高血圧

血圧計

日本の高血圧患者数は4300万人。30才以上の男性の60% 、女性の45%が高血圧と判定されます。日本で、高血圧が原因となる死亡者数は、年間10万人と推定されます。心筋梗塞、脳卒中の50%以上が、高血圧が原因と考えられます。生活習慣の改善としては、塩分制限、肥満の解消が重要です。

診断

血液が心臓から体のすみずみまで流れるように、血液には常に圧力がかかっています。この圧力を血圧といいます。血圧は、血管の中を流れる血液の量と、血液の流れやすさ(抵抗)で決まります。血液の量が増えたり、血管の抵抗が増えると血圧は上がります。

高血圧の患者の約90%は原因が不明で、本態性高血圧または原発性高血圧とよばれます。

原因が分かっている場合には、二次性高血圧とよばれます。高血圧の患者の5-10%は腎疾患が原因で、1-2%は内分泌疾患によるものです。

血圧値は、心臓の拍動とともに変化します。心臓が収縮したときの値を「収縮期血圧」または「最高血圧」といい、心臓が拡張したときの値を「拡張期血圧」または「最低血圧」といいます(単位はmmHgです)。

収縮期血圧が140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上を「高血圧」といいます。正常血圧は収縮期血圧130mmHg未満、かつ拡張期血圧85mmHg未満です。

分類収縮期血圧 拡張期血圧
至適血圧<120かつ<80
正常血圧<130かつ/または<85
正常高値血圧130-139かつ/またはまたは85-89
I度高血圧140-159かつ/またはまたは90-99
II度高血圧160-179かつ/または100-109
III度高血圧≧180かつ/または≧110

自宅で自動血圧計を使って血圧を測定することは、高血圧の診断や、薬の効果判定に非常に有用です。医者が診察するときだけ血圧が高く自宅での血圧が低い、「白衣高血圧」を見分けるためにも自宅での血圧測定は必要です。

家庭での血圧の測り方

  1. 測定部位は上腕を用いる。
  2. 朝:起床後1時間以内、排尿後、朝食前、薬を飲む前、イスに座って1-2分安静後に測定。夜:就寝前、イスに座って1-2分安静後に測定。
  3. 平均の血圧が135/85mmHg以上ならば、高血圧の可能性があります。

治療

血圧が高いほど、心筋梗塞、心不全、脳卒中、腎臓病になる頻度が上がります。高血圧の治療によって、脳卒中35-40%、心筋梗塞20-25%、心不全50%以上の発症を抑えることができます。収縮期血圧と拡張期血圧とともに、140/90mmHg未満に下げることで、心血管の合併症を減らすことができます。糖尿病や腎臓病を合併した高血圧では130/80mmHgが治療目標になります。

血圧の目標値

 診察室血圧家庭血圧
若年者・中年者・前期高齢者(65歳から74歳)140/90mmHg 未満130/85mmHg 未満
後期高齢者(75歳以上)150/90mmHg 未満145/85mmHg 未満
糖尿病130/80mmHg 未満125/75mmHg 未満
慢性腎臓病(蛋白尿陽性)130/80mmHg 未満125/75mmHg 未満
脳血管障害
冠動脈疾患
140/90mmHg 未満135/85mmHg 未満

生活習慣の改善

生活習慣の改善は、高血圧の発病を予防する上でも、また発病した高血圧患者の管理を行う上でも最も重要なものです。生活習慣の改善は、血圧を下げ、降圧剤の効果を増強し、心血管病のリスクを減少させます。

心血管病とは?
心臓の血管がつまっておきる狭心症や心筋梗塞などの病気です。

心血管病の危険因子
:
高齢(65歳以上)、喫煙、高血圧、脂質異常症、肥満(とくに腹部肥満)、メタボリックシンドローム、若年(50歳未満)発症の心血管病の家族歴、糖尿病

生活習慣の適正化

  1. 食塩制限6g/日以下。
  2. 適正体重の維持。
  3. アルコール制限:男性は日本酒約1合以下、女性はその半分がめやす。
  4. コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控える。
  5. 運動療法(有酸素運動)
  6. 禁煙

*標準体重=(22×[身長(m)]×[身長(m)])
たとえば、身長160cmならば、1.6×1.6×22=56。56kgが標準体重です。
適正体重はその20%増しまでで、56×1.2=67kgまでが許容範囲です。

米国のデータですが、生活習慣の改善で血圧はずいぶん下がります。たとえば、肥満の方は体重を10kg減量することで5-20mmHgの血圧低下が期待されます。

改善点目標降圧効果
体重の減量正常体重の維持5-20mmHg/10kg減量
食事療法野菜、果物、低脂肪食8-14mmHg
塩分制限1日6g以下2-8mmHg
運動毎日30分以上歩行4-9mmHg
アルコール摂取の制限 2-4mmHg

薬物治療

血圧を下げる薬(降圧薬)には、利尿薬、カルシウム(Ca)拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンII受容体(ARB)拮抗薬、β遮断薬、α遮断薬の6種類があります。それぞれ異なった機序で血圧を低下させます。

降圧薬の作用メカニズムと副作用

 作用機序副作用
利尿薬尿量を増やして、体液の量を減らす電解質異常、尿酸・脂質・糖代謝異常
Ca拮抗薬血管の壁を弛緩させ、血管を拡張する顔面紅潮、動悸、むくみ
ACE阻害薬アンジオテンシンIIの産生を抑制する
ARB拮抗薬AII受容体をブロックして、アンジオテンシンIIの効果を抑制する咳の副作用なし
β遮断薬心臓から送り出される血液の量を減らす気管支喘息、脂質代謝異常
α遮断薬血管を拡張する起立性低血圧

一般的には、ARBまたはACE阻害薬、Ca拮抗薬、利尿薬のいずれかを、少量から開始します。治療効果をみながら、量を増やしたり、2剤の併用を行います。さらに、効果が不十分なときは、3剤を併用したり、他の種類の降圧剤を追加することがあります。

<参考>
高血圧治療ガイドライン2014  日本高血圧学会編 ライフサイエンス出版 2014.

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