聴診器で何が聴こえるの?

医学部の授業で初めて聴診器を買ったとき、少し恥ずかしくもあり、嬉しくもありました。そのときの聴診器は、初心者向けの簡単なものでしたが、研修医になったときに、リットマン製のカルディオロジーというモデルを買いました。少しばかり上等で、少し賢くなった気がしました。

聴診器メーカーはいろいろありますが、なかでも、リットマン製は一番良く売れています。リットマンのモデルの中で、「カルディオロジー」は、その名前の通り、循環器医につくられたもので、細かい音まで確かによく聞こえます。循環器医ではないくせに、今でもカルディオロジーを使い続け、最近、4代目に買い替えました。

さて、医者は、患者さんの胸に聴診器を当てて、何を聴いているのでしょう?

まずは、心臓の音、「心音(しんおん)」です。

心臓は、広がったり、縮んだりを繰り返して、体の中の血液を循環させるポンプです。このサイクルは、1分間に60回程度。心臓からぐっと押し出されるときの音が、もっともよく聞こえる音です。

動脈や弁が固くなり、血管が細くなると、血液は狭いところを押し出されるので、「ギュッギュッ」という雑音が聞こえます。

心臓の弁が閉まらずに血液の逆流があると、「シャーシャー」という音が聞こえます。このような雑音が、心臓の異常を知るきっかけになります。

心臓は雑音以外にも、リズムを聴くことが大事です。

心臓は、太鼓やドラムのように規則的なリズムを打つはずですが、リズムが跳んだり、止まったりして乱れた状態は、「不整脈」とよばれます。

私は、音痴の心臓、と勝手に名付けています。

もうひとつ大事なのは、肺の音、「呼吸音」です。

息を吸ったり、吐いたりすると、空気が気管支という細い管を通って、肺胞(はいほう)という袋に流れ込み、ここで酸素が血液のなかに取り込まれます。

気管支が炎症を起こすと、空気の通り道が細くなるので、笛を吹くのと同じように呼吸にあわせて音がします。これで、気管支が炎症を起こしていることがわかります。また、肺胞まで炎症が広がると、肺胞に水がたまってブクブクという音が聞こえます。

今は、心臓が悪ければエコー検査、肺が悪ければレントゲンやCT検査を行うので、聴診器にだけ頼ることはありませんが、毎日の患者さんの変化をみつけるためには、大事な診察法であることに変わりはありません。ですから、医者は今でも、聴診器を患者さんの胸に当てるのです。

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