アナフィラキシー

アナフィラキシー

アナフィラキシーは「食物や医薬品などにより、皮膚・呼吸器・消化器などの複数の臓器に、急激に出現する過敏反応」です。アナフィラキシーは、皮膚・粘膜、肺・気管支、心臓・血管、脳・神経などの臓器に、アレルギー反応が短時間であらわれます。花粉症とじんま疹と喘息が、いっぺんにやってくるような状態と考えると、想像がつきやすいと思います。

アナフィラキシーのなかでも、血圧の低下や意識障害を伴うような重症の場合を「アナフィラキシーショック」といいます。

アナフィラキシーをおこす医薬品には、造影剤、血液製剤、抗菌薬、抗癌剤、解熱・鎮痛薬、市販薬などがあります。薬を使用した後に、「皮膚の赤み、じんま疹、のどのかゆみ、吐き気、咳、ぜーぜー、息苦しさ、動悸、ふらつき」などのアナフィラキシーを疑う症状がでたときは、近くの医療スタッフに声をかけるか、すみやかに医療機関を受診してください。

小児では、症状を正確に自分で訴えることができないために注意が必要です。何となく不機嫌、元気がない、寝てしまうなどということがアナフィラキシーの初期症状であることもありますので、大人よりも注意深い観察が必要です。

医薬品によるアナフィラキシーは、投与開始から30分以内に出現します。

アナフィラキシーの診断基準(アナフィラキシーガイドライン2022、日本アレルギー学会)

  • 以下の2つの基準のいずれかをみたす場合、アナフィラキシーである可能性が非常に高い
  1. 皮膚、粘膜またはその両方の症状(全身性の蕁麻疹、瘙痒または紅潮、口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)が急速に(数分~数時間で)発症し、さらに少なくとも次の1つを伴うもの
    • 呼吸不全:呼吸困難、喘鳴、低酸素血症など
    • 血圧低下または臓器不全に伴う症状(筋緊張低下、失神、失禁など)
    • 重度の消化器症状:重度の痙攣性腹痛、反復性嘔吐(とくに食物以外のアレルゲンへの暴露後)
  2. 典型的な皮膚症状を伴わなくても、当該患者にとって既知のアレルゲンまたはアレルゲンの可能性がきわめて高いものに曝露された後、血圧低下または気管支攣縮または喉頭症状が急速に(数分~数時間で)発症した場合
  • 血圧低下
    • 本人のベースライン値から30%を超える収縮期血圧の低下、または、
    • 乳児および10歳以下の小児:収縮期血圧が(70+[2x年齢])mmHg未満
    • 成人:収縮期血圧が90mmHg未満
  • 喉頭症状:吸気性喘鳴、変声、嚥下痛など

アナフィラキシーに似ている疾患

鑑別困難な疾患・症状 共通する症状 鑑別ポイント
喘息 喘鳴、咳嗽、息切れ 喘息発作ではそう痒感、じんま疹、血管浮腫、腹痛、血圧低下は生じない
不安発作/パニック発作 切迫した破滅感、息切れ、皮膚紅潮、頻脈、消化器症状 不安発作/パニック発作ではじんま疹、血管浮腫、喘鳴、血圧低下は生じない
失神 血圧低下 純粋な失神による症状は臥位をとると軽減され、通常は蒼白と発汗を伴い、じんま疹、皮膚紅潮、呼吸器症状、消化器症状がない

アナフィラキシーの重症度評価

    グレード1
(軽症)
グレード2
(中等症)
グレード3
(重症)
皮膚・粘膜症状 紅班・蕁麻疹・膨疹 部分的 全身性  
掻痒 軽い掻痒(自制内) 強い掻痒(自制外)  
口唇、眼瞼腫脹 部分的 顔全体の腫れ  
消化器症状 口腔内、咽頭違和感 口、のどのかゆみ、違和感 咽頭痛  
腹痛 弱い腹痛 強い腹痛(自制内) 持続する強い腹痛(自制外)
嘔吐・下痢 嘔気、単回の嘔吐・下痢 複数回の嘔吐・下痢 繰り返す嘔吐・便失禁
呼吸器症状 咳嗽、鼻汁、鼻閉、くしゃみ 間欠的な咳嗽、鼻汁、鼻閉、くしゃみ 断続的な咳嗽 持続する強い咳込み、犬吠様咳嗽
喘鳴、呼吸困難   聴診上の喘鳴、軽い息苦しさ 明らかな喘鳴、呼吸困難、チアノーゼ、呼吸停止、SpO2≦92%、締めつけられる感覚、嗄声、嚥下困難
循環器症状 脈拍、血圧   頻脈(+15回/分)、血圧軽度低下、蒼白 不整脈、血圧低下、重度徐脈、心停止
神経症状 意識状態 元気がない 眠気、軽度頭痛、恐怖感 ぐったり、不穏、失禁、意識消失
  • 血圧低下:1歳未満<70mmHg、1-10歳<[70mmHg+(2×年齢)]、11歳-成人<90mmHg
  • 血圧軽度低下:1歳未満<80mmHg、1-10歳<[80mmHg+(2×年齢)]、11歳-成人<100mmHg

アナフィラキシーの治療

日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン 2014」より引用

アドレナリン注射の適応:下記の症状が一つでもあれば使用

臓器      
消化器 繰り返し吐き続ける 持続する強い(がまんできない)腹痛
呼吸器 のどや胸がしめつけられる 声がかすれる 犬が吠えるような咳
持続する強い咳込み ゼーゼーする呼吸 息がしにくい
全身 唇や爪が青白い 脈を触れにくい・不規則
意識がもうろうとしている ぐったりしている 尿や便をもらす

<参考>
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル アナフィラキシー 平成20年3月(令和元年9月改定)」
日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン」(2022年8月30日)

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