医療ひっ迫(医療逼迫、いりょうひっぱく)

医療逼迫

役人か、メディアか、誰が考えた言葉か知らないが、「医療ひっ迫」の見出しが踊っています。ひっ迫(逼迫、ひっぱく)ですか、、、この国は本質的なことを難しく表現して、うやむやにする習慣があります。

ひっ迫(逼迫、ひっぱく)とは

  1. 行き詰まって、ゆとりのない状態になること。
  2. 苦痛が身に迫ること。

医療がひっ迫するということは、文字通り解釈すれば、病院などの医療機関が行き詰まって、ゆとりのない状態になること。医療機関に苦痛、限界が迫っていることを意味しています。

つまり、医療ひっ迫とは、「医療機関での病気の診断や治療に支障がでて、十分に患者さんに医療行為を提供できない状態」ということになります。医療ひっ迫がすすめば、医療機関の機能が停止して「医療崩壊」ということになるのでしょう。

新型コロナ患者が過去最高の水準で発生しており、医療への需要は格段に高まっています。検査や治療をもとめて、たくさんの方が、診療所に病院に押し寄せています。朝からPCR検査の問い合わせの電話が鳴り止まず、検査の枠は一瞬で埋まり、回線がパンクして他の患者さんからの連絡もなかなかとれない状況が続いています。

感染者はネット上のHER-SYSというシステムに登録するのですが、なんせ、検査する方のほとんどが陽性なので、データを打ち込むだけでもひと仕事です。患者さんの病状や重症度はきちんと登録し、重症化しそうな患者さんを保健所に連絡しておかないと大変なことになるので、すべてを事務にまかせることができず、結局は医者が最終的に確認する作業が必要になります。

入院が必要な重症者がでたときが、また、ひと騒動になります。人工呼吸器が必要なほど重症であれば、まだ、なんとか専門医療機関に送ることができています。しかし、酸素を投与するほどではないが身動きができない高齢者を、療養病棟や施設から受け入れてくれるような病院は見つからず、もともとの場所で療養せざるを得ません。もともと感染対策や隔離が十分に行えるような設備がなく、十分な人員もいないところで、コロナ感染者を看護するのは大変な負担です。コロナ感染者を動かせない小さな病院や施設では、他の患者さんや職員に次々に感染を広げ、クラスターを起こす危険にさらされます。

病院の職員にも日常の生活があり、家族や子どもから感染が多発する状況は一般の方々と変わりません。とくに看護師の感染者や濃厚接触者が、どの病院でも相当数に達しており、マンパワーを確保できないため、一般の入院を制限せざるをえない状況もでています。また、コロナ関連の薬、ワクチン、感染対策の防護衣、検査試薬や材料など、コロナと闘うために必要な弾が足りなくなっています。

人はいない、弾はない、後方の支援もない。

コロナとの戦争を闘う兵力が圧倒的に不足しています。結局のところ、医療への需要や期待は高まっているのに、医療機関側が十分に医療を供給できる準備ができていないことが、医療ひっ迫の原因です。

政府は、医療がひっ迫するから、医療機関に負担をかけないように患者の数を減らしましょう。患者は医療機関に迷惑をかけないように、自宅で過ごしましょう。などと、宣伝をしていますが、感染者が爆発的に増えているのは感染者の責任ではありません。コロナという病気の感染力の強さによるものです。

医療機関に十分な検査をし、治療をするだけの支援をするのが国の仕事です。治療を受けられるだけのベッドを準備するのが、国の仕事です。それを、おざなりにして、医療機関や保健所の仕事を減らしましょうと宣伝されるのは心外です。

人員を増やし、システムを整え、医療機関と行政が連携をとりながら、効率的な戦略を練ることをせず、無策のまま、無為の時間を過ごしてきたツケが回ってきました。このまま、医療機関への支援もないまま、国が手を引いて、患者の把握もせず、自分で病院をみつけ、治療費の自己負担も必要となれば、確実にコロナで亡くなる方が増えるでしょう。混沌とした出口のない、コロナとの戦いが続くだけです。

「ひっ迫する」は、英語でなんて言うのだろう。

調べてみると、overwhelm という言葉をみつけました。overwhelm は、「あふれかえる」という意味があり、まさしく、医療の器から患者があふれかえっている様が、「ひっ迫」にふさわしいと感じます。医療の器が小さいなら、大きくすればいいのです。この国は、器をそのままにして、入れ物を減らそうとしているのです。

2 件のコメント

  • 政府は現場を知らないので、病床を増やせ、感染者を受け入れろと簡単に言います。
    でも、病院の建物や環境、設備上の問題から全てを可能にするところなんてそんなにないですよね。
    それをしっかりと確認や調査しないまま来たから、今になってまた逼迫を起こしています。
    しかも今回は入院期間が長いのと、感染力の強さから医療従事者が感染して人手不足になりって現象が起きています。
    何が怖いって、基礎疾患を持っている人達がいざという時に入院出来ない事です。救急でもたらい回しとかもあるようですしかなり不安です。
    自宅で療養しましょうと、症状が軽ければ基礎疾患があっても自宅で療養とか、下手をしたら自信が感染してないか自分で判断して、検査キットで検査して、陽性になったらコロナ外来を受診とか。素人に自分の正確な重症度なんて簡単には分からないのに、結果重症化しても間に合わないかもで、毎日ハラハラしながらの生活です。
    国民を自由に行動させるのなら、感染者に対する対策と医療機関への協力金などの支援金とか、政府はもう少し現場の声を聞いて策を練った方がいいと思います。
    患者さんが亡くなり、医療崩壊して、このままではろくなことがないような気がします。

    • ねこぱんださん、コメントありがとうございます。
      まず、一般の方にわかっていただきたいのは、新型コロナはただの風邪ではないということです。
      オミクロン株が重症化しにくいので、軽症ですむ病気だと思われているようですが、若い方でもかなり衰弱して来院される方がたくさんいます。
      現在の重症度分類は、酸素投与が必要かどうかの呼吸状態だけで分けられているので、いくら衰弱して身動きができなくても、酸素投与が必要でなければ、まず、入院することはできません。
      分類上の重症度は、実際の患者さんの状態を反映できるものではありません。
      新型コロナは、いったん重症化し始めると、数時間という単位で悪化していきます。
      まわりに観察をしてくれる人がいない方は、高齢者、若年者に関わらず、急激に病状が悪化したとき、救急車を呼ぶ力さえ残っていないかも知れません。
      感染者の登録が外されれば、感染者の療養状況さえわかりません。かかりつけ医がいなければ、まったく、目が届かないことになります。
      これは「医療ひっ迫」ではなく、国が感染者を見捨てることになります。
      保健所の業務がひっ迫しているなら、そこに人を投入するなり、業務を効率化すればいいだけで、感染者を放り投げる言い訳に使われたくはありません。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


    reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。