新型コロナウイルスワクチン いまわかっていること

ワクチン

2021年2月下旬から国立病院等の医療従事者に先行接種が行われ、現在は、医療従事者や高齢者への接種が進んでいます。その後は、基礎疾患を有する方や一般の方への接種が始まります。また、企業や大学等の職域単位での接種も行われます。

ある病原体に対して、人口の一定割合以上の人が免疫を持つと、感染患者が出ても、他の人に感染しにくくなることで、感染症が流行しなくなり、間接的に免疫を持たない人も感染から守られます。この状態を集団免疫といいます。新型コロナワクチンは、この集団免疫の達成を目指して接種を行います。

最初に投与が始まったファイザー製ワクチンは、3週間の間隔で2回投与が必要です。ワクチンは、−70℃の超低温冷凍庫に保管され、接種会場で解凍して使用します。1バイアルは5-6人分、冷蔵保存で5日間の保存が可能です。いったん解凍したバイアルは、再凍結することはできません。

現在、日本で承認されているのは、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ社のワクチンです。ファイザーとモデルナのワクチンは、mRNAワクチンです。このワクチンは、ウイルス表面のタンパク質の遺伝情報であるmRNAを投与することによって、人の体内の細胞でタンパク質が作られ、そのタンパク質に対する抗体が作られます。投与されたmRNAは自然に分解され、ヒトの体の遺伝子には組み込まれません。

一方、アストラゼネカのワクチンは、ウイルスベクターワクチンです。これは、アデノウイルスなどに遺伝子を組み込み、ヒトの細胞内で目的のタンパク質が合成される仕組みです。ウイルスは遺伝子の運び屋として使われるだけで、病気をおこすことはありません。

新型コロナワクチンの副反応

新型コロナワクチンを接種する上で心配されるのが、副反応の問題です。副反応がまったくないワクチンは存在しないのですが、新型コロナワクチンは構造がまったく新規のものですから、長期的な安全性は今後の検討になります。

新型コロナワクチンは、21-28日の間隔をおいて、2回の筋肉内注射を行います。これまでの報告では疼痛がかなりの頻度でみられます。また、38℃以上の発熱が2回目の接種後にでています。もっとも重症の副反応であるアナフィラキシーがまれな頻度(100万回あたり5例)で報告されています。ワクチン接種後少なくとも15-30分間は、アナフィラキシーなどの急性の副反応を観察するために待機が必要です。

アナフィラキシーは、薬や食物が身体に入ってから、短時間で起きるアレルギー反応です。じんま疹などの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状が急におこります。血圧の低下を伴い意識レベルの低下(呼びかけに反応しない)や脱力を来すような場合をアナフィラキシーショックと呼びます。アナフィラキシーの症状がみられれば、まず、アドレナリン(エピネフリン)の注射を行います。そのほか、症状に応じて、気管支拡張薬等の吸入や抗ヒスタミン薬、ステロイド薬の点滴や内服などを行います。

米国では、他のワクチンや食べ物に対して、重いアレルギーのある方も、新型コロナワクチンの接種が可能としています。 一方、過去に新型コロナワクチンに対して、アナフィラキシーなど重いアレルギー反応を起こした方や、同ワクチンに含まれるポリエチレングリコール(PEG)やポリソルベートに対して重いアレルギー反応を起こしたことがある方への接種は推奨していません。 

ちなみに、ポリエチレングリコールは、一般に、大腸検査の下剤や薬剤などを溶かす際に用いられます。また、ポリソルベートは、乳化剤として、様々な食品に用いられています。

もし、新型コロナワクチンの副反応によって治療が必要になったり、障害が残ったりした場合に、国の補償(医療費・障害年金等の給付)が受けられます。

おもな新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの開発状況です。

現時点での国内外のおもなワクチンを表1に示します。海外で、mRNA ワクチンやウイルスベクターワクチンの開発が先行し、日本ではファイザー、モデルナ、アストラゼネカ各社のワクチンが承認されています。日本でも従来の不活化ワクチンや組換えタンパク質ワクチンを含めてさまざまな方法による独自のワクチン開発が行われれ、すでに臨床試験が開始されたものもみられます。

COVID-19ワクチンの開発状況:日本感染症学会「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」より引用

一般的にワクチンの有効性を評価するには、3つの方法があります。

  1. 免疫原性:ワクチンを接種した人(被接種者)にできた抗体が感染を防ぐレベルに達した人の割合
  2. 臨床試験での有効率:ワクチンを接種した人としなかった人の病気の発生率を比較する
  3. 実社会での有効率:ワクチンの接種が普及したときに、感染症が実際にどのくらい減少したかを検証する

COVID-19ワクチンは、実社会での有効率はまだ先のことになりますから、免疫を誘導できるか(免疫原性)、臨床試験での有効率がどれほどかで評価されることになります。

ワクチンの有効率が90%とは、「ワクチンを接種した人の90%が病気にかからない」という意味ではありません。ワクチンを接種した人の病気になる発症率が、接種しなかった人の発症率より90%少なかった」ということです。

表にCOVID-19ワクチンの臨床試験の結果を引用しました。この表の「発症者数/接種者数」をみると、有効率という意味がわかります。インフルエンザワクチンの65歳未満の成人の有効率が52.9%と報告されていますから、COVID-19ワクチンの有効率はかなり高いといえるでしょう。ただし、このデータは海外での臨床試験の結果で、日本人のデータではありません。また、ワクチンの効果がどれくらい続くかもわかっていません。

COVID-19ワクチン臨床試験における有効率:日本感染症学会「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」より引用

COVID-19ワクチンを接種する上で心配されるのが、副反応(副作用)の問題です。副反応がまったくないワクチンは存在しないのですが、COVID-19ワクチンは構造がまったく新規のものですから、長期的な安全性については今後の検討になります。日本での臨床試験における有害事象を下表に示しました。

日本感染症学会「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」より引用
日本感染症学会「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」より引用
日本感染症学会「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」より引用

また、今のところ報告はありませんが、ワクチンを接種した人が感染したときに、接種していない人より症状がひどくなる「ワクチン関連疾患増悪(VAED)」という現象も他のワクチンで報告されていますので、今後、注意が必要です。また、その他の副反応として、ファイザーのワクチンでは「心筋炎」が、アストラゼネカのワクチンでは「血栓症」が報告されています。

mRNAワクチンは分解されやすいため保管にはマイナス60-80℃の冷凍庫が必要で、これまでのワクチンにはない品質管理が必要です。なお、アストラゼネカのワクチンはこれまでのワクチンと同様に冷蔵保管です。

妊婦のワクチン接種について

新型コロナワクチン(メッセンジャーRNA)ワクチンは、すでの多くの妊婦に接種している海外の報告では、妊娠初期を含め、妊婦さんとおなかの赤ちゃんの双方を守ることがわかっています。また、お母さんや赤ちゃんに重い合併症が起きたという報告はありません。日本においても、希望する妊婦さんにワクチンを接種することができます。妊婦健診を定期的に受け、かかりつけ医と相談して接種を決めてください。

妊娠中に新型コロナウイルスに感染すると、妊娠後期ではわずかですが重症化しやすいという報告があります。とくに感染の多い地域や、感染リスクの高い医療従事者、糖尿病・高血圧・気管支喘息などの基礎疾患のある方は、接種をおすすめします。あらかじめ、妊婦健診先の先生に接種の相談をしておきましょう。接種してよいと言われたら、そのように接種会場の問診の先生に伝えてください。

子どものワクチン接種について

子どもを新型コロナウイルス感染から守るためには、周囲の成人への新型コロナワクチンの接種が必要です。とくに、医療的なケアが必要な子ども、重い基礎疾患のある子どもに関わる方へのワクチン接種が重要です。

神経疾患や慢性呼吸器疾患、免疫不全症をもつ子どもにはワクチン接種の効果が期待されます。しかし、子どもは接種後の副反応が強くでることがありますので、接種後の体調管理などを主治医とよく相談して接種を決めてください。

健康な子どもは新型コロナウイルスに感染しても軽症であることがほとんどですが、周囲に感染を広げる可能性はあります。12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種の意義はあると考えられます。しかし、子どもはワクチン接種後の副反応が比較的高いため、接種前に本人と親に十分な説明を行い、強制的に行われることがないような配慮が必要です。

<参考>
厚生労働省「新型コロナワクチンについて」
厚生労働省「コロナワクチンナビ」
首相官邸「新型コロナワクチンについて」
日本産科婦人科学会・日本産婦人科感染症学会「妊産婦のみなさまへ−新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて−」(2021年6月17日)
日本小児科学会「新型コロナワクチン−子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方−」(2021年6月16日)
日本感染症学会「COVID-19 ワクチンに関する提言(第3版)」(2021年6月16日)
国立感染症研究所 「新型コロナワクチンについて(2021年6月6日現在) 」(2021年6月8日)
日本脳卒中学会・日本血栓止血学会「アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き・第2版」(2021年6月2日)
厚生労働省「新型コロナワクチン接種のお知らせ」(2021年5月21日)
日本アレルギー学会「新型コロナウイルスワクチン接種にともなう重度の過敏症(アナフィラキシー等)の管理・診断・治療」(2021年3月12日)

ノート

コロナでよくでる用語集

2021年1月19日
コロナウイルス

新型コロナウイルス感染症 いまわかっていること できること

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指定感染症とは、感染症の分類

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