RSウイルスは、気管支や肺などの呼吸器に感染症をおこします。一度かかっても免疫が十分にできないため、年齢に関わらず、繰り返し感染することがあります。1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%が最初の感染を起こします。とくに1歳未満の乳児が感染すると、重症化して肺炎を起こすことがあり、乳幼児のいる家庭では注意が必要な感染症です。
RSウイルスは、乳幼児の肺炎の約50%、気管支炎の50−90%を占めています。大人では、かぜの症状をおこすことがほとんどですが、RSウイルスに感染した小児を看護する保護者では、気管支炎やインフルエンザのような症状を起こし重症になることがあります。また、呼吸器疾患などの基礎疾患がある高齢者で、肺炎を起こすことがあります。
RSウイルス (RSV) は、ニューモウイルス属に分類され、A型とB型の2種類があります。例年、冬に流行していましたが、最近では7月頃から増加するようになりました。保育園や幼稚園での集団発生も報告されています。
RSウイルス感染症とよく似た症状をおこすウイルスに、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)があります。ヒトメタニューモウイルスは、RSウイルスと遺伝子が類似し、症状もよく似ています。RSウイルスに比べると発生率はかなり低いですが、小児の呼吸器感染症の5-10%は、ヒトメタニューモウイルスが原因と考えられています。
感染経路
- 咳やくしゃみ、会話のときにしぶきを吸い込んで感染する飛沫感染
- 感染している人に触ったり、ウイルスが付着したもの(ドアノブ、手すり、スイッチ、机、いす、おもちゃ、コップなど)を触って感染する接触感染
症状
- 感染してから4-6日間の潜伏期間の後
- 発熱、咳、鼻水などの症状が数日続いて、軽症でおわることがほとんどです
- 悪化すると、ゼイゼイ・ヒューヒューという呼吸(喘鳴)や呼吸困難などの症状が現れることがあり、気管支炎や肺炎へ進行しているサインです
RSウイルス感染症は、あらゆる年齢で感染を起こしますが、とくに乳幼児、生後数週から数カ月の間に感染すると、気管支炎や肺炎を起こして重症化しやすくなります。6ヶ月以下の乳幼児1-2%が重症化し、入院が必要になることがあります。
- 早産児
- 生後24ヶ月以下で心臓や肺に疾患がある小児
- 神経・筋疾患がある小児
- 免疫不全状態の小児
- 生後3ヶ月以内の乳児への感染は、とくに注意が必要です
診断
- rRT-PCR (Real-time reverse transcriptase-polymerase chain reaction)
- 抗原検査:乳幼児、小児には感度が高いが(80-90%)、成人の感度は低い
治療
- RSウイルス感染症には、特効薬はなく、症状を和らげる対症療法を行います。現在、ワクチンはありません。
- モノクローナル抗体製剤のパリビズマブ(Palivizumab)は、RS流行初期に投与し、1ヶ月ごとに筋肉注射を行うことで、重症化を予防する効果があります。とくに、次のようなハイリスクの方が投与対象者で、保険適応になっています。
- 在胎期間28週以下の早産で、12ヶ月齢以下の新生児および乳児
- 在胎期間29-35週の早産で、6ヶ月齢以下の新生児および乳児
- 過去6ヶ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた24ヶ月齢以下の新生児、乳児および幼児
- 24ヶ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の新生児、乳児および幼児
- 24ヶ月齢以下の免疫不全を伴う新生児、乳児および幼児
- 24ヶ月齢以下のダウン症候群の新生児、乳児および幼児
RSウイルス感染症から、あなたのお子さんを守るために
- 0-1歳児は、咳などの呼吸器症状がある人と接触させない
- 咳やくしゃみを吹きかけない(咳エチケット)
- 流水・石鹸でよく手を洗わせる
- 手を洗わずに顔を触らせない
- 病気のときは、自宅からださない
- 0−1才児に日常的に接する人は
- 咳症状があるときはマスクを着用する
- 手洗いの励行、アルコール製剤による手指消毒を行う
- 子どもたちがふれるおもちゃ、手すりなどはこまめにアルコール等で消毒
- 手洗いの励行、アルコール製剤による手指消毒を行う
RSウイルス感染症と診断されたら、保育園や幼稚園はどのくらい休ませなければなりませんか?
- RSウイルス感染症は、インフルエンザやおたふくかぜのように、出席停止の期間が定められているわけではありません。登園の目安は「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」とされています。咳や鼻水・発熱といった風邪症状が落ち着き、十分に元気になれば、登園してよいでしょう。
<参考>
厚生労働省「RSウイルス感染症Q&A」
国立感染症研究所「RSウイルス感染症とは」
アメリカ疾病予防管理センター(CDC) 「RSV」
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