頭痛には、脳の血管障害、脳腫瘍、感染症などによっておきる危険な頭痛と、いわゆる頭痛持ちの頭痛といわれる慢性頭痛があります。
危険な頭痛の特徴:以下のような症状を伴う頭痛は、大きな病気が隠れている場合がありますから、すぐに医師の診察を受けてください。
- 今までになく強い
- 突然に起こった
- 早朝ないし朝方に起こった
- 高齢になって初めて起こった
- 長期間続く
- だんだんひどくなる
- 手足のしびれがある
- 意識がもうろうとなる、頭がうまく働かない
- 言葉がしゃべりにくい
- ものが見えにくい、二重に見える
- 字が書きにくい
- めまいや嘔吐を伴う
- 発熱を伴う
- けいれんを伴う
頭痛の専門は、神経内科や脳神経外科です。いつもと違う頭痛を感じたときは、専門科の先生、もしくは一般内科の先生に相談してください。頭部MRIなどの脳の検査が必要なことがあります。
頭痛の分類、診断、治療
日本人の約40%が頭痛持ちで、その半数が緊張型頭痛で最も多いタイプの頭痛です。片頭痛は8.4%で、840万人の患者がいると推定されます。群発頭痛はきわめてまれな頭痛で、0.07-0.09%程度です。
あなたの頭痛をチェックしましょう。頭痛にはいろいろなタイプがあります
頭痛の頻度は? |
□数か月に1回から月に1~2回 |
□週に2~3回からほとんど毎日 |
□ある時期に集中して起こる |
どのような痛み? |
□ズキンズキンと脈打つように |
□ギューと締めつけられるように |
□目の奥がえぐられるように |
どこが痛む? |
□頭の片側 |
□頭の両側や後頭部 |
□片側の目の奥 |
頭痛と一緒に起きる症状は? |
□吐き気 |
□肩こり |
□片側から涙がでる |
頭痛の前にギザギザした光が見えたり、見えにくい部分ができることがある? |
□いつも |
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この列が多い方は、 片頭痛 の疑いがあります | この列が多い方は、 緊張型頭痛 の疑いがあります | この列が多い方は、 群発頭痛 の疑いがあります |
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、頭がぎゅーっとしめつけられるような重い痛みです。長時間不自然の姿勢を続けたり、かみ合わせが悪い、仕事や対人関係などのストレス、不安、うつなどを誘因として頭の筋肉がこって(緊張して)おきる頭痛です。
緊張型頭痛の診断基準
- 頭痛は30分〜7日間持続する
- 頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす
- 両側性
- 性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
- 強さは軽度〜中等度
- 歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
- 以下の両方をみたす
- 悪心や嘔吐はない(食欲不振を伴うことはある)
- 光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
- その他の疾患によらない
緊張型頭痛の治療
- 消炎鎮痛薬
アセトアミノフェン、アスピリン、メフェナム酸、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセンなど - 筋弛緩薬
チザニジン、エペリゾン - 症状に応じて、抗うつ薬、抗不安薬の併用が効果的な場合があります。
- 前かがみやうつむきかげんの姿勢は、頭痛を起こしやすくします。なるべく同じ姿勢を続けないようにしましょう。ストレッチや体操、マッサージなどで、首や肩の筋肉をあたためたり、動かしたりしましょう。
片頭痛(偏頭痛)
片頭痛は頭痛発作を繰り返す病気で、日本人の8.4%が有病者と考えられます。とくに、20−40歳代の女性に多く、30歳代女性の約20%が有病者ともいわれます。
片頭痛の症状
- 頭痛発作は4~72時間続く
- 片側性、拍動性の頭痛
- 強さは、中等度から重度で日常生活の活動性に影響する
- 階段の昇降など日常的な動作で頭痛が悪化
- 悪心・嘔吐・羞明(光過敏)・音過敏などを伴う
- 頭痛が始まる前に前兆を感じることがある
前兆には、キラキラした光・点・線が現れる視覚症状、チクチクした感じが広がる感覚症状、言葉がでにくいなどの言語症状があります。最も一般的なタイプの前兆は、閃輝暗点(せんきあんてん)です。
閃輝暗点は、突然、視野の中にジグザグ形が現れ、徐々に拡大して、キラキラとした閃光で縁取られます。その後、その場所が暗くはっきり見えなくなります。中高年で、閃輝暗点の症状はあるものの片頭痛が起こらない場合、まれに脳梗塞などの脳血管障害の場合もあるので、症状が繰り返すようであれば、脳神経外科や神経内科などの専門医療機関を受診したほうがよいでしょう。
片頭痛の誘発・増悪因子
- 精神的因子:ストレス、精神的緊張、疲れ、睡眠過不足
- 内因性因子:月経周期
- 環境因子:天候の変化、温度差、頻回の旅行、臭い
- 食事性因子:空腹、アルコール(赤ワイン)、チョコレート・チーズなど
月経と片頭痛
片頭痛は女性に多い病気で、男性の約4倍の頻度といわれます。これは、ホルモンや遺伝子の関係と考えられていますが、痛みに対する感受性が男性より高いことも原因となっています。一種の生理痛として片づけられて、適切な治療を受けていない人も多いのが現状です。
- 痛みの感受性は月経周期によって変化します。たとえば、
- 片頭痛発作は、月経2日前から3日前までに多い。
- 妊娠中に改善し、分娩後に再発する。
- 経口避妊薬の休薬期におこる。
- 閉経後は改善する。
- 月経に関連する片頭痛は前兆がない、持続時間が長い、痛みが強い、薬剤が効きにくい
片頭痛と低用量経口避妊薬(ピル)
前兆のある片頭痛では、エストロゲンを含む経口避妊薬は、原則禁忌です。前兆のない片頭痛では禁忌ではありませんが、慎重な判断と経過観察が必要です。
治療
・片頭痛の急性期治療
- アセトアミノフェン
- 非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)
- エルゴタミン
- トリプタン
- トリプタンは、片頭痛の発作が現れたときにだけ飲む薬です。発作の予防や発作の回数を減らすための薬ではありません。また、片頭痛以外の頭痛には効果がありません。片頭痛の前兆時は血管収縮が起きているので、使ってはいけません。確実に血管が拡張を始めてから、つまり頭痛発作が始まってから使用してください。トリプタンには血管収縮作用がありますので、脳や心臓の血管障害、たとえば脳梗塞や心筋梗塞、狭心症などの方には使用できません。
- 制吐薬
・片頭痛の予防治療
- Ca拮抗薬(ロメリジン)
- 抗てんかん薬(バルプロ酸)
- β遮断薬(プロプラノロール)
- ACE阻害薬(リシノプリル)・ARB阻害薬(カンデサルタン)
- ジヒドロエルゴタミンなど
群発頭痛
群発頭痛は,ある一定の期間(数週〜数ヶ月)連日して、しかも夜間、睡眠中に頭痛発作を起こします。片頭痛に比べて患者数は少ない。群発頭痛の発症年齢は、20〜40歳代で、圧倒的に男性に多いのが特徴です(女性の3〜7倍)
群発期は、年に1~2回のこともあり、また数年に一度のこともあるが、その時期を過ぎると頭痛は起こらない。激しい頭痛は1~2時間続きその後自然に軽快するが、主に睡眠中に発症するために、眠ること自体を恐怖に感じている患者も多い。
誘発および増悪因子としては、アルコール、薬剤(ニトログリセリン、ヒスタミン)があります。
群発頭痛の診断基準
- 以下を満たす発作が5貝以上ある
- 未治療で一側性の重度〜きわめて重度の頭痛が、眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に、15〜180分間持続する
- 頭痛と同側に少なくとも以下の1項目を伴う
- 結膜充血または流涙
- 鼻閉または鼻漏
- 眼瞼浮腫
- 前頭部および顔面の発汗
- 縮瞳または眼瞼下垂
- 落ち着きがない、あるいは興奮した様子
- 発作頻度は1回/2日〜8回/日である
- その他の疾患によらない
群発頭痛の治療
・群発頭痛発作時の治療
- トリプタン:スマトリプタン3mg 皮下注(保険適用)、スマトリプタン点鼻液、ゾルミトリプタン経口投与(いずれも保険適用外)
- 純酸素投与
- 一般的な鎮痛薬の効果は期待できない
・群発頭痛の予防治療
- カルシウム拮抗薬
- 酒石酸エルゴタミン
- 副腎皮質ステロイド
- 薬物療法以外では、神経ブロック、三叉神経根切除、翼口蓋神経切除がおこなわれることがある
<参考>
慢性頭痛の診療ガイドライン2013. 日本神経学会・日本頭痛学会監修、慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会編
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