新型コロナウイルス感染症の後遺症

息切れ

新型コロナウイルス感染症から回復したあとに、後遺症に悩む患者が少なくいないことがわかってきました。なかには、日常生活や仕事などに支障がでてくることもあります。

世界保健機関(WHO)では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染後に、少なくとも2ヶ月以上、何らかの症状が残存し、他の疾患では説明できない状態を” long COVID (post COVID-19 condition) “と定義しています。このような後遺症を厚生労働省のガイドラインでは「罹患後症状」と記載しています。

罹患後症状(後遺症)とは

新型コロナウイルス感染後に、少なくとも2ヶ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないもの。通常は、COVID-19の発症から3ヶ月経った時点にもみられる。症状には、倦怠感、息切れ、思考力や記憶への影響などがあり、日常生活に影響することもあります。COVID-19の急性期から回復した後に新たに出現する症状と、急性期から持続する症状があります。また、症状の程度は変動し、症状消失後に再度出現することもあります。

COVID-19感染後に後遺症が残る可能性

海外のデータでは、COVID-19感染者の12.7%が90-150日後に罹患後症状をかかえていたという報告があります。日本では、COVID-19に感染した半年後に26.3%の患者に何らかの症状が認められたという報告があります。イギリスの研究では、男性よりも女性の方がなりやすく、30歳代未満の発症が多い、喫煙者や肥満に多いという傾向があります。

代表的な症状

主な罹患後症状

このなかで最も大きな問題となっているのが、通常の生活が困難になるほどの強い倦怠感です。強い倦怠感は、体を動かした後、5-48時間して起きることが多いので注意が必要です。

主な罹患後症状の経過

主な罹患後症状の経過

日本の報告では、12ヶ月後でも感染者の30%程度に何らかの罹患後症状が認められましたが、いずれの症状も時間の経過とともに症状のある方の割合は低下しています。罹患後症状に関する男女別の検討では、女性に多い傾向です。さらに世代別の検討では、中年者(41-64歳)で罹患後症状を認める割合が高く、若年者で感覚過敏、脱毛、頭痛、集中力低下、味覚障害、嗅覚障害が多く、中年者と高齢者では、咳、痰、関節痛、筋肉痛、眼科症状を多く認めました。

意外に多い神経・精神症状

主な罹患後の精神・神経症状

brain fog は、「脳の中に霧がかかったような」状態で、「頭がボーっとする」などの自覚症状が特徴的で、記憶障害、集中力低下などを伴うととまどいや焦りだけでなく、日常生活や就学・就労、職場復帰などの妨げになることがあります。 疲労感・倦怠感は32%に認めるという報告もあり、頻度の高い症状です。オミクロン株感染でも、初発症状として咳に次いで疲労感・倦怠感が多くなっています。

原因

罹患後症状の原因は不明な点が多く、ウイルス感染そのものによる臓器障害、微量なウイルスの持続感染、免疫調節の異常、血液や血管への損傷、重傷者の集中治療後症候群などが考えられています。.

治療

症状にあわせた治療にとどまらず、専門医療機関との連携や、就労復帰の支援など多方面にわたるアプローチが必要になります。ワクチン接種は、COVID-19の予防だけでなく、後遺症の予防効果も認められるという報告があります。

リハビリテーション

リハビリテーションは、COVID-19感染時の症状、罹患後症状の改善に効果的です。とくに罹患後症状としてみられる息切れや筋力低下に対しては、リハビリテーションの実施が推奨されています。罹患後症状で頻度の高い疲労感・倦怠感も呼吸機能や運動耐容能と関連していることがあり、リハビリテーションが有効な場合があります。しかし、無理をする必要はありませんので、ゆっくりと始めてください。症状が悪化した場合は、中止してください。感染が重症化した方や、心臓、血管などに病気を持っている方は、主治医を相談の上、実施してください。

*呼吸苦、運動時の呼吸回数増加(30回/分以上)やSpO2の低下がみられるような負荷は避ける。倦怠感がみられる場合には、強い負荷となる運動は避け、実施後に症状の増悪がないことを確認。立位で行う下肢筋力練習は、安全に配慮して壁や机など支えになるものがある場所で実施。

<参考>
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A」
厚生労働省「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント第2.0版」2022年10月14日

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