古代ギリシャでは、奴隷や犯罪者、反逆者などの皮膚に焼印を押して区別ができるようにしていました。この焼印のことを「スティグマ(stigma)」と呼んでいました。これが語源となって、「スティグマ」は、烙印、汚名、不名誉のしるし、のような意味で使われるようになりました。
現在、「スティグマ」といえば、「ソーシャル・スティグマ(社会的スティグマ:social stigma)」と同じ意味で使われることが多くなっています。「ソーシャル・スティグマ」は、人種や社会的身分、職業、ジェンダー、病気や障害などを持っていることで、社会から烙印を押され、偏見や差別を受けることです。
医療の世界では
- 糖尿病、肥満症などの生活習慣病
- 認知症
- COVID-19、HIVなどの感染症
- うつ病などの精神疾患、の患者さんが「スティグマ」の対象になることがあります。
糖尿病や肥満症などの生活習慣病を抱える患者さんには、怠けている、だらしない、根気がない、自己管理ができないなど、患者自身の性格を非難されることが少なくありません。肥満症の患者さんには、「体重スティグマ」という烙印がおされ、いじめや差別につながることがあります。生活習慣病とひとくくりにされると、生活習慣が悪いから自分で引き起こした病気だと周りから決めつけられるのでしょう。職場で自己管理力が足りない人間と評価され、降格や退職を強制されたり、生命保険や住宅ローンの審査に通らないなど、社会的な差別を受けることもあります。
スティグマには、周りの人が患者さんに向けるスティグマと、患者さん自身が自分に感じるスティグマがあります。
医療関係者でも、たとえ意図しなくても、自己管理のできない患者さんのレッテルを貼ってしまうことがあります。こうした態度は患者さんにも伝わり、自分を責めたり、治療意欲を無くしてしまうことになります。患者さんにスティグマを感じさせないために、いかに良好なコミュニケーションをつくっていくかは、医療関係者に必須のスキルといえます。
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