身体抑制は、患者さんが自分で点滴の管を引き抜いたり、興奮してベッドから転落したりしないように、手袋をつけたり、ひもでベッドに固定するなどすることをいいます。身体拘束ともいわれます。
身体拘束(抑制)は、「衣類または綿入り帯等を使用して一時的に該当患者の身体を拘束し、その運動を抑制する行動の制限」をいうと定義されています。
- 具体的には、以下のようなことが身体拘束(抑制)になります。
- 徘徊しないように車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。
- 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。
- 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。
- 点滴、経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。
- 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車椅子テーブルをつける。
- 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。
- 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。
- 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る
- 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。
- 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。
(厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」2001)
- 身体拘束をせざるを得ない場合、患者さんが「身体拘束の三原則」にすべて当てはまらなくてはなりません。
- 身体拘束の三原則
- 【切迫性】行動制限を行わない場合患者の生命または身体が危険にさらされる可能性が高い (意識障害、説明理解力低下、精神症状に伴う不穏、興奮)
- 【非代替性】行動制限以外に患者の安全を確保する方法がない(薬剤の使用、病室内環境の工夫では対処不能、継続的な見守りが困難など)
- 【一時性】行動制限は一時的であること
身体拘束は、栄養チューブ・点滴ルートの自己抜去防止、転落防止、安静保持、創部の保護、鎮静などを目的に行われます。
身体拘束は、いったん始まったら、ずっと続くということはありません。看護師を中心としたスタッフは、患者さんの状態を定期的に評価し直していますので、拘束の解除が可能となれば、速やかに解除するのが身体拘束の基本です。
病院機能評価でも、身体拘束については対象をきちんと選び、ご家族に説明と同意をとって、必要最短の期間に留めるように努力すること。そのために、患者さんの状態を常に評価し直し、拘束の必要性について看護師を中心に多職種で検討することを強調されています。
医師としては、もはや、効果の期待できない点滴や栄養剤の投与を止めたくても、ご家族のご理解が得られず、拘束をしながら無理やり治療を続けざるを得ないことも経験します。医療機関側の都合だけで、一方的に患者さんの自由を奪っているわけではないことも、ご理解いただきたいという気持ちです。
<参考>
身体拘束予防ガイドライン 日本看護倫理学会 臨床倫理ガイドライン検討委員会 2015.
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