細胞に含まれる核酸(DNAやRNA)の元になっている成分が、プリン体です。このプリン体が分解されると尿酸となり、尿として体の外へ捨てられます。通常は、作られる尿酸と捨てられる尿酸のバランスがとれていますので、血液中の尿酸は一定の値に保たれています。このバランスがくずれて、血液中の尿酸値が高くなった状態を「高尿酸血症」といいます。
尿酸はもともと血液に溶けにくい物質で、血液中の濃度が上がると結晶を作って固まってしまいます。尿酸が関節にたまってくると、関節炎を起こして関節が赤く腫れ、激しく痛みます。これを「痛風」といいます。痛風による激しい関節炎は、ある日突然、発作的におこるので「痛風発作」とよばれます。放っておくと慢性的に関節炎を繰り返し、関節が変形することがあります。
尿酸は腎臓に慢性的な炎症をおこして、腎臓の機能が低下させることがあります。また、腎臓や尿管で尿酸が固まって石ができることがあります。石が尿の通り道をふさぐと、激しい痛みをおこしたり、腎機能を低下させることがあります。
食生活の欧米化に伴って高尿酸血症の患者数は年々増加しており、日本人男性全体の20-25%が高尿酸血症といわれています。また、高尿酸血症の患者さんの約80%は、肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの何らかの生活習慣病を合併しています。痛風は30歳以上の男性の1%超が患い、痛風の患者数は100万人を越えていると推定されます。
原因
- 食生活:肉類摂取量が多い、砂糖入りソフトドリンク摂取量が多い
- 飲酒
- 運動不足
診断
□ 尿酸値>7mg/dl
(7mg/dlが正常上限です)
- 尿酸が高いと、メタボリックシンドロームになりやすい
- 内臓脂肪が多いと、尿酸値が上昇する
- 尿酸値が高いと、高血圧になりやすい
6-7-8ルール
- 尿酸値を管理する簡単な覚え方が、6−7−8ルールです。尿酸値によって、
- 6台:正常
- 7台:生活習慣の指導
- 8以上:薬物療法
ただし、痛風発作をおこしたことのある人は、たまった尿酸を除くために6以下に保つことが望ましいです。また、注意点として、痛風は、これまで関節内に蓄積している尿酸が起こしたもので、必ずしも発作が起きた時に尿酸値は高くありません。治療中に急に尿酸値が下がって、かえって発作が悪化することがあるので注意が必要です。
治療
□ 治療の基本は、生活習慣の改善です。
1.食事量を制限して、肥満を解消しましょう。
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
1日の食事量=標準体重×30
たとえば、身長160cmの場合、標準体重=1.6×1.6×22→56kg
食事量=56×30→約1600kCal がめやすになります。
肥満がある場合は、標準体重にかける数を25にして総カロリーをさらに制限します。
2.プリン体の多い食品を控えましょう。
食品のなかのプリン体の量(100gあたりのプリン体の量)
きわめて多い(300mg以上) | 鶏レバー、マイワシ干物、白子、あんこう肝、カツオブシ、ニボシ、健康食品(DNA/RNA, ビール酵母, クロレラ, スピルリナ, ローヤルゼリー) |
---|---|
多い(200-300mg) | 豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、マアジ干物、サンマ干物 |
少ない(50-100mg) | ウナギ、豚ロース、豚バラ、牛肩ロース、牛肩バラ、牛タン、マトン、ボンレスハム、プレスハム、ベーコン、ほうれんそう、カリフラワー |
きわめて少ない(50mg以下) | コンビーフ、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、豆腐、牛乳、チーズ、バター、卵、とうもろこし、じゃがいも、さつまいも、米飯、パン、うどん、そば、果物、キャベツ、トマト、にんじん、大根、白菜、ひじき、わかめ、こんぶ |
3.アルコールを制限しましょう。
アルコールはプリン体の量が少なくても、それ自体が尿酸値を上げるはたらきがありますから、飲み過ぎに注意しましょう。
1日の飲酒量のめやす
ビール | 中ビン1本(500ml) |
日本酒 | 1合 |
ワイン | グラス1杯 |
ウイスキー | ダブル1杯 |
4.尿をアルカリ化する食品を食べましょう。
尿をアルカリ化する食品と酸性化する食品
アルカリ化する食品 | 程度 | 酸性化する食品 |
ヒジキ・わかめ | 高い | 卵・豚肉・サバ |
こんぶ・大豆 | ↑ | 牛肉・アオヤギ |
ほうれんそう | カツオ・ホタテ | |
ごぼう・さつまいも | 白米・ブリ | |
にんじん | マグロ・サンマ | |
バナナ・さといも | アジ・カマス | |
キャベツ・メロン | イワシ・カレイ | |
大根・かぶ・なす | ↓ | アバゴ・芝エビ |
じゃがいも・グレープフルーツ | 低い | 大正エビ |
5.水分を十分にとって、1日に2L以上の尿をだしましょう。
6.有酸素運動をしましょう。
ウォーキング、軽いジョギング、サイクリング、水泳などが効果的です。
□ 薬物療法
生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合は、薬による治療が必要です。
痛風発作中には、必ずしも尿酸値は高くないことがあります。痛風発作のときに尿酸値を下げると、発作が増悪することが多いので、まず抗炎症薬で発作をおさえます。
もともと尿酸を下げる薬を飲んでいるときは、止める必要はありません。その後、尿酸値を下げることで、発作の再発を予防することができます。
尿酸を下げる薬には、作用の違いから、尿酸を体の外にだす尿酸排泄促進薬と、尿酸が作られるのを抑える尿酸生成抑制薬があります。尿路結石の予防には、尿をアルカリ化する薬を併用することがあります。痛風発作があった場合は、尿酸値を6mg/dl以下にするように治療します。
また、痛風発作がなくても、尿路結石や腎疾患、高血圧などの合併があるときは、尿酸値を下げる薬が必要なことがあります。
尿酸降下薬の種類
種類 | 一般名 |
尿酸排泄促進薬 | ベンズブロマロン、ロサルタン、プロベネシド |
尿酸生成抑制薬 | アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタット |
高尿酸血症の治療指針2019

<参考>
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2019年改訂)日本痛風・核酸代謝学会 ガイドライン改訂委員会編.
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