2022年4月の診療報酬の改定で、リフィル処方せんが導入されようとしています。処方せんの「リフィル」とは、1回の処方せんを何度も使いまわして同じ薬がもらえる仕組みです。
リフィルとは「詰め替え」のことで、シャンプーの詰め替えはリフィル。コーヒのおかわりもリフィル。無くなった中身を補充するという意味です。
「血圧の薬なんかは、だいたい、いつも同じ薬なんだから、1枚の処方せんで何度も使いまわしができたら、便利じゃないか」
医者としては、患者さんの診察をし、定期的な検査をしながら、この薬で間違いないと確認して処方しています。今回もこの薬でいいかどうかを確認して、処方せんを作っているのです。その処方せんを医者の判断なしに何度も使うというのは納得がいきません。同じ処方でいいかどうかを、患者さんと薬剤師が相談して決めるのでしょうか。
そもそも、医師法には、無診察治療等の禁止(医師法 第20条)という規定があります。「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付してはならない」
つまり、定期的に通院する慢性疾患の患者に、診察を行わず処方せんの交付のみをすることは禁じられています。罰則として保険診療ができなくなることがあります。
リフィル処方せんを受けとり、管理料金を請求する薬局は、実質的に、医者の代わりに患者さんを診察していることになります。診察記録や検査結果も見ずに、薬が処方されることに不安を感じます。
確かに、リフィル処方せんは欧米ではすでに導入されているのですが、もともと、医療費が高く診察に金のかかる国と日本では事情が違います。あえて、医療の質を落とす方向に向かう必要があるのでしょうか。リフィル処方せんによって、たとえば治療の変更や開始が遅れ、患者に被害が起きた場合は、リフィル処方せんをだした医師の責任になるのでしょうか。リフィルを希望した患者の自己責任になるのでしょうか。患者さんの変化に気づかなかった薬剤師の責任でしょうか。
簡単にリフィル(詰め替え)と言われると、患者さんの病気を確認しながら前回と同じ処方している「診察」という仕事を切り捨てられているようで悲しくなります。リフィルも大事な医者の仕事だと思って、やっているからです。十分な議論も準備もなく、唐突に導入につきすすむ「リフィル処方せん」の行く末に不安を感じています。
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