出血と不正出血

血管

不正出血の質問をよくいただくので、ここでまとめておきたいと思います。最初に言い訳をしておくと、私の専門は内科ですので、私なりに調べてお答えはしているのですが、やはり、詳しいところは婦人科の先生にご相談していただきたいと思っています。

そもそも、出血とは何でしょうか。

出血とは、血液が血管の外へ流れ出すことです。

  • 出血の原因には
    • 血管の壁に傷がついて破れて起きる場合
    • 血管の壁が感染などでもろくなり、血液が染み出す場合などがあります
    • また、血液を固める凝固という仕組みに問題がおきて出血する場合もあります。

血管には心臓から酸素がたくさん含まれた血液を運ぶ動脈、体のすみずみに酸素を運んだあと心臓に戻っていく静脈があります。血管の大きさでいうと、心臓から離れるにつれて、太い血管はだんだん細くなり、毛細血管という網の目のような細い血管になって、また、心臓に向かってだんだんと太くなっていきます。

動脈と静脈は毛細血管でつながっている

動脈には、血圧という強い力がかかって、体のすみずみまで酸素の豊富な血液を送りとどけています。静脈は、下水道のようなもので、酸素を運び終えた血液を心臓に戻していくための血管です。静脈には、動脈ほど強い圧力はかかっていませんので、出血しても指で圧迫するだけで、多くの場合は出血が止まります。動脈には強い力が加わっていますので、そう簡単には血は止まらず、血管の穴を縫い合わせないと血が止まらないこともあります。

血液の色と出血した時間

人間の血液の色が赤いのはヘモグロビンという色素が含まれているからですが、これは血液が酸素を運ぶために鉄(Fe)が使われているからです。鉄は酸素と結合しやすいため、酸素を運ぶのに都合がいいのです。

出血したばかりの血液は、鮮やかな赤色(鮮紅色)ですが、出血からの時間が経つと、茶色から黒色へと変化していきます。これは、血液の中の鉄分が空気にふれて酸化していくためで、鉄がさびていくのと同じです。ですから、血液の色をみると、出血したばかりの血液は、時間が経った血液なのかを推測できます。

出血などによって血液が失われた状態を失血といいますが、月経での失血量は約50mlといわれています。一般に成人では全血量の半分にあたる約2000ml以上をいっぺんに失うと死亡してしまいます。たとえ、少量でも出血が持続していれば貧血を起こし、心臓などの臓器に負担をかけることがあります。

  • 出血する場所によって特別な名前がついているものがあり、たとえば、
    • 脳のなかに出血すれば脳出血、脳内出血
    • 胃や食道からの出血は吐血
    • 肺からは喀血
    • 鼻からは鼻出血
    • 腸や肛門からは下血
    • 尿に血液が混じっていれば血尿
    • 便に血液がついていれば血便

さて、だいぶ、前置きが長くなってしまいましたが、不正出血の話をしましょう。これは私の専門外なので、日本産科婦人科学会のホームページから引用し、一部書き直しています。

不正出血とは

ホルモンの異常や様々な病気により月経以外に性器から出血することを不正性器出血(不正出血)といいます。新しい血液は赤いですが、古い血液は茶色、わずかな出血では黄色のこともあります。排卵期に起こる中間期出血など病気ではないものもありますが、なかには重大な病気の症状のこともあるので注意してください。

不正出血をおこす病気にはどのようなものがありますか?

  1. 炎症によるもの
    • 病原菌の感染、萎縮性腟炎、子宮内膜炎など
  2. ホルモン異常によるもの
    • 卵巣機能不全、月経異常など
  3. 良性の腫瘍
    • 子宮頸部または内膜のポリープ、子宮筋腫など
  4. 子宮腟部びらん
    • 若い女性では一般的に見られる状態ですので、病気とはいえませんが子宮頸がんの初期のこともありますので注意が必要です。
  5. 悪性の腫瘍
    • 子宮頸がん、子宮体がん、卵巣腫瘍、子宮肉腫、腟がんなど
  6. 妊娠に関連するもの
    • 流産、異所性妊娠など
  7. 自分ではどこからの出血かわからないことが多く、実は尿や肛門からの出血のこともあります。

どうしたらいいですか?

不正出血では重大な病気が隠れていることもあります。ぜひ、婦人科を受診して検査を受けてください。疑われる病気によって検査は様々です。また、一度の検査で異常が見つからなくても、不正出血を繰り返すときはごく初期の病気が潜んでいることもあり、検査を繰り返したり、以前の状態との違いを比較することで診断できることもあります。毎回異なる病院で受診するのではなく、同じ病院で変化をみてもらうことをおすすめします。

ここからは、私の考えですが、膣内や子宮に入り口にできた浅い傷はすぐに治ってしまうことも多く、一度の診察では原因がはっきりしないことがあります。これは婦人科に限らず、消化管などからの出血でもおきることです。心配しないでいい不正出血もありますが、出血を繰り返したり、出血が止まらないなど、ふだんと違う出血があれば、専門の先生の診察を受けてください。

<参考>
日本産科婦人科学会「不正出血」(2023年1月11日閲覧)

4 件のコメント

  • 一つ質問なのですが、血液は酸化することで赤色になると聞きます。
    体外に出て酸化されるのであれば、黒くなるのはおかしいのではないでしょうか。

    • 1234さん、コメントありがとうございます。
      赤血球のヘモグロビンというタンパクには鉄が含まれています。ヘモグロビンに酸素がたくさんついて(酸素化)いる状態は、鮮やかな赤色です。
      出血して赤血球が空気にふれると、ヘモグロビンのなかの鉄はさびたように黒く変化(酸化)していきます。血液が赤くなるのは、鉄が酸化して酸化鉄になっているのではなく、酸素を運ぶためにヘモグロビンが酸素化しているからです。なんだか、難しい返事になってしまいましたが、酸化と酸素化は違うということです。
      質問の着眼点はさすがです。

      • お返事ありがとうございます。
        酸化と酸素化ですか、難しいですが、異なる仕組みによって変色するということですね。

        • うまく説明できなくて、すいません。
          空気をジュースにぶくぶくいれるか、鉄の板を野ざらしにするか、そんな違いなんですが。
          これもわかりにくいですね。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です