メタボリックシンドロームとは肥満による内臓脂肪の蓄積が、高血圧、糖尿病、脂質異常症をひきおこし、動脈硬化を進行させる病気です。
内臓脂肪に伴う高インスリン血症や、脂肪組織から分泌されるアディポサイトカインのバランスがくずれることが原因と考えられています。
内臓脂肪が多いと、高血圧、糖尿病、脂質異常症など、ひとつひとつの程度は軽くても、心筋梗塞や脳梗塞のリスクは急激に増大します。日本では40歳代の20%、全体で1000万人以上がメタボリックシンドロームであると推定されます。
診断
- ウエスト周囲長:男性 85cm以上、女性 90cm以上
- さらに以下の3項目のうち、2項目以上当てはまる場合
- 中性脂肪(トリグリセライド)値が150mg/dL以上、かつ/または、
HDLコレステロール値が40mg/dL未満 - 収縮期血圧 130mmHg、かつ/または、
拡張期血圧 85mmHg以上 - 空腹時血糖値 110mg/dL以上
- 中性脂肪(トリグリセライド)値が150mg/dL以上、かつ/または、
腹囲(ウエスト周り)はどこを計ればいいのでしょうか?
腹囲の測定は、空腹時に、両足をそろえた立位で、両手を自然におろし、息を軽くはいた後に、臍の高さのウエスト周りを、床と水平になるように計測します。おなかがせり出して、臍が垂れ下がっている人は、肋骨の下端と腸骨(腰の出っぱり)の中点、つまり、本来へそのある位置の腹囲をはかります。おなかに力を入れて、ウエストをへこまさないように。正直に、はかりましょう。
- メタボチェック
- 問診(自覚症状、既往歴、家族歴、食生活、運動など)
- 診察(身長、体重、血圧、脈拍数)
- 胸部レントゲン
- 心電図
- 血液検査(血糖、尿酸、総コレステロール、HDL-コレステロール、HbA1cなど)
- 尿検査
- 腹部エコー、腹部CT(必要時)
治療
運動療法と食事療法による生活習慣の改善が最も重要です。
運動療法
- 散歩(ウォーキング)、ジョギング、自転車、ラジオ体操、水泳などの有酸素運動
- 1日15-30分、週3日以上
- トレーニングプログラム例:ただし、体調が悪いときは、無理に運動をせずに休むこと。
- 準備体操を5-10分ほど、ストレッチングを中心に行う。
- 歩行:最初の5分間はゆっくりとしたペース。その後、脈拍数100-120/分を目安にして10-20分間。マイペースを守り、無理をしないこと。
- 運動中の水分補給を忘れない。
- 体操を5-10分行い、運動を終わる。
食事療法
糖尿病に準じた食事療法が推奨されています。1日に食べる量(摂取エネルギー量)を制限し、標準体重を維持しましょう。
- 標準体重(理想体重)=身長(m)×身長(m)×22
- 摂取エネルギー量=標準体重×30
たとえば、身長160cmの場合、
標準体重=1.6×1.6×22 → 56kg
摂取エネルギー量=56×30 → 約1600kCal
メタボリックシンドロームが進行していく様はドミノ倒しに例えられ、メタボリックドミノと言われています。
遺伝や体質に加え、生活習慣の乱れが、肥満という最初の駒を倒します。次第に食後高血糖、高血圧、高脂血症などの生活習慣病が発症し、メタボリックシンドロームが進行して動脈硬化が完成されていきます。それぞれの疾患は互いに影響し合いながら、一気に心筋梗塞や脳卒中といった最後の駒を倒すのです。
ドミノ倒しを最初の段階で止めるのは簡単ですが、後の段階になるほど治療が困難になります。ドミノが倒れ始める前に、食事や運動療法を始め、医者の指示があれば薬物治療を考えましょう。
子供の肥満が増えています。メタボも大人だけの話ではなくなりました。
小児メタボリックシンドロームの診断基準(小児期、6−15歳)
- 腹囲(へそ周り)が男女とも80cm以上(小学生では75cm以上)、または、腹囲÷身長が0.5以上
- かつ、次の3項目のうち2項目以上が当てはまる場合
- 中性脂肪 120mg/dL以上、かつ/または、HDLコレステロール 40mg/dL未満
- 収縮期血圧(上の血圧) 125mmHg以上、かつ/または、拡張期血圧(下の血圧) 70mmHg以上
- 空腹時血糖値 100mg/dL以上
大人になってから急に生活習慣を改善するのは簡単なことではありません。メタボな子供は、メタボな大人になりやすくなります。すでに子供の頃から動脈硬化は進行します。しかし、子供のメタボは、間食などの食生活の乱れを直すだけでもかなり効果的です。診断基準は、あくまでもメタボ気味かどうかの目安に使ってください。塾で遅く帰ってくる子供たちは、食事時間も乱れがち、ストレスもたまるでしょう。親も子供も、一緒にメタボ退治といきたいものです。
<参考>
日本小児内分泌学会HP
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