慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病

慢性腎臓病は、腎臓の機能が低下し、腎臓が障害をおこした状態です。慢性腎臓病は、chronic kidney diseaseの略で、CKDとよんでいます。

腎機能の低下の目安になるのが、タンパク尿と腎機能です。腎機能は、腎臓が時間あたりに処理できる尿量であるGFR(糸球体濾過量)で推定します。

慢性腎臓病の定義は

  1. 尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか
  2. GFR<60 mL/分/1.73 m2
    • ①, ②のいずれか,または両方が3カ月以上持続する
      • なお、GFRは日常診療では血清Cr値,性別,年齢から日本人のGFR推算式を用いて算出する.

この定義に合わせると、わが国のCKD患者数は1330万人と推定されます。実に、全国民の8人に1人が、腎臓病を持っている計算になります。

腎臓の機能が低下し、腎不全という状態になると、体内から老廃物を尿として捨てることができなくなり、機械によって、汚れた血液をきれいにするために、血液透析が必要になります。日本の透析患者は約33万人で、増加が続いています。透析導入患者は年々高齢化し、75〜80歳で透析が始まることが最も多くなっています。

原因となる病気は、糖尿病の合併症である糖尿病性腎症が第一位で、全体の40%以上を占めています。ついで、慢性糸球体腎炎、高血圧による腎硬化症です。

とくに、糖尿病の合併症である糖尿病腎症、高血圧によって起きる腎硬化症が増えています。年齢とともに、糖尿病、高血圧が動脈硬化を引き起こし、腎臓病になっていく、というケースが大半です。

したがって、生活習慣病、メタボリックシンドロームの対策を地道に行うことが、ひいては、過酷な血液透析の治療を余儀なくされる患者さんを救うことになるのです。

慢性腎臓病は、早期では自覚症状がなく、腎機能がかなり低下してから、高血圧、貧血、高カリウム血症、骨ミネラル代謝異常があらわれます。自覚症状がないので、治療の開始が遅くなってしまうことがよくあります。

CKDの重症度分類

CKDの重症度分類
CGA分類
  • 緑から黄、オレンジ、赤の順にステージが上がるほど、リスクが上がります。

慢性腎臓病の危険因子は、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、肥満、喫煙などがあり、中でも糖尿病は最大のものです。慢性腎臓病は、生活習慣病でもあるのです。

さらに、慢性腎臓病では心筋梗塞や心不全、脳卒中の合併が多く、死亡原因にもなっています。

腎機能

  • 血清クレアチニン値からGFRを推定する方法(推算GFR)が最も簡単で正確です。
  • 推算GFR(eGFR)は、eGFR(ml/min/1.73m2)=194×血清クレアチニン^-1.094×年齢^-0.287
  • 女性はこれに×0.738 で計算することができます。
  • (^は乗数です。クレアチニン値の-1.094乗、年齢の-0.287乗です。)

尿検査

  • 慢性腎臓病を早期に発見するには、尿検査が簡単で有効な方法です。

健康な人でも尿にはわずかにタンパクがでています。とくに、激しい運動をした後、発熱時、ストレスがかかったとき、長い間立っていたときは、尿にタンパクがでることがあり、これは病気ではありません。

一般的な試験紙での測定では、尿タンパク±は15mg/dL、1+は30mg/dL、2+は100mg/dL、3+は300mg/dLに相当します。尿タンパクが繰り返し陽性になる場合は、腎臓に異常がある場合があります。

とくに、タンパク尿と血尿がともに陽性、またはタンパク尿が多いほど腎臓病が進行する危険が高いと考えられます。

治療

  1. まず、第一に生活習慣の改善を行います。
    • 食塩摂取量は6g/day未満におさえます。
    • 肥満を解消しましょう。
    • タンパク質を過剰に摂取することは控えましょう。
    • 禁煙は必須です。
  2. 血圧は130/80mmHg未満を目標にします。
    • 降圧剤は腎保護作用のあるACE阻害薬、ARBが第一選択です。
    • 血清クレアチニン値の上昇や高K血症に注意する必要があります。
  3. 糖尿病は慢性腎臓病で最も大事な問題です。
    • HbA1c 7%未満を目標に、厳密な血糖管理が必要です。
  4. 脂質異常症の治療により、タンパク尿の減少と腎機能低下の抑制が期待されます。
    • LDL-コレステロールは120mg/dL未満が目標です。
  5. 腎臓病の進行によっておきる骨粗鬆症を治療します。
  6. 腎性貧血が進行すると、治療が必要なときがあります。

<参考>
日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 2018」

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