医師の数は地域によって偏りが大きい

都市部の大病院にはたくさんの医師が働き、街中にはコンビニ並みにクリニックがあふれています。メディアでは医師不足といわれていますが、本当なのでしょうか。

実は、医師の総数というより、地域による偏りが大きいことが問題なのです。

厚生労働省が2019年2月18日に公表した「医師偏在指標」によれば、医師が最も多いのは東京都(329.0)、以下、2位が京都府(314.9)、3位が福岡県(300.5)、4位が沖縄県(279.3)、5位が岡山県(278.8)、6位が大阪府(274.4)と続く。

逆に、医師数が最も少ないのが、岩手県(169.3)、以下、新潟県(169.8)、青森県(172.1)、福島県(177.4)、埼玉県(178.7)、茨城県(179.3)がつづく。岩手県は、実に、東京都の半分程度ということになる。

( )内は医師偏在指標値で、人口10万人当たり医師数に加え、将来の人口、人口構成の変化、患者の流出入、医師の年齢分布などの要素を加味して計算されたもの。

東京都が多いのは頷けるが、福岡県は第3位。さらに、細かく医療圏を分析すると、福岡県久留米地区が全国3位、福岡県福岡・糸島地区が9位。私の働く福岡県は、全国でも屈指の医師数の多い地域に属している。

「診療科ごとの将来必要な医師数の見通しについて」という報告もあり、最も増員が必要なのは、内科で1万4189人分、以下、外科で4363人分、脳神経外科で2523人分とつづく。

逆に、必要な医師数が減少するのは、精神科1688人分、以下、皮膚科1414人分、耳鼻咽喉科1229人分となる。皮膚科、精神科、眼科、耳鼻咽喉科は、現時点も過剰という見解らしい。

医師の数を増やしていけば、やがて医師過剰の都市部での競争が激しくなり、医師不足の地域へ流れていくだろうという算段で、医学部の定員が増えている。しかし、医療費は今後も削減されるはずだから、医師の給与水準は下がっていくだろう。

それでも、医師が多い地域には、大病院でスキルを磨く職業人としての魅力と、子供の教育など生活者としての魅力があり、そこに磁石のように引きつけられる。医師不足の地域に呼び込むには、それなりの磁力を作ることが必要で、ただ、都会で敗れた医師が仕方なく働くのでは、職業として寂しすぎる気がする。

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