アミロイドーシスとは、アミロイドという繊維状のタンパク質が臓器に沈着して臓器の機能障害をおこし、ときとして致命的になる病気です。アミロイドは、全身の臓器に蓄積する(全身性アミロイドーシス)こともあれば、一つの臓器に限局して蓄積する(限局性アミロイドーシス)こともあります。
頻度の高い全身性アミロイドーシス
- ALアミロイドーシス:骨髄の形質細胞が異常をおこす
- AAアミロイドーシス:関節リウマチなどの慢性炎症に続発
- 透析アミロイドーシス(β2Mアミロイドーシス):10年以上の長期透析患者に発生
- 遺伝性ATTR:TTRの遺伝子変異が原因
- 老人性ATTR(老人性全身性アミロイドーシス):加齢現象に付随する
日本で最も頻度が高いのは、ALアミロイドーシスで、年間の発生率は100万人あたり3-5人です。
アミロイドーシスの診断のためのフローチャート
診断
- アミロイドーシスの診断を確定するためには、アミロイドの臓器への沈着を顕微鏡検査で行います。生検組織がコンゴーレッドという色素で染色されれば、アミロイドの沈着が証明されます。アミロイドの型や遺伝子の検索など、さらに専門的な検査が必要になります。
症状
- アミロイドが、心臓、腎臓、消化管、脳・神経などの重要な臓器に沈着し、臓器の機能障害がおきることで、さまざまな症状があらわれます。
- 主な症状は、心臓(不整脈・心不全)、腎臓(タンパク尿・腎不全)、消化管(食欲不振、頑固な便秘や下痢)、脳・神経(手足のしびれ、麻痺)などです。脳の組織にアミロイドが沈着するとアルツハイマー病、脳血管壁に沈着すると脳出血を引き起こすことがあります。
治療
- AL:化学療法
- AA:原疾患の治療
- 遺伝性ATTR:トランスサイレチン(TTR)は肝で作られるため、肝移植の適応。薬剤(ジフルニサル、タファミジスなど)投与である程度の効果が期待される。
- 老人性ATTR:薬剤(ジフルニサル、タファミジスなど)投与である程度の効果が期待される。
- 透析アミロイドーシス:透析膜の改良
ALアミロイドーシス
- 骨髄の異常形質細胞から産生されるモノクローナル免疫グロブリン軽鎖(MタンパクL鎖)に由来するアミロイドが全身の臓器に沈着
- アミロイドは心臓、肝臓、腎臓、消化管、末梢神経など全身臓器に沈着
- 初期には全身倦怠感や体重減少、浮腫、貧血などの症状
- しだいに、心不全、タンパク尿、胃腸障害(頑固な下痢)、巨舌、末梢神経障害、手根管症候群、皮下出血などが現れる。臨床症状は多彩。
- 治療は抗癌剤による化学療法
AAアミロイドーシス
- 関節リウマチなどの慢性炎症に合併
- 主に消化管、腎に沈着
- 難治性下痢などの消化器症状、タンパク尿や腎不全などの腎障害
- 治療は基礎疾患の炎症を抑えること
- 透析アミロイドーシス(β2Mアミロイドーシス)
- 10年以上の長期透析患者に発生することが多い
- 透析患者の血中に増えるβ2ミクログロブリン(β2M)が原因
- 骨関節に沈着しやすい
- 主な症状は、関節痛・変形・拘縮、手根管症候群・ばね指、骨折
- 透析膜や透析液の改良が行われている
遺伝性ATTR(家族性アミロイドポリニューロパチー FAP)
- 遺伝的に変異を起こしたトランスサイレチン(TTR)が沈着
- 20−30歳代に発症し、ゆっくりと進行する
- 末梢神経、消化管、自律神経、眼、心血管、腎臓に沈着が強い
- 下肢のしびれ感、温痛覚障害で初発することが多い
- 手根管症候群を呈することがある
- 消化器症状は、強い下痢と便秘が交代して出現し、次第に持続性の下痢になる
- 循環器では、房室ブロックなどの不整脈が現れ、心肥大が進行する
- 眼は硝子体混濁が進行すると、緑内障から失明することがある
- トランスサイレチン(TTR)は肝で作られるため、肝移植の適応あり
- TTR四量体安定化薬(ジフルニサル、タファミジス)、遺伝子治療薬で効果が期待される
老人性ATTR(老人性全身性アミロイドーシス)
- 高齢者の心臓を主に侵す
- 野生型トランスサイレチン(TTRwt)が沈着
- 60歳代の後半から、心臓症状、または、手根管症候群で初発することが多い
- 心臓症状は、心房細動で初発し、心不全へと進行する
- 不整脈に心臓ペースメーカーの適応あり
- TTR四量体安定化薬(ジフルニサル、タファミジス)、遺伝子治療薬で効果が期待される
<参考>
- 日本アミロイドーシス学会HP(2022年10月27日閲覧)
- 厚生労働省 難治性疾患政策研究事業 アミロイドーシスに関する調査研究班 「アミロイドーシス診療ガイドライン2010」
- 日本循環器学会「心アミロイドーシス診療ガイドライン2020年版」
- 日本神経治療学会「標準的神経治療:アミロイドーシス2018」
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