BNP(またはNT-proBNP)は、採血で検査できる心不全のマーカーとして、診断や治療に使われています。
BNPとNT-proBNPは、同じタンパク質が体内で分解されてできたもので、基本的には同じものです。
BNP(またはNT-proBNP)は、心臓の筋肉が引っ張られた状態が続くと増加してきます。心臓の機能が低下して心不全になると、心臓が十分に収縮できずに心筋に負担がかかった状態になるので、血中のBNPが増加します。
しかし、BNPの数値に影響を与える因子があり、本来の心機能をうまく反映できない場合があります。
下の表にまとめましたが、こうした状態の患者さんでは、見かけ上、BNPが実力より高くなったり、低くなったりすることがありますので、十分に注意して結果を解釈する必要があります。
BNPの数値に影響する因子
高くなる | 低くなる |
年齢 | 肥満 |
急性冠症候群 | 一過性肺水腫 |
腎不全 | 心外膜炎・心タンポナーデ |
右心不全 | 遺伝的多型 |
心房細動 | 末期心筋症 |
肺高血圧 | |
肺塞栓 | |
貧血・高心拍出状態 | |
敗血症 | |
僧帽弁閉鎖不全症 |
(Role of Biomarkers for the Prevention, Assessment, and Management of Heart Failure. Circulation 2017;135)
ペースメーカーが埋め込まれてから、6年目です、あと半年でペースメーカの電池を入れ替える時期と
診断されていますが、BNPが基準を超え8倍の数値となりました。対処法があるのでしょうか?
因みに階段などの上り下りに息苦しくなってきました。リクシアナを常備薬として30mgを毎日
服用しています。現在86歳 利尿作用も激しい時は夜2時間おきに排尿します。もう少し改善したいのですが可能でしょうか?
ご質問、ありがとうございます。
BNPの数値からすると、心不全が進行していると考えられます。
実際に、自覚症状も増悪しているようです。
心不全の薬物療法としては、ACE阻害薬またはARB、β遮断薬、MRA,利尿薬、ジギタリス、血管拡張薬などがあります。おそらく、使える薬は使われているので、後は、利尿剤の増量や変更くらいしか選択肢がないでしょう。ただし、利尿剤を変更すると、排尿の頻度はさらに増えるでしょうから、患者さんの負担を考えながらの治療になると思います。
心不全の治療は根本的に治すというより、症状を緩和することが治療目標になります。患者さんにとって治療が苦痛になってはいけませんので、患者さんの訴えを主治医にお伝えの上、治療方針を決めていただきましょう。