ダニが媒介する感染症|重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

マダニ

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は2013年1月に、日本国内での感染が報告された、新しいウイルス感染症です。原因ウイルスはSFTSウイルスで、このウイルスを持った「マダニ」に咬まれることで感染します。このため、マダニの活動する春から秋にかけて発生します。

  • マダニは、家庭内にいるダニとは種類が違い、固い外皮に覆われた大型のダニです。主に、森林や草地等の屋外に生息していますが、市街地周辺でもみかけます。民家の近くに生息していますので、感染の危険性も高くなります。
  • すべてのマダニがウイルスをもっているわけではありません。ウイルスの保有率は、0-数%です。
  • マダニが媒介する感染症には、SFTSのほかにも、日本紅斑熱、ライム病、ツツガムシ病、ダニ媒介性脳炎などがあります。日本紅斑熱、ライム病、ツツガムシ病は抗菌薬で治療しますが、SFTSとダニ媒介性脳炎には有効な薬がありません。
  • SFTSに感染しているネコやイヌから感染した事例が報告されています。
  • 2024年3月、日本で初めてのヒトからヒト(患者から医師)への感染が報告され、治療にあたっては感染予防策の徹底が必要です。
ウイルスを感染させるマダニ(国立感染症研究所HPより転載)

この感染症が恐ろしいのは、致死率が6−30%と非常に高いことです。5−8月の発症例が多く、西日本を中心に、毎年60-100名の患者が報告されています。

  • 潜伏期は6日から2週間
  • 症状は、主に、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)。そのほか、頭痛、筋肉痛、意識障害や失語、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こします。
  • 診断は、ウイルスの遺伝子検査、抗原・抗体検査で行います。
  • 検査では、白血球減少、血小板減少、肝機能値の異常(AST, ALT, LDH)を認めます。
  • 治療は、症状に対する治療のみで、有効な薬やワクチンはありません。マダニに咬まれないように、予防することが第一です。

マダニ対策

  1. マダニの生息場所
    • マダニは、シカやイノシシ、野ウサギなどの野生動物が出没する環境に多く生息しています。
    • マダニは、民家の裏山や裏庭、畑、あぜ道などにも生息しています。
  2. マダニから身を守る服装
    • 野外では、腕・足・首など、肌の露出を少なくしましょう。
    • 半ズボンやサンダル履きは不適当です。
    • シャツの袖口は軍手や手袋の中に入れましょう。
    • シャツの裾はズボンの中に入れましょう。
    • 農作業や草刈りなどでは、ズボンの裾は長靴の中に入れましょう。
    • ハイキングなどで山林に入る場合は、ズボンの裾に靴下をかぶせましょう。
  3. マダニから身を守る方法
    • 上着や作業着は、家の中に持ち込まないようにしましょう。
    • 屋外活動後は、シャワーや入浴で、ダニが付いていないか、チェックしましょう。
    • ガムテープを使って服に付いたダニを取り除く方法も効果的です。
  4. 忌避剤の効果
    • 日本では、マダニ専用の忌避剤はまだ市販されていません。
    • 日本では、ツツガムシ用の忌避剤が市販されていますので、この忌避剤である程度の効果は得られます。しかし、マダニを完全に防ぐわけでありませんので、忌避剤を過信せず、他の防護手段と組み合わせて使用してください。

ダニの多くは、長期間(ときには10日間以上)吸血します。吸血中のマダニを無理に取り除こうとすると、マダニの口器が皮膚の中に残り、化膿することがあるので、皮膚科等の医療機関で、適切な処置(マダニの除去や消毒など)を受けてください。

マダニに咬まれたら、数週間程度は体調の変化に注意し、発熱等の症状が認められた場合は、医療機関で診察を受けてください。

<参考>
国立感染症研究所「マダニ対策、今できること」
国立感染症研究所「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」
厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について」
厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」
厚生労働省「ダニ媒介感染症」
厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診療の手引き 改訂新版. 2019」
国立感染症研究所「本邦で初めて確認された重症熱性血小板減少症候群のヒト−ヒト感染症例」2024年3月19日

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