妊娠から分娩時の新型コロナウイルス感染の対応について、まとめました。
- 感染が妊娠・胎児に与える影響
- 現時点では新型コロナウイルス感染により、胎児の異常、流産・死産のリスクが、特に高くなるという報告はありません。
- 感染した場合の経過について
- 妊娠中に新型コロナウイルスに感染したときの重症度や経過については、妊娠していない女性と変わりありません。しかし、妊婦さんは、通常でも肺炎などの感染症が重症化することがあります。また、妊娠中は使用できる薬剤に制限があるので注意が必要です。
- ワクチン接種について
- COVID-19ワクチンは、現時点では妊婦に対しての中・長期的な副反応や、胎児および出生児への安全性に関しての情報は十分ではありません。世界的には、接種のメリットがリスクを上回ると考えられています。しかし、妊婦は母児管理のできるところで接種を受けたほうがよいでしょう。
- 現時点でmRNAワクチンに催奇形性や胎児胎盤障害の報告はありませんが、器官形成期である妊娠12週まではワクチン接種を避けましょう。
- 産婦人科の主治医と十分に相談して、接種を決めてください。
- 日常で気をつけること
- 不要不急の外出を控え、特に会食やカラオケなどは避けてください。
- 外出時、医療機関を受診するときなどはマスクを着用してください。
- こまめに手洗いや手指消毒をしてください。
- 人混みを避けてください。
- 密閉空間・密集場所・密接場面の3つの「密」が重なる場面を避けてください。
- 喫煙は新型コロナウイルス感染症のリスクとなります。ご本人、ご家族も含めて禁煙を心がけてください。
- 十分な睡眠とバランスの良い食事で栄養を取り体調を整えるように留意しましょう。
- 働き方について
- ご自身の体調を勤務先と相談し、時差通勤やテレワークの活用、休暇の取得などを考えましょう。
- 家族内に感染者、感染疑いのある方がいる場合
- 別室で過ごすなど接触を避けてください。
- タオルや食器の共用は避けてください。
- 家庭内でもマスクを着用し、距離を開けてください。
- 発熱などがある場合
- 妊婦さんで鼻汁や悪寒など風邪症状や 37.5℃以上の発熱,あるいは強いだるさ(倦怠感)、 息苦しさ(呼吸困難)がある場合は、かかりつけの先生に電話でご相談下さい。
- 妊婦健診の受診について
- 体調に変化がない場合には、通常通り妊婦健診を受診してください。
- 妊婦健診の受診を延期する場合には、可能であれば自宅で血圧測定をして、記録しておいてください。不正出血、お腹の痛み、破水感、血圧上昇などの症状がある場合には、かかりつけの先生に電話でご相談ください。
- 分娩について
- 立ち合い分娩や面会は制限されます。
- 分娩前に新型コロナウイルスのPCR検査をおすすめすることがあります。
- 分娩時に新型コロナウイルスに感染している場合は、帝王切開になることがあります。(感染したからといって、すぐに帝王切開されるわけではありません。)
妊産婦の方へ、新型コロナワクチン(mRNAワクチン)のQ&A
妊産婦さんへの新型コロナワクチン(mRNAワクチン)について、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会の3学会が合同でお知らせをホームページに掲載しています。一部わかりにくい表現を改め、ご紹介します。
- 新型コロナワクチンで不妊になることはありますか?これから妊娠を考えているのですが、mRNAワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?
- 新型コロナワクチン(mRNAワクチン)で不妊になるという科学的根拠は全くありません。
- 妊娠中の女性はmRNAワクチンを接種しても大丈夫でしょうか?
- 妊娠中の女性でもmRNAワクチンを接種して大丈夫です。すでに多くの接種経験のある海外の情報では、妊娠初期を含め妊婦さんとおなかの赤ちゃん双方を守るとされています。また、お母さんや赤ちゃんに流産などの何らかの重篤な合併症が発生した報告もありません。
- 不妊治療中ですが新型コロナワクチンを接種できますか?
- 不妊治療中の方も接種できます。接種後は発熱などの副反応がでることがあるので、できれば妊娠前の接種をおすすめします。
- 妊娠のいつの時期に接種したほうがいいでしょうか?
- いつの時期でも接種可能です。心配な方は器官形成期(妊娠12週まで)を避けることをおすすめしますが、現時点で新型コロナワクチンによる催奇形性(胎児に奇形が起きること)の報告はありません。主治医とご相談の上、お決めください。
- 妊娠中に新型コロナワクチンを接種して、熱がでたらどうしたらいいですか?
- アセトアミノフェン(カロナールなど)は服用して構いません。その他の解熱鎮痛剤については、妊娠中に使用しないほうがよいものもあるので、主治医にご相談ください。
- 出産等でmRNAワクチンの接種間隔が延びてしまいそうです。大丈夫でしょうか?
- 接種間隔が延びても問題ありません。接種が可能になったら、なるべく早く2回目の接種を受けてください。
- 妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などの合併症がある場合でも、接種して大丈夫でしょうか?
- 事前に産婦人科の主治医にご相談ください。一般的に合併症があると重症化するリスクが高くなるので、可能であれば接種したほうがよいでしょう。
- 妊娠中にmRNAワクチンを接種すると、赤ちゃんに免疫が移行しますが?
- 抗体が胎盤を通って、赤ちゃんに移行するので、産後に赤ちゃんを感染から守る効果が期待できます。
- 授乳中の女性はmRNAワクチンを接種できますか?ワクチンを接種したらミルク(人工乳)に変更した方がよいですか?母乳から赤ちゃんに免疫が移行しますか?
- 接種できます。mRNAワクチンを接種してもミルクに変更する必要はありません。mRNAワクチンは母乳中に分泌されませんが。抗体が母乳中に分泌されるので、赤ちゃんを感染から守る効果が期待できます。
- mRNAワクチンが女性の健康に長期的な影響を与える可能性はありますか?
- 投与されたmRNAは短時間で分解され、ヒトの遺伝子に入り込むことはないので、長期的な影響はないと考えています。
- 生理中にmRNAワクチンを接種してもいいでしょうか?
- 問題ありません。生理痛で痛み止めの薬を飲んでいる方は、飲み過ぎにならないように気をつけてください。
- mRNAワクチンで月経不順や経血量が増えることはありませんか?
- mRNAワクチンが直接、月経(生理)に影響を与えることはありません。
- 経口避妊薬を飲んでいてもmRNAワクチンを打つことはできますか?
- できます。mRNAワクチンで血栓ができるという報告はありません。
- 新型コロナワクチン接種者に近寄ると感染すると聞きました。本当ですか?
- 本当ではありません。ワクチンによって、ウイルス全体のごく一部のタンパク質作られるだけで、感染力のあるウイルスが作られることはありません。
- 新型コロナワクチンの成分や接種後にできる抗体が胎盤を攻撃すると聞きました。本当ですか?
- 本当ではありません。新型コロナワクチンの成分や接種後の抗体が胎盤を攻撃することはありません。
<参考>
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会・日本産婦人科感染症学会 「女性のみなさまへ 新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン) Q & A」(2021年7月19日)
日本産科婦人科学会・日本産婦人科感染症学会「妊産婦のみなさまへ−新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて−」(2021年6月17日)
日本産婦人科感染症学会・日本産科婦人科学会「COVID-19ワクチン接種を考慮する妊婦さんならびにワクチン接種を希望する方へ」(2021年5月12日)
厚生労働省 「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策 〜妊婦の方々へ〜」
日本産婦人科感染症学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、妊娠中ならびに妊娠を希望される方へ 第13版」(2021年4月20日)
日本産婦人科感染症学会「妊婦さんとお母さんのために新型コロナウイルス感染症予防のためのQ&A」(2021年4月8日)
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