胃ろうとは、体の外から胃の中にチューブを通して、栄養剤を直接、胃に流し込む栄養補給の方法です。
「瘻(ろう)」とは、臓器と臓器をつなぐ管のことですから、「胃瘻(いろう)」は、胃と体表をつなぐ管という意味になります。正式な医学用語では、経皮内視鏡的胃瘻造設術といい、その英語(Pericutaneous Endosopic Gastrostomy)の頭をとって、PEG(ペグ)と呼んだりします。
胃ろうは、胃カメラ(胃内視鏡)で胃の中を確認しながら、ワイヤーを胃から体外へ突き刺し、そのワイヤーに胃ろうのチューブを沿わせて、体表面と胃をつなぎます。
手技的には難しくないのですが、出血や感染をおこすリスクはありますし、胃の壁がうまく体表に近いところに固定できない場合もあり、まったく安全でリスクがない処置ではありません。
認知症がある患者さんでは、胃ろうの認識ができずに、自分で引き抜いたりすることもあります。
胃ろうは嚥下障害による栄養状態の低下を改善するためのもので、誤嚥を回避する手段ではありません。胃ろうをしても、誤嚥性肺炎はおこりますから、誤嚥の予防のために行うものではありません。
胃ろうをすれば、必ず、長く生きられるかというと、その保証はありません。
嚥下障害のある重度認知症への経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)栄養により長期的に生存期間が延長するというエビデンスはないという報告もあります。(認知症疾患診療ガイドライン2017. 日本神経学会監修)
一度、胃ろうをすると二度と戻れないという誤解がありますが、ピアスの穴と同じようにチューブは抜けば塞がります。また、胃ろうをしても口から食べるリハビリ(嚥下リハビリ)を継続することは可能です。
ただし、多くの場合、嚥下機能が廃絶してリハビリが難しい方に、胃ろうを造るケースが大半です。そうした方は、胃ろうを抜くという状況は考えにくくなります。
高齢で衰弱がすすんだ方に、胃ろうを作るかどうかは明確なルールがあるわけではないので、ご家族としても選択の難しい問題です。ご家族は患者の代理であり、ご本人ならどういう決定をするだろうかという気持ちで決めていくことが大事です。
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