脂肪腫と軟部腫瘍|良いしこり、悪いしこり

こぶつきラクダ

筋肉や脂肪、神経、血管など、内臓を支えたり、つないだりしている組織を「軟部組織」といい、ここから発生した腫瘍を「軟部腫瘍」といいます。軟部腫瘍には、脂肪腫や血管腫などの良性腫瘍と、脂肪肉腫、線維肉腫、平滑筋肉腫などの悪性腫瘍があります。

脂肪種

脂肪腫は脂肪組織にできる良性腫瘍で、柔らかくて痛みもない、1~10cmほどの腫瘤です。皮膚の下に「こぶ」、「しこり」として触れることで気づくことが多いです。脂肪腫は体のどこにもできますが、背中や首、肩、背中、太ももなどによくできます。軟部腫瘍では最もよく発生し、1000人に1人以上ができるといわれています。わずかに男性に多く、40~60歳に多く見られます。脂肪腫が何個かできる方もいます。いわゆる「こぶ」ですので、良性のものですから、とくに放置してもかまいません。大きい、美容上の問題がある場合などは、手術で脂肪種全体を切除することが一般的です。脂肪種は液体がたまっているものではないので、注射器で中身を抜き取ることはできません。

脂肪種:日本皮膚科学会HP「皮膚科Q&A」より引用

アテローム

脂肪種と似ているこぶに「粉瘤(ふんりゅう)」というものがあります。粉瘤は、アテローム(アテローマ)ともよばれます。本来なら皮膚から剥がれ落ちるはずの垢や脂などの老廃物が皮膚の下に袋状にたまった良性腫瘍です。少しずつたまっていくので、少しずつ大きくなっていきます。これも体のどこにでもできますが、顔、首、背中、耳のうしろなどによくできます。数mm~数cmの「しこり」として触れ、中央には黒い点のようなものがあり、強く圧迫するとドロドロした臭いなかみがにじみ出てくることがあります。ただし、なかみを無理やりだそうとして、圧迫を繰り返すと感染を起こすことがありますので注意してください。アテロームは良性腫瘍なので、とくに治療をする必要はありませんが、細菌感染を起こしているときは、切開して膿を外に出すことがあります。また、外観が気になるときや大きくて炎症や破裂する可能性があるときは、外科的に切除します。

おしりのアテローム:日本皮膚科学会HP「皮膚科Q&A」より引用
アテロームの構造:日本皮膚科学会HP「皮膚科Q&A」より引用

アテロームも脂肪種も俗に「脂肪のかたまり」と表現されることが多いのですが、アテロームは皮膚からでる皮脂がたまったもの、脂肪種は脂肪組織が増殖した腫瘍ですから、この2つは全く違うものです。

悪性の軟部腫瘍

皮下の軟部組織にできる腫瘍は良性のものが大半ですが、まれに、脂肪肉腫、繊維肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫などの悪性の軟部腫瘍がみつかることがあります。「しこり」、「こぶ」が急激に大きくなる場合は、自己判断をせずに、整形外科や皮膚科、外科の先生の診察を受けてください。

<参考>
日本整形外科学会HP「軟部腫瘍(四肢や躯幹に発生した“はれもの””できもの”)」(2023年1月24日閲覧)
日本皮膚科学会HP「皮膚科Q&A」(2023年1月24日閲覧)

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