の鼻からチューブを入れ、経鼻胃管で栄養剤とパーキンソン病の薬を流し込んでいる。

カチカチに固まっていた親父の体も幾分柔らかくなり、目をパチパチして、一言、二言、話をするのだが、主治医兼長男は、これからどうしたものかと、孤独な悩みを抱えている。

胃ろうの作り方

2018年10月18日
誤嚥

誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

2016年3月24日
認知症

パーキンソン病と認知症

2010年3月23日

34 件のコメント

  • はじめまして。私の父は3週間ほど前に高熱が
    出てコロナと診断されました。
    約2週間の隔離の間にパーキンソン病の症状も
    悪化し、現在はCVポートで首から点滴をしている
    状態です。(熱も微熱が続いています)
    まもなく1週間が経過するのですが担当医師より
    胃ろうの話を持ちかけられました。

    そうすることでパーキンソン病の薬も投与
    しやすくなるということかと思いますが、
    正直父の姿が痛ましくて、お願いするべきか
    悩んでおります。

    ここは胃ろうをお願いすべきなのか助言いただけると
    幸いです。

    • ブロスさん、コメントありがとうございます。
      パーキンソン病の治療はほとんどが飲み薬で、注射薬でのコントロールは非常に難しいです。
      パーキンソン病がよほど末期ではなく、改善の見込みがあるならば、胃ろうは良い選択だと思います。
      いったん胃ろうをしても回復すれば抜去すれば良いのですから、主治医がすすめるのであれば、私は胃ろうをおすすめします。
      そちらの方が回復するチャンスがあります。あとは、納得するまで、主治医とよく相談してください。

  • はじめまして。70歳になる母はパーキンソン病と診断されて15年以上経ちました。
    口から食べられなくなったことをきっかけに2年前に入院しました。
    中心静脈栄養と点滴から、経鼻栄養チューブになり、先日、舌がおちて呼吸がしにくくなってきたため、気管切開と胃ろうの処置を医師から提案されました。

    父は少しでも生きられるのであれば、処置したいと言い、わたしは手術に伴う母への負担を思うと、これ以上頑張る必要はない・処置はしなくて良いという考えです。
    父とまったく意見が合いません。

    母はもう話すことが難しく、看護師さんから処置の話をされたときは首を横にふって意思を示したそうです。

    父との方針の違いをどう擦り合わせれば良いのか、母にとっての最善は何なのか、考えても分からず、、。
    長々と書いてしまい申し訳ございません。
    何かアドバイス頂ければ大変嬉しいです。

    • とこさん、コメントありがとうざいます。
      私の父もパーキンソン病で誤嚥性肺炎で亡くなりましたが、経鼻栄養は選びませんでした。
      まず、経鼻経管栄養ですが、今後も続けるのであれば、胃ろうのほうが本人の負担は少ないので、
      経鼻経管栄養を続ける気持ちがご家族にあれば、胃ろうという選択は間違いではないと思います。
      気管切開についてですが、胃ろうをするのであれば、少しでも延命を図るために選択肢になると思います。
      ですから、
      ①胃ろうも気管切開もせずに、看取りの時間をつくる
      ②胃ろうも気管切開もして、頑張る(頑張らせる)
      いずれかの選択になりますが、私は①を選びました。しかし、これはご家族のお考え次第で正解はありません。
      患者さん本人なら、どちらを選ぶだろうかという気持ちを第一に考えてあげることが必要です。
      お父様本人が、お母様と同じ状態になったときに、胃ろう、気管切開を選ぶのなら、それもよいでしょう。
      あくまでも、自分が本人の立場になったときに、何を選ぶかという論点で話し合われてみてはいかがでしょう。

  • 母が脳梗塞を発症して、発語できない、左麻痺となり、経鼻胃管となりました。私は胃瘻を望んだのですが、無理と言われ、自己抜去をしたからとミトンの同意もしてしまいました。EDチューブとカルテには書いてありました。2週間ごとに交換していました。数か月後、肺炎を起こし、レビンチューブ固定とか、CV足からとか、この時期からは中心静脈栄養をしているとカルテに書かれてありました。母は他界したので、カルテ開示して知ったことです。24時間入れっぱなしの鼻チューブと、栄養を入れる時だけの鼻チューブがあるのか、全くわかりません。見舞いに行った時は、綿で固定していなかったので、胃管ではないのかと推測しています。

    • FYさん、コメントありがとうございます。
      胃ろうができない場合は、胃と腹壁の間に腸が入り込んでいたり、胃を切除していたりして、技術的に胃ろうを造るのが難しい場合です。
      経鼻胃菅はもともと長期に留置するものではありませんが、経鼻胃菅をしていても、誤嚥性肺炎はおきます。
      中心静脈という太い血管にチューブ(カテーテル)を入れて、点滴で栄養剤を投与することをCV(中心静脈栄養)といいます。
      経鼻チューブは栄養入れるときだけ入れ替えるものではなく、いったん入れたら、しばらく入れっぱなしになります。
      いずれにしても、都度、ご家族に説明し、納得いただいてから、治療に移るのが原則ですので、
      ご家族が知らない、理解できていない状況で治療が選択されていたとしたら、残念です。

      • 返信ありがとうございます。胃瘻は、高齢だから、脳梗塞も広範囲だから、手術後にすぐに死ぬかもしれないと言われ、腕からの栄養も無理と言われ、経鼻は苦しい(苦しいのが鼻なのか喉なのかわかりませんが)ことも知らず、かわいそうなことをしたと後悔しています。誤嚥性肺炎を起こした時も、「うちでは何もできない、高齢で回復の見込みのない寝たきりの人を積極的に診てくれる病院はない」と言われ、それでも、了承できませんと言って、転院先をみつけてもらい、2週間で回復しました。この時のカルテには、穏やかな看取りをしたい、心臓マッサージなんかしたこともないし、わずかに延命しても苦しむだけだと説明したと書いてありましたが、私には、母を見殺しにすることに同意しろというのかと受け止めていました。あとで平穏死とか、延命治療とかの本を読んで、心臓マッサージをしたら骨折するとか書かれていて、そういうことを知っていれば、理解できたのにと、自分の知識のなさも後悔しています。何もしてくれなかったせいか、左足は拘縮してしまっていました。カルテ開示請求したあとも、手違いと行き違いとやらで1年待たされました。まずは、返信してくださり、ありがとうございました。

        • FSさん、コメントありがとうざいます。
          私がこのサイトを始めたのも、患者さんやご家族にきちんと説明し、ご理解された上で、治療の選択をして欲しい。そこにすれ違いがあると、患者さんやご家族にとっても、医療者にとっても、不幸な結果になるからです。医療者にとっては当たり前のことでも、ご家族にとっては初めての経験ですから、治療の選択は辛い判断になることでしょう。

          延命治療は、誤解を生んでしまう言葉です。そもそも、治療のすべては、延命することが目標のひとつです。ですから、適切な治療をしても心臓や呼吸が停止したとき、回復の見込みがない方に、心臓マッサージや人工呼吸器などの蘇生処置を控えること、「心肺停止時の蘇生処置をしない」ことに承諾をいただいています。ですから、何もしないということではなく、喀痰の吸引をしたり、酸素投与をしたり、点滴をしたりといった処置もせず、見殺しにすることではありません。そこが、きちんと説明できない医師の問題だと思います。

          今後も、私なりに情報の提供を通して、医療者と患者さん、ご家族が同じ方向を向いた医療を、コミュニケーションをとりながら進んでいくための、お手伝いをしたいと考えています。

    • YSさん、具体的なことは主治医にお聞きになった方がよいと思います。
      一般的には期限はありませんが、チューブは定期的に交換する必要があります。

      • 鼻チューブをして、転院になりました。脳内出血は落ち着き、言葉は無理ですが、理解は判るみたいです。鼻チューブは苦しいのですよね?飲み込む事が出来ないのですので、外す事は無理ですね?ご回答宜しくお願いします。

        • YSさん、コメントありがとうございます。
          詳しいことは主治医に質問された方がよいと思いますが、一般的な回答になります。
          経鼻チューブは、基本的には苦しいはずですが、それを意思表示できない状態なのだと思います。
          可能であれば、胃ろうの増設を行うか。それができなければ、このまま経鼻経管栄養を続けるしかないでしょう。
          経鼻チューブにしても、胃ろうにしても、誤嚥(不顕性誤嚥)を起こす危険性は残ります。

          • ありがとうございます。私は胃ろうはしたくないのです。鼻チューブで、もしかしたら、飲み込む事がリハビリでできる事を期待して生命力に祈ります。高齢なので痛みだけは避けたいのです。交換はどれくらいでするのでしょうか?転院の病院は面会できるので、母と会えるので容体確認します。痰吸引は8回もしていないそうです。

          • 医師-患者関係に関わりますので、私からは具体的は回答は控えさせていただきます。
            主治医とよくご相談の上、判断してください。

  • 今日母に、面会行きました。私が、分かるか尋ねたら首降って声出して見て言ったら言葉は、無理ですが、声は出ました。飲み込む力ないので鼻チューブです。施設には帰れないので次の療養施設を探して行くみたいです。家での看病は無理ですか?

    • YSさん、コメントありがとうございます。
      ご自宅で介護ができるかどうかは、介護される方の介護力次第だと思います。介護は休みなく続きますので、現実的な対応が必要です。
      まずは、ケアマネージャーなどの専門家と相談し、ご自宅で介護が可能かどうかを相談してください。
      経鼻経管栄養の患者さんを、ご自宅で介護するのは相当の負担になると思います。

      • 以前に、色々相談させて頂きありがとうございました。母は、3月15日に、永眠しました。まだまだたくさんの、悲しみと、闘っています。大変お世話になりました。

        • YSさん、お返事をいただき、ありがとうございます。
          お母様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
          YSさんが、楽しく毎日を過ごされることを、お母様も望まれていると思います。
          くれぐれも、ご自愛ください。

      • 担当医から最後の面会になるので、明後日来て下さいと言われました。高齢なのによく頑張りましたと言われました。胆管感染して抗生物質してるが、やはり他の細胞も無理みたいです。人生最大の悲しみを乗り越えなければなりません。安らかに見送るする事が、私には最後の親孝行だと言い聞かせています。悲しくてたまらないのです。

        • YSさん、コメントありがとうございます。
          コロナの影響で、どの病院も面会制限がかかっていますので、患者さんのご家族には申し訳ないと思っています。
          お母様が安らかな時間を過ごされますように、ご家族の方もお体に気をつけてください。

          • 先生、今日、母に面会に行きました。びっくりしました。耳の側で、聞こえると聞いたら、聞こえると言ったのです。そして病気に負けないで頑張って言ったら、生きる、治ると言いました。奇跡でした。笑顔で答えました。胆管炎に抗生物質してるが、頭、失語は、理解して答えました。胆管炎の抗生物質で、治りますか?

          • YSさん、よかったですね。抗生剤で失語は回復しませんが、脳出血が少しずつ回復しているのではないでしょうか。回復を祈って経過をみていきましょう。

      • 担当医も、無理だと言われました。面会出来る入院先を受け入れてくれる所探して貰います。ご助言今の私にはすごい気が癒されています。ありがとうありがとうございます。

        • YSさん、コメントありがとうございます。
          介護者にも生活があり、人生がありますので、どちらが良い、悪いということではないと思います。お母様も親として貴方がつらくなるような選択は望まないのではないでしょうか。
          できることしかできないのですから、貴方のできることをしてあげてください。

  • 先生は失語症だと言っています。明後日、母に面会出来ます。肺炎の時、母は鼻酸素嫌がっていたので細い腕に点滴、鼻チューブ、そこまでして果たして何の為にと思うのですが?心配でたまらないのです。

    • 失語症には様々なタイプがありますので、名前は言えても脳の機能障害があるということだと思います。失語症ではないという判断は申し訳ございませんでした。治療の選択や継続については、ご家族の判断というより、患者さん本人ならどういう治療を選択するかという、代理者としての判断になります。患者さん本人がお元気な時にどのような治療を望まれていたか、そういう観点から治療を選択することになりますが、なかなか決断できないことは私も家族として経験しました。

  • 何度もお返事お願い致します。今日から鼻チューブになりました。口からは飲み込む力が無理だそうです。名前言えたのに失語症なのでしょうか?覚悟はしなくてはならないのでしょうか?宜しくお願いします。

    • YSさん、コメントありがとうございます。
      実際に診察したわけではないので推測になりますが、かなり高齢な方の脳出血ですので後遺症は残るでしょう。
      さらに、嚥下障害による誤嚥性肺炎などの感染症を併発する危険性もありますので、病状が落ち着くまでは予断は許さないと思います。
      あとは、患者さんにできるだけ苦痛を与えないような治療を、主治医と相談されてはいかがでしょうか。

  • 97歳の、母親が脳内出血で右手右側失語症で、意識なく搬送されて出血止める点滴しています。どうなりますか?

    • YSさん、ご心配のことと思います。
      脳出血は出血の場所と大きさで、経過が大きく変わります。左大脳の出血と思われますが、意識がないというのは、あまり良いサインではありません。まず、意識が回復するかどうかがポイントになります。高齢でもあり、かなり後遺症が残る可能性もありますが、まずは、意識が回復することを期待して治療を見守りましょう。

      • 昨日、私が行った時、目を時々開けました。首もふりました。力強いお言葉ありがとうございました。

        • YSさん、よかったですね。
          後遺症は避けられませんが、この調子で再出血が起きなければ、病状は安定してくると思いますよ。
          あとは、いろいろな意味で、お母様がもっている寿命だと思います。

          • 今日からチューブになります。病院から連絡ありまして飲み込む力がないからです。麻痺もあります。もうチューブは外せないのですね?名前は言えたのに失語症なのでしょうか?

          • YSさん、コメントありがとうございます。
            チューブというのは、鼻から栄養剤を意に流し込む経鼻経管栄養のことだと思います。たとえば、嚥下リハビリなどで嚥下機能が回復すれば、チューブを抜くことは可能です。ただし、脳の障害の程度とリハビリの結果次第だと思います。失語には、相手の言うことは理解できても言葉がでないものと、相手の言うことが理解できずに言葉がでないタイプがあります。こちらの言うことが理解できて、自分の名前が理解できたのであれば、失語ではないでしょう。

  • YS へ返信する コメントをキャンセル

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です