骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは骨がもろくなって、骨折を起こしやすくなる病気です。
粗鬆(そしょう)とは隙間がたくさん空いているという意味で、スカスカになった骨をあらわしています。何の前兆もなく、突然骨折をおこしてわかることも多い病気で、高齢者の寝たきりの原因ともなっています。
健康な骨
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骨粗しょう症の骨
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日本の骨粗鬆症の患者は推定で1280万人、そのうち980万人が女性です。骨粗鬆症は、50歳前後の閉経で女性ホルモンが急減に低下するために、閉経から10年ほどで急激に進行します。骨粗しょう症は、学問的には、「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されます。
骨の強さは、骨の密度と質で決まります(骨強度=骨密度+骨質)。骨密度で骨強度の70%が説明できますが、それ以外の骨の質も骨粗しょう症に関係しています。
FRAX 骨折リスクの個別評価ツール
FRAXは、骨折リスクを評価するツールで、将来、骨折する確率を自己診断できます。年齢、性別、身長、体重、骨折歴、喫煙歴、ステロイド内服の有無、飲酒歴などをweb上で入力すると、骨粗鬆症の骨折リスクを計算してくれます。このツールのすごいところは、骨密度の情報がなくても、骨折リスクの計算をしてくれるところです、
- FRAXのホームページ: https://www.sheffield.ac.uk/FRAX/tool.aspx?country=3
症状
背中や腰の骨(脊椎)がつぶれる圧迫骨折によって、次のような症状があらわれます。
- 立ち上がったり、重いものをもつと、背中や腰が痛む
- 背中や腰が曲がってくる
- 背が縮んでくる
- さらにひどくなると、転んだだけで、大腿骨頸部(あしの付け根)、前腕(手首)、上腕骨頸部(肩の部分)を骨折することがあります。とくに転倒事故で多いのが大腿骨頸部の骨折です。
高齢者では、足が動かせなくなって寝たきりになり、認知症が進むことがあります。
原因
骨は、古い骨が壊され新しい骨が作られ、たえず生まれ変わっています。このバランスがくずれると骨はもろくなってしまいます。
- 年齢:誰でも年齢とともに骨は少しずつもろくなります。
- 閉経した女性:女性ホルモンは骨のカルシウムの減少を抑える働きをしています。閉経後は、女性ホルモンの欠乏により骨粗しょう症が急激に進行します。
- 体質:親が骨粗しょう症の人
- 生活習慣:カルシウムの不足、運動不足、過度のダイエット、喫煙、飲酒
- その他:卵巣摘出、糖尿病、慢性肝障害、胃切除など。ステロイド(副腎皮質ホルモン)の内服。
検査
- 骨密度測定
- ヒトの一生で最も骨密度が高い、20歳から44歳までの健康女性の骨密度の平均値を基準値として、その70%未満を骨粗しょう症、70-80%を骨量減少と定義しています。
- DXA法:X線を腰の骨(腰椎)や脚の骨(大腿骨)にあてて骨密度を測定する方法で、最も信頼度の高い測定法。
- 超音波法:超音波を使って、かかとの骨(踵骨)の骨密度を測定する。
- ヒトの一生で最も骨密度が高い、20歳から44歳までの健康女性の骨密度の平均値を基準値として、その70%未満を骨粗しょう症、70-80%を骨量減少と定義しています。
- 骨のレントゲン
- 腰椎や大腿骨のレントゲンで、骨折や骨の変形、骨のスカスカ具合(骨萎縮度)を判定する。
- 血液・尿検査
- 骨形成マーカー:骨を作っている状態を表すマーカー
- BAP, P1NPなど
- 骨吸収マーカー:骨を壊している状態を表すマーカー
- NTX, CTX, DPD, TRACP-5bなど
- 骨形成マーカー:骨を作っている状態を表すマーカー
治療
1.食事療法
日本人の平均カルシウム摂取量は550mg程度です。カルシウムは1日800mg以上、必要です。
<参考> カルシウム自己チェック表
20点以上:よい、16-19点:少し足りない、11-15点:足りない、8-10点:かなり足りない、0-7点:まったく足りない
0点 | 0.5点 | 1点 | 2点 | 4点 | |
1. 牛乳を毎日どのくらい飲みますか? | ほとんどなし | 月1-2回 | 週1-2回 | 週3-4回 | ほとんど毎日 |
2. ヨーグルトをよく食べますか? | ほとんどなし | 週1-2回 | 週3-4回 | ほとんど毎日 | ほとんど毎日2個 |
3. チーズなどの乳製品やスキムミルクをよく食べますか? | ほとんどなし | 週1-2回 | 週3-4回 | ほとんど毎日 | 2種類以上毎日 |
4. 大豆、納豆など豆類をよく食べますか? | ほとんどなし | 週1-2回 | 週3-4回 | ほとんど毎日 | 2種類以上毎日 |
5. 豆腐、がんも、厚揚げなど大豆製品をよく食べますか? | ほとんどなし | 週1-2回 | 週3-4回 | ほとんど毎日 | 2種類以上毎日 |
6. ほうれん草、小松菜、チンゲン菜などの青菜をよく食べますか? | ほとんどなし | 週1-2回 | 週3-4回 | ほとんど毎日 | 2種類以上毎日 |
7. 海藻類をよく食べますか? | ほとんどなし | 週1-2回 | 週3-4回 | ほとんど毎日 | - |
8. シシャモ、丸干しいわしなど骨ごと食べられる魚を食べますか? | ほとんどなし | 月1-2回 | 週1-2回 | 週3-4回 | ほとんど毎日 |
9. しらす干し、干しえびなど小魚類を食べますか? | ほとんどなし | 週1-2回 | 週3-4回 | ほとんど毎日 | 2種類以上毎日 |
10. 朝食、昼食、夕食と1日3食を食べますか? | - | - | 1日1-2食 | 欠食が多い | 1日3食(3点) |
カルシウムの多い食品(日本食品標準成分表2010より抜粋)
食品 | 1回使用量(g) | カルシウム量(mg) |
牛乳 | 200 | 220 |
スキムミルク | 20 | 220 |
プロセスチーズ | 20 | 126 |
ヨーグルト | 100 | 120 |
干しエビ | 5 | 355 |
ワカサギ | 60 | 270 |
シシャモ | 50 | 175 |
豆腐 | 75 | 90 |
納豆 | 50 | 45 |
小松菜 | 80 | 136 |
チンゲン菜 | 80 | 80 |
2.運動療法
まず、歩くことが大事です。1回30分の歩行を、朝夕2回、1日8000歩を目標にしましょう。胸を張り、背筋を伸ばし、膝と脚をしっかり伸ばし、歩幅はいつもより少し広めに。
そのほか、水泳、ゲートボール、サイクリングなど、無理をせず楽しむことできる運動を続けましょう。
3.骨粗鬆症の薬
- 骨密度
- 骨代謝マーカー
- 骨折の有無
- 栄養状態
- 腰痛
- 転倒の危険性などを考慮して、薬を選択します。
骨粗鬆症の治療に使われる薬
- カルシウム薬
- 女性ホルモン薬
- ビタミンD薬
- ビタミンK2
- ビスホスホネート薬
- 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
- カルシトニン薬
- テリパラチド(副甲状腺ホルモン)
- デノスマブ(RANKL抗体)
- その他(イプリフラボン、蛋白同化ホルモン薬)
ビスホスホネート薬についての注意
ビスホスホネート薬は、強い骨折抑制効果があり、最もよく使われている薬ですが、薬を内服するときには、注意が必要です。
*コップ1杯分のたくさんの水で服用し、飲んでから30分は横にならないこと。また、抜歯などの歯科治療後に顎骨壊死の副作用が報告されていますので、ビスホスホネート薬の内服治療中の方は、歯の治療を行うときは、主治医にご相談ください。
ステロイド性骨粗鬆症
ステロイドを長期間投与すると、投与開始3−6ヶ月より骨密度低下と骨折リスクが上昇します。
ステロイドの長期治療を必要とする疾患
- 関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症
- 膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎など)
- 炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎など)
- 呼吸器疾患(気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患)
- 腎疾患(ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎など)
- 血液疾患(白血病、多発性骨髄腫など)
- 神経・脊髄疾患(重症筋無力症、多発性硬化症など)
- 皮膚疾患
- 臓器移植
生活習慣病は骨粗鬆症による骨折のリスク因子となり、とくに、糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、CKD(慢性腎臓病)との関連が深い。
- 糖尿病:罹病期間が長い、血糖コントロールが悪い、合併症が多いほど、骨折を起こしやすくなる
- COPD(慢性閉塞性肺疾患):やせ、喫煙、呼吸機能低下、ビタミンD不足、吸入ステロイド薬などが原因となり骨折を起こしやすくなる
- CKD(慢性腎臓病):腎機能が低下すると、骨質が劣化し、骨折を起こしやすくなる
<参考>
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版. ライフサイエンス出版. 2015.
日本骨代謝学会:ステロイド骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014改訂版. 2014.
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