結核は古くて新しい感染症

結核は、日本では、明治時代から昭和20年代まで死亡原因の第1位で、国民病とも呼ばれていました。

戦後、治療薬の進歩やBCGワクチンの普及、生活水準の向上などによって、結核による死亡者・死亡率は激減し、流行は終わったという認識がありました。

しかし、1997年にいったん増加に転じ、国は「結核緊急事態宣言」をだして注意を呼びかけました。その後、減少傾向に戻っていますが、それでも他の先進国に比べて3−4倍高く、日本は結核中進国です。

交通手段の発達より感染者の移動が容易になり、感染症が広がりやすい時代になりました。また、HIV感染者は結核に罹患しやすく重症化しやすいことから、古くて新しい「再興感染症」として注目されています。

結核は昔の病気ではありません

WHOの統計では、世界で年間1000万人が発病し、160万人が亡くなっています。

日本では、年間におおよそ17000人が結核を発症し、2000人が結核で死亡しています。結核と診断された人のうち、65歳以上の高齢者が7割を占め、患者の高齢化がすすんでいます。とくに全結核患者の3人に1人が80歳以上です。

結核菌は、眠った状態で何十年も生きています。高齢になり、免疫力が低下してくると、ふたたび蘇り、活動性をもった結核になることがあります。結核は一度かかっても、再感染することがあります。

「昔、結核をしたから、もうかからない」という病気ではありません。

日本では、結核患者の減少とともに結核への関心が薄れています。これは、医療関係者にもいえることです。そのため、結核を発症しても受診が遅れたり、見過ごしになっているケースが少なくありません。

結核の病原体は、結核菌です。塩酸にも負けない強い菌で、抗酸菌という仲間です。

結核は、空気感染します

咳やくしゃみのなかの結核菌が空気中を漂い、これを吸入することで感染します。いったん、床や机などに落ちたり、マスクに捕捉された結核菌は感染源になりません。

結核菌を吸い込んだからといって、必ず感染するわけではありません。大半の結核菌は、自然に体外に排出されたり、免疫力によって破壊されます。

こうした監視をくぐり抜けて、肺の奥深くの肺胞に達すると増殖を始めます。この状態が結核菌に感染した状態です。

ただし、感染したからといって、病気がおきるわけではありません。ほとんどの場合、免疫力によって結核菌が増殖を抑え込まれて休眠状態になったり、結核菌が死滅したりします。

しかし、免疫力が結核菌を抑えきれない場合、結核菌は感染後6か月から2年ほどの時間をかけてゆっくりと増殖し、病気をおこします。こうなると、結核の発病です。

乳幼児の場合は、免疫力がまだ十分ではないので、もっと短い期間で発病する場合があります。

また、高齢になったり、病気になって免疫力が落ちると、休眠していた結核菌が再び増殖を始めることがあります。

結核の8割は、肺結核

結核は、肺以外にもあらゆる臓器に感染がおこりますが、最も頻度が高いのは肺です。

  • 結核は、肺以外の臓器にも起きることがあります。
  • 脳:結核性髄膜炎
  • 腎:腎結核
  • 皮膚:皮膚結核
  • 骨関節:骨関節結核(脊椎カリエスなど)
  • 全身:粟粒結核

肺結核の初期は、風邪のような症状です

  • 痰のからむ咳が2週間以上続く
  • 微熱、体のだるさが2週間以上続く
  • このような症状があるときは、早めに医療機関を受診しましょう。

結核菌の感染を診断するには

ツベルクリン反応検査やインターフェロンガンマ遊離試験があります。

ただし、ツベルクリン反応検査は、過去にBCG接種を受けた人は陽性にでてしまうので、最近ではインターフェロンガンマ遊離試験(血液検査)を行うことが一般的です。

インターフェロンガンマ遊離試験は、過去に結核感染を起こして、治癒している人も陽性にでますので、判定には注意が必要です。

喀痰検査は、結核菌を排出しているかどうかを診断します

結核菌の抗酸性を利用した塗沫検査は短時間でわかる検査ですが、結核菌以外でも陽性になることがあり、確定診断には、培養検査や核酸増幅法などが必要です。

結核の発病を検査するには、胸部のレントゲン検査や、CT検査が必要です。

細菌が感染していることと、病気の活動性は分けて考える必要があります。検査の結果、咳や痰に結核菌がみつかり、感染が広がる危険がある場合は、専門の医療機関に入院して治療を受ける必要があります。

体外に結核菌を排出していない場合は、通院で治療することができます。

結核は薬で治療します

イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、ストレプトマイシンまたはエタンブトールの4剤で2ヶ月、その後、イソニアジド、リファンピシンを4ヶ月内服する方法が一般的です。

結核の治療には、内服薬を忘れずに確実に飲むことが必要です。中途半端な治療で耐性菌がでると、治療はきわめて困難になり、長期化します。

治療薬を確実に内服するために、医療従事者が直接患者さんに薬を手渡し、目の前で服用させるDOTS (Directly Observed Treatment, Short-Course : 直接服薬確認治療)という方法が、日本でも取り入れられています。

結核の患者さんと接触したからといって、必ず、結核になるわけではありません

規則正しい生活と栄養バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動を行い、免疫力を高めていくことが大事です。ふだんから、ストレスをため込まずに、夜更かしなどの不規則な生活や喫煙を控える生活を心がけましょう。

<参考>
国立感染症研究所HP(2020.2.5閲覧)http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/ka/tuberculosis.html
公益財団法人結核予防会(2020.2.5閲覧)http://www.jatahq.org/index.html

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