先日、高齢の女性の方が、軽度のめまいで来院された。めまいの症状はひどくなかったのだが、翌日には、左の額のしわが浅く、左目がうまく閉じられない、左の口元が下がり、食事がうまく食べられないといった、左顔面神経麻痺の症状が現れた。その日に、頭部CT検査を行ったが、異常はなし。
それから、二日ほどして、左の耳たぶが赤く腫れ、耳の穴に水疱ができてただれてきた。
ここまでくると、帯状疱疹ウイルスによる「ラムゼイ・ハント症候群」だとわかる。
通常は、皮膚の症状が先に現れて、顔面神経麻痺が起きることが多いのだが、15%ほどは、顔面神経麻痺の後に皮疹がでるケースがあるらしい。
帯状疱疹ウイルスは、水痘(すいとう、みずぼうそうのこと)の原因ウイルスで、水痘にかかったときに、体の中に入りこみます。水痘は治っても、ウイルスは神経節(神経の束が集まって太くなっている場所)に住み着きます。
ふだんは何も悪さはしませんが、ストレスや老化などで免疫力が低下すると、ウイルスが活動を始めることがあります。これが、帯状疱疹(たいじょうほうしん)です。
帯状疱疹は、神経に沿って広がるのが特徴で、皮膚には赤みを伴った小さな水疱(水ぶくれ)ができ、神経を刺激して激しく痛みます。
帯状疱疹が、耳の奥にでき、顔面神経麻痺や、めまい、難聴などの内耳神経の症状が現れるのが、「ラムゼイ・ハント症候群」です。
「ラムゼイ・ハント症候群」は、突発的に起きる顔面神経麻痺(ベル麻痺)と比べて、治りが悪く、半数に麻痺が残るといわれています。
治療は、抗ウイルス薬とステロイドの投与が基本です。まれに、重症化することがあり、帯状疱疹のなかでは注意が必要な病気です。
今回のケースのように、皮疹がでるまでは、ベル麻痺と区別がつかない場合もありますが、顔面、耳周囲に帯状疱疹ができたときは、できるだけ早く、耳鼻科、内科の先生の診察を受けてください。
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