85歳以上の高齢者の肺炎による死亡率は、若年成人の1000倍以上であり、90歳以上の男性に限れば、死因の第一位です。
施設や長期療養型の病院、自宅などで寝たきりの患者さんなどは、誤嚥のリスクが高く、栄養状態、免疫力の低下などにより、肺炎を起こすことが多く、医療・介護関連肺炎といいます。
*医療・介護関連肺炎=NHCAP(Nursing and Healthcare-associated pneumonia)
こうした患者さんは、肺炎を繰り返すことが多く、強い抗生剤を長期に投与せざるを得ず、結果として、抗生剤の効かない「薬剤耐性菌」に感染してしまうことがあります。
ふだん元気に自宅で暮らしている方がかかる肺炎を、「市中肺炎」と呼んでいますが、病院や施設でかかる肺炎とは原因菌が違うことが多いのです。
抗生剤の効きにくい原因菌、患者さんの免疫力・体力・栄養状態、もともと持っている病気の状態などにより、医療・介護関連肺炎は、致命的な結果になることがあります。
誤嚥性肺炎は、病院や施設で寝たきりの患者さんによくみられる肺炎です。口腔内の細菌が原因になるので、口腔ケアは肺炎予防に効果があります。また、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンの接種も重要です。
胃に直接チューブを入れて栄養剤をいれる「胃ろう」は、誤嚥性肺炎の予防効果は明らかではありません。
医療・介護関連肺炎(NHCAP)の定義
- 長期療養型病床群もしくは介護施設に入所している
- 90日以内に病院を退院した
- 介護を必要とする高齢者、身障者
- 通院にて継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制薬などによる治療)を受けている
NHCAPにおける耐性菌のリスク因子
- 過去90日以内に2日以上の広域抗菌薬使用歴
- 経管栄養をしている
NHCAPにおける原因菌
1.耐性菌のリスクなし
- S. pneumoniae
- MSSA
- グラム陰性腸内細菌(Klebsiella属, E.Coliなど)
- H. influenza
- 口腔内連鎖球菌
- 非定型病原体(とくにChlamydophila属)
2.耐性菌のリスクあり
上記の菌種に加え、
- P. aeruginosa
- MRSA
- Acinetobacter属
- ESBL産生腸内細菌
<参考>
医療・介護関連肺炎診療ガイドライン 日本呼吸器学会医療・介護関連肺炎(NHCAP)診療ガイドライン作成委員会編 2011.
成人肺炎診療ガイドライン2017 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2017作成委員会編.
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