よくわかる介護報酬2021−介護保険とは

介護保険は、従来の医療保険に加えて、日本の医療を支えるもう一つの保険制度として、2000 年4 月に始まりました。3年に1度をめどに、制度の見直しや保険料、サービス料金の見直しが行われています。2021年4月から、介護報酬が新しく変わっています。

2021年の改定のポイント

  • 介護福祉士の配置割合が高く、職員の勤続年数が高い事業所を評価
  • 厚生労働省の科学的介護情報システム (LIFE) へ入所者・利用者のデータ提出 (日常性生活の状態、栄養状態、口腔機能、認知症の状況など) を行うことを評価
  • 感染症対策、災害対策を評価

日本は、世界一のスピードで高齢化がすすみ、70 歳以上の高齢者が 2000 万人を超えています。高齢者が増えれば、当然、介護の必要な人が増えていきます。高齢者の介護は、今まで、家族の負担で支えられてきました。しかし、少子高齢化社会を迎えた日本が、介護の必要な高齢者を社会全体で支えるための仕組みが介護保険です。医知場では、介護サービスの料金である介護報酬に焦点を当てて、介護保険の解説をしたいと思います。

1.介護保険のしくみ

介護保険は、 40歳以上のすべての国民が保険料を払い、市町村が運営しています。65歳以上の方が介護保険のサービスの対象になります。

ただし、40歳以上65歳未満の方でも、認知症や脳梗塞などの特定の病気が原因のときは、サービスを受けることが可能です。

介護保険によるサービスを受けるためには、まず、市町村に申請を行い、どの程度のサービスが必要かの認定を受けます。市町村は、介護の必要度(要介護度)を調査し、主治医からの意見を参考にして、利用者を7つの段階に振り分けます。介護の必要度は、軽い順に、要支援1、2、要介護1から5の7段階です。表は、おおよその目安です。

要支援 1日常生活の基本動作はほぼ自分で行えるが、家事や買い物などに支援が必要
要支援 2要支援 1 よりも能力が低下し、何らかの支援が必要
要介護 1起立や歩行などが不安定。入浴や排泄などの介助が必要
要介護 2自力での起立や歩行が困難で。入浴や排泄などの介助が必要
要介護 3起立や歩行は不可能。入浴や排泄、衣服の着脱に全面的な介助が必要
要介護 4介護なしに日常生活を送ることが困難
要介護 5日常生活のほぼすべてに全面的な介助が必要

この段階に応じて、サービスの上限額が決まります。要介護度が重いほど、多くのサービスが用意されています。

利用者に必要なサービスを判断し、サービスの内容を具体的に割り振りする専門者を、ケアマネージャー(介護支援専門員)といいます。

介護保険のサービスを利用したときの料金は、利用者が1割、保険を運営している市町村が残りの9割を負担します。つまり、介護サービスの事業所や施設は、料金の1割を本人からもらい、残りの9割は市町村に請求します。ただし、一定所得を超える方は、負担の割合が2割、または3割となります。

・介護保険の本人負担= 1 割(所得が多い方は2割または3割)

施設を利用する場合には居住費や食費、日常の生活費などは、介護保険の対象外となり、自費で負担することになります。また、介護保険の限度額を超えるサービスは、自費で払う必要があります。

2.介護報酬の基本

介護保険によって行われるサービスの料金を介護報酬といい、国によって決められています。介護報酬は3年ごとに見直されます。

介護報酬は、単位で表されます。1単位は、基本的には10円ですが、都市部では物価や人件費などを考慮して少し高くなるように設定されています。

具体的には、地域での物価や人件費を考慮して、全国をいくつかの地域に分け、都市部の報酬が少し高くなるように設定されています。

・介護報酬1単位=10円(ただし、都市部では割り増しがあります)

介護保険のサービスには、要支援向けの予防給付要介護向けの介護給付という2種類のサービスがあります。

予防給付と介護給付では、介護サービスの上限額にかなりの差があります。これは、比較的軽症である要支援の人は、介護の重症度が上がらないように予防していくサービスが主体となり、要介護向けのサービスと区別されているからです。

・要支援1, 2向けのサービス=予防給付
・要介護1-5向けのサービス=介護給付

3.介護サービスと料金

介護保険のサービスを受ける人を利用者といい、介護サービスを運営する事業所からサービスの提供を受けます。介護の必要度(要介護度)によって、1ヶ月間に介護保険で使える介護サービスの上限額が決まっています。この額を超える部分は、全額自己負担になります。ただし、福祉施設の入居費や、医療機関のサービスなど、この限度額に含まれないものがあります。

・要介護度による上限額

要介護度限度基準額(単位)
要支援 15032
要支援 210531
要介護 116765
要介護 219705
要介護 327048
要介護 430938
要介護 536217

介護保険の利用者は、病気の状態、家族の援助、経済状態など、同じ要介護度でも個別の問題を抱えていますので、一律の介護サービスを押しつけることはできません。

ケアマネージャーは、利用者の状態に応じて適切なサービスの組み合わせ(ケアプラン)を作成し、介護サービスが円滑に利用できるように調整を行います。この仕事を居宅介護支援といいます。

介護サービスの要支援向けの予防給付と、要介護向けの介護給付では、受けられるサービスに違いがあります。とくに、予防給付では、施設での介護に制限があります。

介護サービスは、自宅にいながら利用する居宅サービス、市町村が業者を指定しその住民だけが利用できる地域密着型サービス、施設に入居して受ける施設サービスに大きく分類されます。

ただし、要支援1・2の人は、居宅サービスと地域密着型サービスが利用できますが、施設サービスは利用できません。

分類サービスの内容予防給付介護給付
居宅サービス
訪問介護×
訪問入浴介護
訪問看護
訪問リハビリテーション
居宅療養管理指導
通所介護(デイサービス)×
通所リハビリテーション(デイケア)
短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所療養介護
特定施設入居者生活介護
福祉用具貸与
特定福祉用具販売
地域密着型サービス
夜間対応型訪問介護×
認知症対応型通所介護
小規模多機能型居宅介護
認知症対応型共同生活介護
地域密着型特定施設入居者生活介護×
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護×
介護保険施設
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)×
介護老人保健施設×
介護療養型医療施設・介護医療院×

2018年4月から、要支援者の訪問介護、通所介護が介護保険のサービスから切り離され、市町村ごとに独自のサービスを提供する地域支援事業に移行しました。

要支援向けの予防給付と、要介護向けの介護給付では、サービスの内容や料金が違います。詳しい料金については、要支援、要介護に分けて、解説します。

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